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暖かな目覚め


眩しい。閉じた瞼越しにも眩しいと感じるくらい、眩しい。

 ギンギラギンに輝いた太陽に刺激され、それに反抗するように目をギュッと閉じる。


「んー!」


 丸まっていた足を大きく伸ばす。随分と眠っていたようで体が凝り固まっており、ポキポキと小気味の良い音が鳴る。

 

「ようやく目覚めましたか」


 心地よい声が聞こえ、むにゃむにゃと目を擦りながら目を開いた。


「久々に気持ちのいい目覚めだ……って、ん?」


 今更気づいたのだが、やけに頭の裏が柔らかいところにある。

 なんだこの、ずっとここにいたいと思わせるような、心地の良い枕は……?


「あの、いつまでそうしている気なんですか? 足痺れちゃうんですけど」


 口を尖らせて文句を言いつつも、特に俺を動かそうとしないカリバ。


「許してくれるならいつまでもこうしていたいね。なんせあのデレ少なめツン濃いめマシマシのカリバさんともあろうお方が膝枕を……っていてぇ!」


 カリバは足をスルッと抜いて立ち上がると、俺の頭が乗っていた場所をスッスと払った。


「調子に乗らないでください。暇だったからこうしていただけです。勘違いされると迷惑なので」


「暇だったら膝枕するのか神ってのは……」


「そうですよ。神の世界では基本です」


「えぇ……」


 カリバが急に離れて打った頭を擦りながら起き上がる。

 はぁ、どうやらこの世界のカリバがデレデレになるのはまだまだ遠そうだ。まあ未来ではデレていないカリバのほうが珍しいから、逆にこれはこれで基調良いんですけども。


「で、トーブと……カシュだっけ? は、どこにいるんだ?」


「あっちの方で二人で水浴びでもしているのではないですか?」


 そう言って、カリバは木々の先を指さす。

 

 というか、あれだな。随分とまぁザ・大自然って感じのとこだなここ。

 俺達のいるところは、大小さまざまな木に囲まれた大きな円の中心。口笛でも吹けば動物でも集まってきそう。


「水浴びか。俺も体汚れてるし、行ってくるかな」


「馬鹿言わないでください。夫婦二人が水浴びしているところになんであなたが突入するんですか」


「いや、女性だったら多少は気を使うけど、なぁ?」


「ダメなものはだめです。外見がどうこうとか関係ありません」


「なんでそんな頑なに……。まさか、美女と野獣的な展開だったりするのか? もとは人間だけど呪いで鳥の姿にされたとか」


「美女と野獣というものがなんなのかは知りませんが、呪いの類は受けていませんよ。なんですかそのオカルトは」


 神がオカルト否定するのかよ。いや、むしろ神だから否定するのか?


「正真正銘、鳥ですよ。ペカリンという種類の鳥です。この辺ではあまり見かけませんが、そう珍しくもない、そこそこ有名な鳥です」


「じゃあ、やっぱり水浴びをしても……」


「いけません! だって二人は愛し合っているんですよ!」


「なーんかやけに二人きりにこだわるなぁ。って、あー、そういうえば、そうか」


 思い出した。カリバはそもそも恋をしたいがためにわざわざ下界まで降りてきた重度の恋愛脳だった。

 そんなカリバが、こんな間近でめったに見れないような恋愛模様が見れてるんだ。そりゃ過保護みたいな反応にもなる。


「なんですか? 何を分かったんですか?」


「べっつにー? ただ、カリバがかわいいなって思っただけ」


「な、なんなんですかもう」


 プイっと顔をそらす。あ、今あれだ。脳が恋愛脳一色だから簡単に落とせそう。ウインクなしでもカリバとイチャイチャできそう。


「よし、じゃあ試しにキスで……って、あからさまに距離をとるな! まだ何も言ってないだろ」


「言っていたじゃないですか! キスがどうとか! いやです! キスっていうのは、もっとこう……夜景のキレイなところでするものなんです! こんなところでキスしようとする男は、最低です!」


「あ、そう……」


 そんなピュアなキスの妄想している女性の方が貴重だと思うけど。

 というか、俺とのキスが嫌というよりも場所なの? これは脈ありと思っていいの?


 なんて考えていると。


「あんちゃん起きたんか! って、それよりも!」


 水浴びをしていたらしいトーブが、息を切らしながらぜいぜいと来た。まだ体はビシャビシャだ。

 

 何やら焦っているみたいだけど、、またカシュが連れていかれたとかじゃないだろうな……。


「カシュがおなかが痛くて苦しんどる! 頼む、来てくれ!」


「腹痛? それならしばらく横になっていれば」


「違いますよアホですか! おそらく、そう、赤ちゃんです」


「赤ちゃんって、いやだって、鳥は卵から……」


「いいから行きますよ!!」


 訳が分からないまま、俺は焦るカリバと共にカシュのいる方へと向かった。

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