リエカ
「ミステは何読んでるんだ?」
『これ』
「もしも世界が一つでは無かったら、か。面白いのか?」
『興味深い』
「ふーん」
世界が一つでは無い。
って、もしもっていうか実際そうなんだよな。
俺が元いた世界と今いる世界、少なくとも二つはあるわけだし。
っと、いつまでも何も読まないわけにはいかないな。
「何を読むかなぁ……ん?」
なんだか、他の本と比べて明らかに薄い本があった。
これは、同人誌とかいうオチか?
あまり期待をせずに、手にとってみた。
って、薄すぎると思ったら、これ全部で二ページしか無いぞ?
二ページって、本と呼べるのか?
表紙には、[この世で最も大きな秘密]と書かれている。
なんだこれ。
最も重きな秘密ねえ。
少し興味が湧いたので開いてみることにした。
ん?
この本、たった一文しか書かれていないぞ。
一文以外真っ白だ。
書かれているのは
「その秘密は『リエカ』にある」
という一文。
リエカ?
あるって書かれてるくらいだし、街の名前なのか?
早速、リエカについて書かれてそうな本を探す。
なかなか無いな。というか、こんな莫大な本の数から見つけるなんて無理だ。
聞くか。
受付で暇そうにしている女に、俺は早速聞いた。
「リエカについての本を探してるんですけど」
「リエカ、ですか? すみません、ちょっと待ってください」
なんか受付嬢の反応からして、リエカってのはあまり有名じゃないみたいだな。
しばらく待っていると、受付嬢が一冊の本を持ってきた。
「これで、よろしいですか?」
表紙には、[リエカについて]と書かれている。
「はい、ありがとうございます」
まさに、リエカを何も知らない俺が見たかった本だ。
先程の[この世で最も大きな秘密]と比べても、こちらはきちんとページ数があり、本の体裁を保っている。
「さてさて、読みますか」
ペラペラと、ページをめくりながら読んでいく。
読み始めてすぐに分かったのだが、リエカというのは、あまり知名度の無い小さな街のことのようだ。
そしてこの本は、そんな知名度の無いリエカだけど、実は色々な観光スポットがあるよ! ということを、紹介する本だったようだ。
パラパラと読んでみても、特にこの世で最も重大な秘密については記載されていない。
というか、こんな街に、そんな重大な秘密があるとは思えない。
「お兄ちゃん、何読んでるの?」
リエカについての本を読んでいると、萌衣から声をかけられた。
「なんか二ページしか無いこの世で最も大きな秘密って本を見つけてさ。その秘密は『リエカ』にあるって書かれてたから今リエカについて調べてるとこ」
「この世で最も大きな秘密? あ! お兄ちゃん、その本多分、わたしが一昨日ここに置いていったやつだ」
「はぁ?」
「あのね。一昨日にね、怖い顔したおじさんが、たくさんの兵隊さんを連れてイオキィに来てたの」
「怖い顔したおじさん?」
「そう。でね、そのおじさんがね、この本を落として行っちゃったの。わたし、拾って返してあげようと思ったんだけど、顔が怖くて近づけなくて。それで、結局そのまま持ちっぱなしで図書館まで来ちゃったんだけど。その本のこと、帰る頃には忘れちゃってて、図書館に置いてきちゃったの」
「なるほどな」
なかなか面白い話を聞いた。
兵隊を連れたおじさんなんて、絶対普通じゃない。
そんな男が持っていたのが、この二ページしか無い本、か。
「なあ萌衣、リエカに行ってみないか?」
「え、なんで?」
「興味無いか? この世で最も大きな秘密ってやつにさ」
「まあ、あるっちゃあるね」
「だろ? それに、そんな凄い秘密を知ることができたら、世界征服に繋がるかもしれない」
「お兄ちゃん、まだその世界征服っての本気だったんだ。というか、その本の情報なんて信じられるの? 嘘かもしれないよ?」
「最初は嘘だと思ったさ。だけど、兵隊をたくさん連れたおっさんがこの本を持っていた、というのなら、少しは信じていいと思う。兵隊を連れることができるほどの権力を持ったおっさんが、自ら持っていた本なんだぞ? 一文しか無い本なのに、だ。そんなの、絶対普通じゃない」
「確かに」
「というわけだ。俺達はこれからリエカに行って、この世で最も大きな秘密を手に入れる!」




