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壁を越える方法

「で、行くって言ってもどう行くんだ? 素直に入り口から入るってわけではないんだろ?」


というかそもそもどこに入り口があるのかすら分からないけれど。

 どこまでも壁しか無いし。


「ええ。ボラに入るには特別な許可証が必要になりますから、正面から行ったところで通してはもらえません」


「入るだけでも大変って、随分とまあ厳重なことだ」


 そんなに見られて困るもんでもあるのか?


「ボラの中は外よりも何年も技術が先をいっていますからね。別世界と言っても過言ではありません。なので、もし気軽に入れるようになってしまうと何が起こるか……。急激な人類の発展は、我々神も望んでいませんから」


「ん? 神がなんだって?」


「い、いや。何でもないんだ。な、カリバ?」


「は、はい」


 危なっかしい奴め。トーブの前だというのに口が軽すぎだ。

 このままではトーブに正体がバレるのも時間の問題なんじゃないか?


「ふーん。ま、なんでもいいさ」


 トーブがサバサバした性格で助かった。

 もしかしたらカリバが神だと分かってもトーブなら案外全然気にしないかもしれない。


「で、許可証とやらを持ってない俺達のボラへの入り方ってのは、どういうのなんだ?」


 見たところ、ボラへは全く入れる様子はない。


「ありません」


「はぁ? ありませんってお前」


「普通に考えてください。外よりも遥かに技術が進んでいる街が、技術の劣っている人の侵入を許す造りをしていると思いますか?」


「いや、そりゃそうかもしれないけどさ。でも、それじゃあここまで来たのは無駄だったってことか?」


「まあ、本来ならそうです。でも、私は言いました。案内は私が行いますと」


「何か策があるんだな?」


「何も無ければ、ボラには入れませんから諦めてくださいと事実をありのままに言っていましたからね。というか、少し前の私なら間違いなく言っていたでしょう。でも、あれを見た後ならば、私にボラが案内できると思ったのです」


「あれって?」


「トタースでのあなたの不思議な行動ですよ」


 不思議な行動なんてしたっけ? ウインクしても全く効かなくて変人扱いされたあれか?


「まだピンと来ていないようですね。あれです。メジハにやった」


「って、お前まさか!」


「そのまさかです。あの、ふわふわと人を浮かす技を使ってこの壁を越えていただきます。まさか、できないんですか?」


「いや、余裕でできる」


 メジハを浮かせて、より強く確信した。

 人一人ならば、どこまででも高く持ち上げることができる。


「壁の頂はそこそこ広い足場があります。そして、わざわざ壁の頂を警備しているようなこともありません。そんなところに本来人が登れるわけないですからね。なので、壁の上に一度到達し、そこから降りて壁の中に入ります」


「なるほど……」


「間違っても、メジハさんみたいな降ろし方はしないでくださいよ?」


「心配するな、誰よりも優しくお前を浮かすよ」


「うひゃあ。俺達今から空飛ぶんかぁ!」


 きらきらと目を輝かせてトーブが空を仰ぐ。


「言っとくけど、そんな楽しいもんでもないと思うぞ?」


「楽しい楽しくないじゃなくて、空飛ぶのは好きなんだ」


「好きって、なんだ? お前空飛べるのか?」


「んなわけない。俺はあんちゃんと違って普通の人間だしな。でも、好きなんだ」


「ふーん」


 よく分からんけど、トーブが喜んでくれるならそれでいいか。


「で、もう浮かしていいのか? 誰から行く?」


「まだです。確かに壁の頂には人が余裕で歩けるスペースがありますから、今ここで壁に上ってから人通りの少ないところまで歩くことも可能ですが、万が一壁の上を歩いているところをボラの住民が空を見上げたことで気づいてしまったらすべてがおしまいです。なので、しばらくはボラの外周を半周と少しくらい歩いて、一番人通りの少ない部分の外側まで辿り着いたのち、あなたの力を使ってもらいます」


「まだまだこのだだっ広い平原を歩くのかよ……」


「まだも何も、ボラに潜入してからもずっと歩き続けますよ」


「うへぇ……」


 お前は自分の疲労を簡単に回復できるからいいだろうけど、俺とトーブには体力ってもんがあるんだぞ……。


 トーブがいるからか、カリバは俺のことをちっとも回復してくれないし……。

 というか、俺とトーブに比べてカリバがいつまでも元気いっぱいだったらさすがにトーブも何かおかしいと怪しむんじゃ……。


「ねえちゃんほんま体力あるなぁ。よーし、俺もまだまだ頑張らないと!!」


 あ、この人バカだ。

 これなら、カリバの正体に気づくことは一生無さそう。


「さぁさぁ! どんどん歩きますよ!」


 ちっとも疲れを見せないカリバに、はぁはぁと息を切らしながら、俺は必死でついていくのだった。

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