妹との会話②
「っていうか、能力ってそういうこと書けばよかったんだぁ、なんかもったいないことしたなあ」
「ほんとだよ、もったいなさすぎるぞお前」
なんでも手に入るのにメリャって……。
「それで、お兄ちゃんはその能力を使って、童貞捨てられたの?」
「おまっ……」
中一の女の子がそういう話題するか?
「どうなの?」
「そりゃ、捨てたけど」
捨てたどころか、飽きるくらいやっちゃったけど。
「ふーーーーーん」
妹は、俺の答えを聞くと明らかに不機嫌になった。
「なんだ? 何かご不満か?」
「べっつにーーー。その童貞捨てた相手って、あの黄色い髪の奴とピンクの髪の奴?」
「いや、違うけど……」
カリバとは当然何度もヤッたが、童貞を捨てたのはカリバ相手ではない。
ミステにいたってはまだ落としてもいない。
「じゃあ、あの人達はなんなの?」
「旅の仲間ってやつだよ」
「仲間、ねえ。でも、あの子ともエッチしたんでしょ?」
「うっ……」
「ふぅーーーん」
妹様、もう超不機嫌。
「俺の話よりお前だお前! お前は何でこんな村にいるんだよ!」
「いや、なんかね。気が付いたらこの近くで眠っててね。どうしよーってなってたらあの人達が拾ってくれて。それからずっとここにいるの」
「お前なぁ。知らない人にそんな簡単についていくなよ。たまたま良い村だったから良かったけど」
この世界には平気で女を売っている輩も多いと聞く。
萌衣は、実の兄の俺から見ても可愛いし、売るには絶好の女だ。本当にそういうところに拾われなくて良かった。
「一応聞いとくけど、この村では変なことされてないよな?」
「変なことって?」
「いや、だから、その、エロいことだよ」
「ああ、それなら大丈夫。私、男に興味が無いと思われてるから」
そういえばそんなようなことを爺さんから聞いた気がする。
「なんでそんな風に思われてるんだ?」
「そりゃ、男からのアプローチを全部蹴ってるからだけど」
「なるほどね」
妹様のお眼鏡に適う男はここにはいなかったか。
「で、お兄ちゃんはここからの帰り方知ってるの?」
「知らねーよ。第一帰る気無いし」
「えー!? お母さん心配してるよ!」
「うっ……」
そう言われるとちょっと帰らなくちゃと思ってしまう。
なんだかんだで、親に心配はかけたくない。
「でもなあ、俺、ここの生活気に入ってるし」
「女の子が落とし放題だもんね、気に入ってて当然だよね」
図星すぎて反論ができない。
女に飽きたといっても、この便利な能力を手離したくない。
「ま、お前との話はこんなもんか。じゃあもう俺寝るわ、おやすみ」
大体話は聞けた。
もうこれ以上聞くことも無い。
「待ってお兄ちゃん!」
「なんだ? まだなんかあるのか?」
「いや、そのね?」
「なんだよ」
萌衣はやけにモゴモゴとして、なかなか話そうとしない。
「用が無いなら行くぞ?」
この調子じゃいつまで経っても話しそうにないな。
それに、そんな言いづらいことわざわざ聞きたくねえよ。
ずっと黙っている妹に背を向け、泊まる予定になっている爺さんの家の方へと歩き出そうとした。
しかし、俺が歩き出す瞬間。遂に決意を固め、一度深呼吸してから萌衣は大きな声で言った。
「あの、わたしもお兄ちゃんと一緒に行かせて!」
「はぁ?」
「お願い!」
「いや、お願いって言ってもな」
「お兄ちゃんと一緒に行きたいの!」
「そんなこと言われても……」
「お兄ちゃん、大事な妹をこんなところに追いて行くなんてできるの?」
そういうこと言うの、ズルくないか?
「はぁ……。分かったよ。ついてきたきゃついてこい。その代わり、俺達がやろうとしてることには一切口出しすんなよ」
「お兄ちゃんがやろうとしてることって?」
「世界征服」
「え?」
「世界征服だよ! お前は一切世界征服について口出ししないこと! 分かったか!!」
「お兄ちゃん……」
妹が、可哀想な人を見る目で俺を見る。
「なんだよその目は。言っとくけどな、俺はマジで世界を征服する。金だって女だって力だって手に入れたんだ。この目があれば、世界だって手に入れられて当然なんだよ」
「はいはい、頑張れ頑張れ」
こいつ、絶対俺のこと馬鹿にしてるな?
でもま、こいつと旅するのも、それはそれで悪くないかもな。
なんだかんだで、こいつのことは嫌いじゃないしな。