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そして彼女は生き返る


少し経ってから、シュカが俺達の回収の為再びやって来た。


「って、あれ? シュカが二人?」


そう、そこにはシュカが二人いた。

片方のシュカは、腕を片方失っている。


「苦労したよ。君を探して色んな場所を彷徨って、大天使様の存在を知って、もしかしたらと思ってそこに行ったの」


「大天使様に会ったのか?」


「うん」


よくあの大天使様が会ってくれたな。

いや、会ってくれるのも当然か。こっちの世界のシュカと俺との関係も把握してるのだろうし。


「それで大天使様のところに行ったらさ。君とは行き違いになっちゃってたんだけど、もう1人私がいてもうびっくり」


そりゃびっくりするに決まっている。

俺達が平行世界の住民だとは知らなかったわけだし。

そもそも俺は1度もシュカに名前を名乗らなかった。別に隠していたわけではないが、呼ばれる時はいつも君とかだったし、名乗る機会が無かったのだ。

もし名乗っていたのなら、カプチーノという名前はこの世界の支配者と同じだと教えて貰えたかもしれない。

まぁ早く敵の正体が分かったところで、やることは変わらなかっただろうけれど。


「で、もう1人の私に聞いたら今から君のところに向かうって聞いたから一緒に飛んできたの。私の所から離れてもまだ世界を救うことを諦めてなかったんだって嬉しかったよ」


「諦めるわけないさ。俺の大事な人が殺されたんだからな」


きっと何があっても、俺は諦めることは無かった。それくらい、俺は強い気持ちで挑んでいた。


「その大事な人が生き返らないって知って泣いて悲しんでたもんね」


「そ、それは今は関係ないだろ! 大体、カリバは生き返るんだよ! これからな」


「生き返る!?」


「そ。あ、その前にその無くなってる腕治してからにするか。ちょっとついてこい」


チカとの戦いで、シュカは腕を失った。

あの時感じた痛みを無くすことはもう決してできないが、失った腕は取り戻せる。


「え? 治せるの? あー、うん。でも……いいや。これはこのままでいい。この傷を見れば、いつでも君を思い出せるから」


「手が使えないのは色々と不便だぞ?」


「私が良いって言ってるんだから良いの!」


「……そっか。まぁ、無理にとは言わないよ」


普通に考えたら、腕が戻るのならば戻すべきだ。

でも、普通に考える必要は無い。

大事なのはシュカの"意思"だ。

シュカがそう言うのなら、腕はそのままでいい。

「大丈夫。いつか必要になったら腕を治すよ。治せるのは今だけって訳でもないんでしょ?」


「じゃあ、治す方法だけ教えとく」


「うん。ありがと。でも、きっとそんな日はしばらく来ないと思う。だって、この世界はもう、変わったんだから」


「そうだな。この世界に、支配者はいなくなった」


誰にも支配されない世界。それが、この世界の新しい形。


「いないのはいないので困るかもしれないけどね。君さえ良かったらこの世界を」


「それは無理だ。そもそも俺はカプチーノなんだからな。それより、これから瞬間移動でワードルに連れてってくれないか。ここにいる全員」


「カ、カプチーノ? ま、まぁいいや。詳しいことは聞かないことにする。知らない方がいいこともあるし。で、あそこに行くってことは、早速生き返らせるんだよね。君の大切な人を」


「そういうこと。だから頼めるか」


「もちろん」


それから、シュカの瞬間移動で俺達はワードルに来た。

ひんやりとした空気が肌に触れる。

世界の空はすっかり明るくなっても、ここは洞窟の中。明かりは壁に連なる僅かな灯火のみだ。

いつ来ても、ここは変わらない。

だが、感じるものは変わっていた。

今まではなんだか重苦しい空気のように思えていだが、今はとても安心する。

それはきっと、俺が変わったからなのだろう。


「ルドーワ!」


洞窟の中心で漂う煙に声をかける。

すると、直接脳に声が届いた。


【なんだ? また来たのか? お主は力は使えないと言っただろうが】


「今回はちゃんとこの世界の四人を連れてきた。信頼もされてる」


【何? ほぉ、たしかに四人揃っておる。それならば上手くいくだろう。儀式の説明は、必要無いか】


「経験者だからな」


過去にやった儀式と同じように、四人をそれぞれ指定の台座に立たせ、目を瞑らせる。

辺りは暗闇となり、前回と同様の言葉が聞こえ、一人一人伝説級の能力者が現れる。

一度経験していることもあって今回は驚きは無い。ただ、この急速な気温変化は何度経験しようと慣れることはなさそうだ。

やがて伝説級の四人が光り輝き、心をぽかぽかと暖かくさせてくれた。


【今、新たな力が誕生した。さあ目を覚ませ、お主の手には、希望の光が満ちている】


これで終わりだ。

周りの風景は直に元に戻る。


間違いない。

俺の中には再びあの力が宿っている。

この感覚はよく覚えている。


そしてこの後やることも、忘れていない。


いつの間にか、俺はあの不思議な夢のような世界から戻ってきていた。

周りには色々な心情で俺を見つめる皆がいる。

全員の瞳をしっかりと見る。

皆ありがとう。本当に、ありがとう。


一度深呼吸をして、俺は叫んだ。

大切な人の名前を――


「カリバ!」


大きな光が瞬く。

その光はまるで踊るように空中を彷徨いなが2つに分かれ……


二人のカリバが現れた。


「二人同時に、復活したのか……!」


予想外の、嬉しい誤算。

名前が同じだからこその奇跡、なのだろう。


現れたカリバは、二人とも周りをキョロキョロと見回している。


「おかえり」


そんな二人に向けて、俺はめいいっぱいの気持ちを込めて伝えた。

二人への強い想いを、この僅か四文字に込めた。


そしてカリバは一瞬だけ何か思い詰めた顔をした後――


「「ありがとうございます。信じてました。きっと、また会えると」」


そう、とびっきりの笑顔で告げた。

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