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抜けた先


 幸いにも俺達がたどりついた穴の先は人通りが無く、誰かに見つかるようなことも無かった。

 わずかな灯りが点々と用意された廊下で、ひとまずの平和を噛みしめつつ、大きく伸びをする。


「いやほんと、無茶苦茶でしたよ……」


 落ち着いたところで、カリバがはぁ……と息を落としながら言う。


「でも、上手くいったろ?」


「私がいなかったらどうなってたと思ってるんですか」


「お前だからやったんだよ。信じてたから、な」


「なっ”」


 顔を真っ赤にして、俺から視線を逸らす。


「なぁ、俺明らかに死んだと思うんだけど、なんで生きてるんだ?」


「えっ、あぁ。なんでだろうなぁ~」


 カリバが死にかけから回復してくれたんだよとはさすがに答えられない。分からないふり分からないふり。


「で、あのロボット達はまだ追いかけてくるのか?」


 さすがに二回戦とかされたら逃げられる気がしない。


「いえ、基本的には先ほどのロボは人が通るところには現れません。人を助けた後も、普段人が通らないところを通り、連れていきます」


「ふーん。まあゴミ捨て場にいるような奴らだしな」


「はい。汚い、臭いですからね。ボラの住民達は、綺麗好きの集まりですし。まあ、精密機械に常に触れているので、そうなるのも当然と言えば当然なのですが」


「いや、機械って結構汚れるイメージあるぞ。油やら何やらで」


「そういう仕事は全てそれ専用のロボが引き受けているので。住民達が使うのはあくまで脳だけです」


「ほーん……」


 本当にここ過去なのか? ってくらい色々と近未来的なんだけど。どうなってんのほんと。


「で、ねえちゃん。あいつがいる場所には、こっから行けそうなんか? わりぃがまたゴミ箱通るなんて提案はできればご遠慮願いたいね」


「あ、そのことなんですけど、本当に偶然なのですが、目的地からそれほど遠くないところに私達はいます」


「マジでか」

 

「はい。今いるのが、研究対象B級の寝室が並んでいるフロアです。あ、寝室と言っても安心してください。音によるストレスによって研究に支障が出ないよう、完全に防音されているので、周りの部屋に私達の声は一切聞こえません」


「へぇ、B級ねぇ」


 たしかトーブの女はS級だっけか。


「B級の方々は自らの希望で研究対象になっている協力者の方々ですから、それはもう良い部屋に住んでいるんですよ。部屋を見たらきっと驚くと思います」


「んなことどうだっていい! 早くあいつの場所に連れて行ってくれ!」


「そう焦らないでください。心配しなくても案内しますよ。こっちです」


 カリバの案内の元、先に進む。


 そして少し歩くと、カリバは足を止めた。


「ここから先がA級のフロアになります」


「随分とすんなりいけるもんなんだな。セキュリティロックとかそういうのはしてないんか?」


 こういうところって厳重にしてるイメージあるけど。映画とかで。


「はい、していません。そもそもボラの人達は全員研究者なのですから、まず他の住民に何かを隠す必要はありませんし、住民以外がここまで来ることなんて絶対にありえないので」


「壁超えてゴミ箱抜けやってくるなんて、まあ普通は考えないか」


「はい。もしも何かあるとしたら、裏切りとかになるのですが、そこも心配いりません。ここの住民は裏切ろうとすると、あらゆる技術を行使して粛清されますので」


「こえーこえー。技術は進んじゃいるが、結局ここから出られないってわけだ。科学の奴隷だな」


「その通りです。といっても、それもA級までの話。今から向かうS級は、選ばれた科学者しか通れない禁断の場所です。警備は、厳重なんてものではありません」


「おいおい、さっき全員研究者だから何も隠してないって言ってたじゃん」


「S級というのは、それほどやばい研究対象だということです」


「やばい研究対象ねぇ……。でもさ、そんなに警備がやばいところに、このまま真っすぐ行っていいのか? やっぱりゴミ箱から直接行ったほうが良かったんじゃないか?」


「いえ。ゴミを通すのすら厳重に注意されているのがS級フロアです。ゴミ箱なんてものはありませんよ。フロア内で生まれたゴミは、フロア内で焼却し、処分されます」


「あの穴はあらゆる場所と繋がってるんじゃなかったのか?」


「繋がっていますよ。あくまで人が生活するあらゆる場所と、ですけどね。言ったでしょう、S級は人とは見られていないって」

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