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異世界転生-一緒-


『ずっと一緒

俺と萌衣は、ずっと一緒だった。

萌衣が生まれた日から、俺達はずっと離れたことがなかった。

時には喧嘩して、時には口も聞かなくなった。

けれどそれは決して離れた訳ではなくて。離れなかったからこそ生まれた喧嘩だった。



だが俺は今日、"ここ"を離れる。

俺を止めるため、俺は前に進む。

今日出発することを萌衣に伝えなかったことで、萌衣が悲しむことは分かっている。

それでも、俺は進む。進まなければならない。

この問題は、萌衣には全く関係ない。

俺が勝手に起こしてしまったことだ。

だから、萌衣を巻き込むわけにはいかない。

今までずっと一緒だった俺達は、ついに離れる……



のは、ごめん。やっぱ無理だ。

だから、俺は必ず戻ってくる。

たとえ離れていても離れない。

きっと萌衣のことを考えない日はこれからも1日たりともないし、ずっと俺の中で萌衣は中心にいる。

たとえどれだけ距離があっても、世界を隔てても。

もし萌衣が俺と同じように俺に依存してくれているのなら、俺のことを毎日考えてくれるのなら。

俺達は離れることは無い。

俺が旅立ってもそれを俺は離れただとは思わない。

学校に行って帰ってくるのと同じように、ちょっと救世主を見つけてすぐに帰ってくる。

だから忘れないでくれ。

俺を、俺という存在を。

萌衣さえ忘れなければ、俺達は"ずっと一緒"なんだ。

絶対に、永遠に。

たとえ何があっても。

そういうわけで、ちょっと行ってくる。

何日、何年かかるか分からないが、"ちょっと"行ってくる。

次に顔を合わせるのは、平和になった世界だ。

俺達は

"ずっと一緒"だ』


「ずっと一緒、か」


馬鹿だなぁお兄ちゃんは。

ほんと、馬鹿だよ……。


涙があふれる。

お兄ちゃんは行ってしまった。

ここではないどこかへ。


わたしはきっと、お兄ちゃんを忘れることは無い。

だから、このままここで何もしないで待っていても、それは"ずっと一緒"なのかもしれない。

けれど――――


お兄ちゃんの隣にいたい!


たしかに今回の一件はお兄ちゃんによるお兄ちゃんが原因の大事件だ。わたしが何かをしたわけでもなくわたしに責任なんかない。

でも、それ以前にお兄ちゃんはわたしのお兄ちゃんだ。

兄のミスを一緒に被るのは妹として当然の責任。

だからこのままお兄ちゃんに任せっきりなんてことはしない。たとえそれが迷惑に繋がる行為だとしても


――わたしも、お兄ちゃんがいる世界に行く!


でも、今までなんのお手伝いもさせてもらえなかった以上、別の世界に行く知識なんてない。

だから、0から始めなければいけないのだけれど、お兄ちゃんみたいにわたしは頭がよくない。

でも、それなら――人に頼ればいい。

この地下にはたくさんの仲間がいる。

一人一人が今の世界を変えたいと思っている。


わたしは走った。

そして、走りながら呼びかける。


「わたしと一緒に世界を救いませんか!」


枯れるほど大きな声で、叫ぶ。

人の少なかった道は、人で溢れていく。

皆、部屋から出てわたしの言葉に賛同してくれた。

誰もが立ち止まり、わたしの力になろうと決意に満ちた目をしてくれた。


やがて足を止め振り向けば、たくさんの仲間がそこにいた。仲間で大きな道ができていた。


「みんな!」


先程とは違う、嬉し涙が頬を伝う。


「ありがと!」


まだ何かをした訳では無い。

それなのに、わたしはそう叫んでいた。


「シスタさん」


そんなわたしに、この地下での1番の美人、カリバちゃんが微笑みながら近づいてくる。


「お礼を言うのは私達の方ですよ。私達を頼ってくださって、ありがとうございました」


それは、心の底からの嘘偽りないお礼だった。


「ふふっ」


気がつけば、涙はもう流れていなかった。


「よーしやるぞー! いつまでもこの世界を好きにさせてたまるもんか! 地下での生活なんてさっさと終わらせて、地上の生活を取り戻そう!」


「「「「おー!」」」」


地下全体を震わすような威勢のいい返事。


「シスタさん、世界を救うための作戦、早速私達に聞かせてください」


そしてわたしは語る。

わたしはこことは違う世界から来たことを。

ここではない別の世界に、この世界を救える人がきっといることを。


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