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彼女の本当の名

「倒せないって、絶対か?」


「いえ、絶対ではありませんよ。大体十年くらい頑張れば、或いはといった感じでしょうか」


「十年!? そんな猶予は……」


「分かっていますよ。だから言ったのです。倒せないと」


「じゃあ、俺の戦いはこれで終わりなのか? それじゃあこの世界は――」


 救うことができないじゃないか。


「ええ、あなたの戦いはここまでです。ですが、世界は変われますよ。あなたではなく、そこのミステ、いえ、シスタさんの手によって」


 ここに来るまで何も話さなかったミステを、大天使様はじっと見つめる。


「彼女には最強の能力があるじゃないですか。なんでも消せちゃうなら、彼も例外ではありません」


 それは俺も分かっている。だけど、それはできない。なぜなら――


「ミステはあいつがお兄ちゃんだから消せないって」


「分かっています。だから、消せるようになれればいいのです」


「大天使様。わたしはたとえ何を言われてもあの人を消す気はありませんからね」


 トタースから戻ってきて、初めて口を開いた。相変わらず今までのミステとは全く感じが違う。


「それは、あの人があなたの兄だからですよね?」


「そうだけど、それがなんだっていうの? あれがお兄ちゃんだってのは大天使様だって知ってるでしょう?」


「ええもちろん。あれは正真正銘あなたの兄です。ですが、消したところで兄を失うわけではありません。この意味、今のあなたになら分かりますよね?」


「もちろん。だけど――」


「とある世界にこんな言葉があります。"二兎追うものは一兎も得ず"。二つ求めたら一つも得られない、というような意味です。って、わざわざ説明する必要もありませんでした。何せあなたはこの言葉を知っていますからね」


「だから何?」


「過酷な選択かもしれませんが、一兎を諦め、一兎に絞りなさい。それが一番良い選択なのはあなたも分かっているのでしょう?」


「そんな……。どうしても助かる方法は無いっていうの?」


「はい。世の中はそんな都合の良いものではありませんよ」


 そこで大天使様の話は終わった。悔しいが、俺には二人の会話の内容を理解できなかった。大天使様は一体何を伝えたかったのか、二兎とはどういうことなのか。


「まあすぐに決断せよとは言いません。それよりもまずは、皆さんに全てをお話しするべきかもしれませんね。特に、シスタさんとカプチーノさんには」


「そう、だよね。いつまでも訳の分からないままだと申し訳ないし」


「それに、今一度過去を見つめなおすことで正しい選択をすることができるはずです。なので、全てここで話してください。あなたがこの世界に来てから、カプチーノさんと出会ったまでの話を」


 決意を宿した目で、ミステは俺を見つめた。

 何も知らなかったミステの過去が、遂に語られるのか。


「今から話すことは、全て本当の話。創作では無い。だから、絶対に信じて」


「分かった」


 俺と萌衣は、しっかりと頷いた。大切な仲間が信じてと言うのだから、信じないわけがない。


「わたしの本名は大花萌衣。わたしは兄の大花圭と共に、この世界に異世界転生(・・・・・)をしたの」

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