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人の群れ


 リモコンを使い、ドアを開ける。

 刹那、ドアの向こうから大量の人、人、人。

 それぞれが近未来的な銃を持ち、待っていた。


「チッ……バレてたか」


「あれだけ暴れればこうもなるでしょう。人一人お亡くなりになったわけですから」


「真夜中だってのにたいしたこった」


「夜だからまだこれだけで助かっているのですよ。もし昼間だったらこの10倍はいたことでしょう」


「10倍いようが100倍いようが、どうせこいつらは研究だけが生きがいの頭でっかちだろ? 何人いようが変わらんさ。どうせ俺らのことを殺す度胸すらない」


「まぁ、確かにそうかもしれませんね。人は人をそう簡単に殺せません。たとえ相手が殺人鬼あっても」


「殺人鬼って、人聞き悪いなおい……」


 いやまあ間違ってないけれど。がっつり死体転がってますけど。


「ま、殺さないってんなら平気だろ。死にさえしなきゃ俺らは無敵なんだしさ。ま、色々と頼んだ」


「はぁ……。なんでこんな無茶なことしてるんだろうって、ふと冷静になりそうですよ私」


 溜め息をつきつつも、俺の考えに反対する気はなさそうだ。

 さて、後は走るだけなんだが、トーブはどうしようか。今は気絶して寝てるが、もし起きてしまった場合、色々と面倒なことになるのは間違いない。


「あの、そろそろトーブさん起こしましょう。あの人だかりのすぐ後ろにはもう、私達の目標であるS級達がいるはずです」


「え、でも今起こしちゃったらお前の能力が……」


「大丈夫じゃないですか? 私、トーブさんに殺される未来が微塵も見えません」


「たしかに……」


 カリバが神だと分かった途端、はい殺そうとなるような男ではない。


「ま、こいつアホだし、心配するだけ無駄か。じゃあカリバ、頼む」


「了解です。それじゃああなたは」


「分かってるって。さーて……ようお前ら。二人で仲良くコソコソイチャイチャして待たせてすまなかったな。というか、別に待たせてるつもりは無かったんだが。なぁ、なぁんで何もしてこなかったわけ? いくらでも俺らを撃つ機会はあっただろ?」


 人の群れに対し、煽るように俺は声をかけた。


「フン。様子を伺っていただけだ。抵抗しても無駄だぞ。大人しくしていろ」


 先頭に立っていた眼鏡をかけた細い男が言う。

 正直見た目は弱そうで、全然迫力が無い。


「大人しくしなきゃその銃で俺らを撃つってか? 本当に? 撃てるか?」


「うるさいっ!」

 

 バンッ!

 

 照準もまともに定めないまま、男は銃を放った。

 その球は、おそらくカリバの方へ――


「グッ……」


 間一髪で、カリバに当たるのを体を使って俺は防いだ。

 まあ俺が庇おうが庇うまいがカリバは大丈夫だったんだが、それでもこれはもう脊髄反射だ。カリバを傷つけるわけにはいかない。

 ま、痛いっちゃ痛いが、こんなの、アイスと戦った時に比べたらなんてことはない。


「……ん? あれ」


 もにゅもにゅと眼を擦りながら、現状を何も理解していない能天気な声で、トーブが起きた。


 んじゃ、行くか!

 痛みはもう治まっている。何も言わずにカリバが回復してくれた。


「随分と痛いことしてくれるじゃんんか。なら、やり返しだ。バーン!」


 大げさに指で鉄砲の形を作り、相手に向けて俺は火を放った。

 当然今の俺に出せたのは弱っちい火の玉たが、さりげなく風の能力を使い勢いを速める。


 するとどうだろう。

 所詮は戦闘をしたことがない奴らだ。俺が放った弱い弱い火の玉を、まるで爆弾でも見たかのように、一斉に距離を開けた。

 道はーーできた。


「走るぞ!」


 カリバとトーブに声をかけ、一気に駆け出した。


「おい逃げるな!」


 俺達に怒声を放つが、さっきよりも明らかに勢いがない。明らかに、突然どこからともなく火の玉を出した俺にビビっている。


「それじゃさらに。 バーン! バーン!」


 人の群れの中を通りながら、右に左に、俺は火を放った。

 当然、皆逃げていく。

 馬鹿が。当たってもせいぜい火傷程度の火なのによ。


「おいおい。お前らの手に持っているものは飾りか?」


 あっという間に人の群れを抜けていた俺は、最後尾に移ってから背後の大群に向かって声をかけた。


「舐めやがって!」


 俺の言葉に逆上した何人かが、俺達に向けて銃を放った。


 だが、これだけ距離があれば――


 ポスポスポス。

 俺が作った土の壁が弾丸を防ぐ。

 が、思ったよりは威力が高く、土の壁を貫通してきた。

 さすが技術が進んでるだけはある。そんな弱っちいもんじゃなかったか。


「いっ……」


 全身に激痛が走る。ったく、どうやら土の壁は全然威力を落としてくれなかったらしいな。


「カリバ、すまんが頼む」


「はいはい」


 めんどくさそうな返事と共にカリバは俺を回復してくれた。


「あーもう起きてからずっと何が何だかわかんねえぞ。 あんちゃんさっき銃くらっとったよな? なんで傷一つ無いんだ?」


 どうやらトーブはもう完全に目を覚ましているようで、当然の疑問を俺に投げかけた。


「とっても体が丈夫なんですよ。そうですよね?」


「あ、ああ! カリバの言うとおりだ! 俺の体頑丈でさ! 銃なんかちょちょいのちょいなんだよ!」


「マジでか。すげえやあんちゃん! やっぱあんちゃんを頼って良かった!」


 いや、こんな雑な嘘信じるんかい!


 まあいいや。ほんと、トーブが単純でよかった。

 そんなトーブが愛した女は、もうすぐそこだ。

 一体どんな女なのか全く想像できないが、まあ悪い奴じゃなんだろうな、きっと。

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