異世界転生-二択-
「世界征服? 何それ」
あまりにも突拍子のない言葉に、面食らってしまった。
「言っておくが、冗談ではないぞ。世界征服、かっこいいじゃんか」
「かっこいいかなぁ。萌衣はそれ悪役にしか思えないんだけど」
なんか、魔王とかが目指しているイメージ。
「悪役……」
「うん。悪役」
正義のヒーローは世界を征服する! なんて絶対に言わないと思う。
「でもまあ、悪役でもいいさ。俺はやると決めたことをやめるなんてことはしない」
「え……じゃあ本当に世界征服するの?」
ちょっとした冗談みたいなつもりで聞いてたんだけど。
「そのつもりだ。そもそも、こんなゲームもテレビも無い世界で、目標も無く生きていくのはつまんないだろ?」
わたしは、お兄ちゃんと一緒にいられれば別につまらなくはないけど……。
「まあお兄ちゃんがやりたいなら、良いけど」
「サンキュ」
どうせわたしが駄目って言ってもやめないだろうしね……。
「で、具体的に何をするのが世界征服なの?」
いざやると決めても、何をすれば世界征服なのかイマイチ分からない。
「それなんだけどさ。二つあるんだよな」
「二つ? 二つのことを成し遂げるのが世界征服なの?」
「いや、そうじゃなくて。二パターン考えてるんだよ」
「二パターン?」
「そ。ま、簡単に言うと善と悪っつううかさ。世界を征服するにしても、世界をより良くするのと、自分の思い通りにする2パターン」
「そんなの絶対前者だって。皆が幸せの方が絶対良いって」
自分達だけが楽しいのなんて、わたしは嫌だ。
「まあそうなんだけどさ。せっかくのゲームだろ? 自分の思い通りに世界を操れたら、面白いとは思わないか?」
「いや、全然」
お兄ちゃんには悪いけど何が良いのかさっぱりだ。
「うぐっ……。まあいいさ。こういうのは男のロマンなんだ」
「ロマンねぇ……」
「そう。ただ、同時には絶対できないし、選ばなくちゃいけないんだ」
「ふーん」
どっちでもいいなら皆の為の世界征服の方いいと思うんだけど、わたしが何か言ったところでお兄ちゃんは納得しないだろうな……。
「で、だ。この世界がゲームならさ、旅のヒントを教えてくれるNPCってもんがいると思うんだよ俺は」
「NPC、か」
お兄ちゃんは、ここに住んでいる人達をNPCだと思っているんだ。
わたしにはそうは思えない。NPCなら皆あらしじめ用意された決められた言葉を言っているはずだが、はここの世界人は誰もが心を持っていると思う。他の人が全員わたしと同じように異世界転生した人だとはさすがに思わないけど、NPCとはちょっと違うんじゃないかなぁ。
「そう。それでさ、前に落とした女の人に聞いたんだが、この世界には天使がいるらしいんだよ。天使ってお告げとか言いそうだろ? だから、まずは天使を探そうかなって」
「天使かぁ。それはちょっと会ってみたいかも」
わたしだって女の子だ。可愛いものには興味がある。天使って絶対可愛いもん、見てみたい。
「じゃあ決まりだ。天使を探そう」
「って言っても、どこを探すの?」
「なんか、天使が住んでいる街とかそういうのがあるんじゃないのか?」
「なにそれ! 超行ってみたい!」
可愛い子しか住んでいない町とか、絶対楽しいじゃん!
「よし、じゃあそういう町を探そう。地図とか見ても地名だけじゃ分からんし、とりあえずは聞き込みかな」
「誰に聞くの?」
「そりゃあもちろん……その辺の女の子を落として……」
「わたしの能力、お兄ちゃんに使っちゃおうかなぁ」
そう言ってニコッと笑う。
「じょ、冗談だって。教育係のおばさんにしよう。色々なことを教えてくれるし、そういうことも知っててもおかしくない」
「おっけー。楽しみだなぁ、天使の住む町」




