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性別

「サオルが女ぁ?」


 夜十一時。

 サオルが寝たところで、カリバはサオルの豪邸を飛び出し、カプチーノの所まで来た。

 

 これは、カリバと俺との間で約束したことだ。

 帝王杯以降、毎晩この時間にカリバと落ち合い、その日一日にサオルの側近として何があったかを聞き出している。


 そして、先程合流したカリバは、全くの予想外なことを口にした。

 「サオルは女です、間違いありません」と。


「どうしてそう言い切れる?」


「お風呂に一緒に入れと強要されまして、風呂場でサオルの裸体を見たところ、小ぶりですが胸があり、あれも付いていませんでした」


「マジか……」


 あいつ、女だったのか。

 見た目は男に見えたのだが、まあ男に見える女ってのも普通にいるか。


 それに、サオルが女だと分かれば色々納得できる点がある。


 まず一つ目、萌衣のお色気が聞かなかったこと。

 女だったのなら、聞かないのも当たり前だ。


 二つ目に、ジョスーが帝王杯に出場したこと。

 あれは、ジョスーがサオルを女だと知っていたからだ。サオルが女なら、女好きのジョスーが出場したのも頷ける。


 そして三つ目。

 そもそも帝王杯で女しか募集していなかったことだ。

 てっきり、女の子とエロいことがしたいからなのだと思っていたが、本当は、一緒に風呂に入っても大丈夫なようにだったのだ。


「サオルが女だったということは、もうカリバのサオル側近生活は明日で終わりだな」


「いいのですか!?」


 うわ、カリバ超嬉しそう。

 よっぽど嫌だったんだな、サオルの側近。


「ああ。今までよくやった。後は、ほんの一仕事してくれるだけでいい」


「ほんの一仕事?」


「サオルを、外に連れ出してくれ」



   ☆


 たまにはお出かけしてみてはどうでしょう、という私の提案に、サオルは意外にも逆らうことなく従いました。


「ふむ。下々の様子を見るのもまた一興であろう」

 

 などと言って。


 この人は、街の人達を見るのが、動物園や水族館に行くようなことと同じだと思っているのではないでしょうか。

 ほんと酷い人間です。

 けれど、そんな人間の側近もあと少し。そう思うと気分は晴れます。

 

「で、どこへ行くんだ?」


「とりあえず、街を一周グルッと回ろうかと」


「そうか。では、何か乗り物を用意しろ」


「え? いや、歩いて回る予定なのですが」


「何? なぜわざわざ歩かねばならん。急いで乗り物を用意しろ!」


 ……この人は歩くことすら面倒くさいのですか。

 乗り物なんかに頼らず自分で歩きなさいよ! と叫びたい衝動をグッと堪えます。


「分かりました。ですがまずは少し歩きましょう」


 カプチーノ様が待っているところまで連れていければ、後はもうどうでもいいです。私のお役は御免です。

 幸いにして、カプチーノ様が待機しているところまで、ここからそう遠くはありません。

 

 少し歩くと、大きな噴水が見えました。

 ここが、カプチーノ様との合流地点として定めていた場所です。

 

「一旦休憩しましょう。その間に乗り物を手配して参りますので」


「私を一人にする気か?」


「何をおっしゃいますやら。陰に何人もの護衛を忍ばせているじゃないですか」


「気づいていたか」


「ええ」


 かなりの人数です、気づかないわけがありません。


 一度お辞儀をして、サオルと別れました。


「よくやったぞ、カリバ」


 すぐに、カプチーノ様と合流。これで、私のサオル側近生活は終わりです。


「さて、行ってくる」


 カプチーノ様は、サオルがいるところへと向かいました。


「ふぅ……」


 任務が終わった途端、一気に疲れが押し寄せてきました。

 もう二度とサオルの側近はやりたくありません。


 私の視線の先で、カプチーノ様がサオルに話しかけました。

 すると、途端に陰から護衛が大勢現れ、サオルの周りを囲みました。

 

 しかし、カプチーノ様には護衛など全く意味がありません。

 

 カプチーノ様は護衛を全く気に留めずに、サオルへ向かってウインクをしました。


 カプチーノ様の能力【全ての女を落とす目(ラブミーウインク)】です。

 私もあれに落とされてしまったらしいです。けれど、落とされたことを嫌だとは全く思っていません。

 むしろ、私を落としてくれたカプチーノ様には感謝しています。

 何も無かった人生に、カプチーノ様は色を与えてくれたのですから。


 カプチーノ様のウインクを見たサオルは、見る見る様子が変わっていきました。


「これで、サオルはカプチーノ様のものですか」


 カプチーノ様が能力を使うときは、いつもモヤモヤします。

 カプチーノ様のためになることなのだから喜ぶべきことのはずなのに、カプチーノ様のことを好きになる人が増えるというのは、あまり気分の良いものでは無いのです。


 いや、たとえどんなにたくさんの女がカプチーノ様のものとなっても、私はカプチーノ様にとって一番の女で居続ければいいんです!

 頑張れ私!!

 

 目標を達成して満足そうな表情をしたカプチーノ様の元へと、私は駆け寄りました。


「カリバ、お前のおかげで作戦は大成功だ」


そ、その一言で、カリバ感激です!


 カプチーノ様! これからも私、頑張りますからね!

 

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