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帝王杯②

 

 カリバの準決勝の相手は、ジョスーという女に決まった。

 一回戦を見た感じだと、中々の強さだ。


 またブラを無くす必要がありそうだな。


 さて、次はどんなタイミングでブラを消そうかと考えていると、後ろの席からジョスーについての会話が聞こえてきた。



「なあ、なんでジョスーが参加してるんだ? あいつ、女大好きで男大っ嫌いなんだろ? それなのにサオル様の側近になるための大会に出場だなんて」


「は? お前、なんにも知らないのな。ジョスーさんが参加する理由ってのはな」



「おっにいちゃ~ん!」


「ぐふッ!」


 ちょうど後ろの人が参加の理由を話そうとしていたところで、萌衣が俺の体めがけて飛び乗ってきた。


「ねえねえ、こうしてるとわたし達、カップルみたいに見えるのかな?」


「アホか、ほら、もう試合始まるぞ」


 カリバやミステと違い、こいつが役に立つ日は来るのだろうか。

 まあ、たとえ役には立たなくても、いるだけでほっこりするし、それでいいのかね。


 っと、今はそんなことより試合だ試合。


「準決勝一試合目 カリバ選手対ジョスー選手 試合開始!」


 審判の合図とゴングの音と共に、試合は始まった。


 さて、どうなる。


 カリバが先に動いた。


 カリバはジョスーの方へと迫り、右手でパンチを繰り出した。

 しかし、ジョスーは余裕の表情でカリバの攻撃をかわした。


 やはり早いな。

 今の一瞬の動きを見ただけでも分かる。ジョスーの素早さはカリバより上だ。


「あなた、良い体してますね」


 ジョスーは、カリバの体全身を、舐めまわすようにして見た。


「え? はあ、ありがとうございます」


「私、あなたみたいな子、好きなのよね。どうかしら、この試合が終わったら、一緒にお茶でも」


「好き!? 私、女ですよ?」


「それがどうかしたの?」


 何もおかしなことなど無いといった表情で、ジョスーはカリバの目を見る。


「すみません。私、そっちの趣味は無いんです。それに、想い人が、もういますからッ……!」


 それ以上会話をするのは良くないと判断したカリバは、くるりと回転して左足を軸に右足で蹴りを放つ。


「ふふふ。綺麗な足ね」


 しかしジョスーは蹴りこんできたカリバの足に全く動じず、それどころかその右足を両手でがっしり掴むと、大きく口を開け、パクッと親指を咥えた。


「ひぃぃぃ!」


 突然のジョスーの奇行に、カリバが悲鳴を上げた。


「ジュルル……おいし……ジュル」


 だがジョスーは、カリバが嫌がっていることなど全く構わずに、指をしゃぶり続ける。


「嫌! 離して!!」


 ジョスーから足を解こうとカリバは必死にもがくが、ジョスーの拘束は強く、全く逃れることができない。

 

「ちょ……ほんとに! 離してください!」


 見るからに嫌そうな顔でカリバは訴えるが、その抵抗は何も意味を持たない。


「んじゅ……いやよ……これからがいいところなんじゃない……ペロッ!」


 ジョスーは、親指から一度口を離すと、足の裏に舌を這わせた。 


「カ、カプチーノ様ぁ!」


 カリバは涙を流し、じたばたともがきながら俺の名前を叫んだ。


 限界だな。これ以上は見ていられない。

 カリバは俺の女だ。たとえ相手が女であっても、こう好き勝手やられてはイライラもする。


「ミステ、やれ!」


『了解』


 これで、カリバの拘束は解けるはず。


 ……。


 ……あれ?


 おかしい。ジョスーの行動は何も変わらない。

 絶えずカリバの足を舐め続けている。


「ミステ、どういうことだ?」


『分からない ブラジャーは 消したはず』


「なんだと? くそッ! どうなってやがる!」


 カリバの右足は、もう涎でべとべとになっていた。


 やがて、カリバは何をしても解放されないと悟ってしまい、抵抗するのをやめた。


 それを良いことに、ジョスーの舌は、足の付け根へと上がっていく。


 何か、何かないのか!

 

 カリバの貞操の危機に焦るものの、なかなか助ける方法を思いつかない。


 ブラを消すのは駄目だった。

 ならパンツは?


 いや、そんな浅い考えは駄目だ。


 考えろ。考えるんだ。


 ジョスーの好きなものは女だ。

 だから今、カリバはあんな目にあっている。


 だがもし、カリバ以上に夢中になれる女が現れたら?

 そうしたら、標的も入れ替わるんじゃないか?


「そうか分かったぞ!」


 とっておきの作戦を思いついた。


「萌衣、いいか?」


 今回の作戦では、萌衣に頑張ってもらう。


「あわわわわ、カリバちゃんが! カリバちゃんが!」


 カリバとジョスーの試合を顔を真っ赤にしながら見ている萌衣は、試合に夢中で俺の声は聞こえなかったようだ。


「おい萌衣!」

 

 今度は少し大きな声で萌衣を呼んだ。


「びっくりした! なにさ?」


 よし、今度は俺の呼びかけに気づいた。

 俺は早速、萌衣の耳に今思い付いた作戦を伝えた。


「む、無理だよ! そんなことできないよ!」


 俺が伝えた作戦を、萌衣はぶんぶんと首を横に振って拒否する。


「頼む! お兄ちゃんからのお願いだ! な?」


「むぅぅ……。そんなこと言われたら断れないの知ってるくせに」


 そう、こいつは昔からお兄ちゃんのお願いという言葉に弱い。だからそれを利用させてもらった。


「じゃあ、やってくれるんだな?」


「良い妹を持ったことを感謝してよね」


「おう!」


 よし、やると決まれば早くしなければ!

 

 早速、萌衣にはジョスーの視界に入る場所へと移動してもらった。


 そして、ジョスーが、今にもカリバの秘部へと舌を這わせようとした瞬間!


 萌衣が、なるべく他の観客からバレないように、サオルの時にもやったあの超エロいセクシーポーズをやった。


 女が好きなやつだったら、絶対に見惚れてしまう最強にエロいポーズ。これほどまでにエロティックなポーズを、俺は他に知らない。


 ジョスーは、それを視界に捉えると――


「ぐへへ」


 カリバから舌を離し、涎を垂らしてニヤニヤと笑った。


 いまだ!


 隙が出来たジョスーから、カリバは勢いよく足の拘束を解いた。

 

 そして、一旦距離をとり、勢いをつけて――強烈なジャブを放った。


 完全に萌衣に釘付けになっていたジョスーは、カリバの攻撃に直前まで気づくことができず、勢いよく顔面に食らった。

 顔面にヒットしたため、ジョスーはだらしなく出していた舌を思い切り噛んでしまい、あまりの痛さに気絶してしまった。


 しばらく待っても、起きる様子は無い。


 ということは。

 

「勝者! カリバ選手!」


 見事カリバの勝利となった。


 勝負がついたことを確認すると、萌衣はそそくさとその場から離れた。

 ほとんどの人にセクシーポーズは気づかれなかったとはいえ、それでもよっぽど恥ずかしかったらしく、両手で顔を隠している。

 

 よくやった!

 ほんとよくやったよ萌衣!

 お前は最高の妹だ!

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