妹との会話①
『シスタ』という名前に聞き覚えがあったのも今なら納得だ。
萌衣のツイッターアカウントの名前、それがシスタだ。
「すまん、カリバ、ミステ、ちょっとこいつと二人で話してくる」
とにかく萌衣には聞きたいことがいっぱいある。
だが、本来この世界の人間では無い俺達の会話を色々聞かれてしまうのはまずい。
萌衣を連れてしばらく歩き、周りに誰もいないことを確認すると俺は話を切り出した。
「お前、なんでこんなところにいるんだよ」
「お兄ちゃんこそ! 突然行方不明になったと思ったら、なんでこんなところに!」
「行方不明?」
「そうだよ! 引きこもりニートのお兄ちゃんでも、いなくなったら家族皆心配するんだよ!」
「えーと、その、すまん」
あの親が俺のことを心配してくれたとはとても信じがたいが、俺の妹は昔から嘘をつけない性格だ。きっと本当なのだろう。
「というか、それより! お前はなんでこんなところにいるんだ?」
ここは異世界だ。妹がいるはずがない。
「なんか、トラックって人にカード渡されて、それに名前書いたら」
「つまり俺と同じか」
萌衣も俺と同じように、異世界行きのカードに名前を書いて飛ばされたんだ。
「にしても、俺も萌衣も行方不明って、あっちだと結構なニュースになってそうだな……」
「わたしは行方不明じゃないよ!」
「アホ、こっちに来た時点でお前も行方不明だっての」
「そんな……」
「というか、お前あのカードでこっちに来たってことはさ。お前も最強のなんか持ってんの?」
「最強の? 何それ」
「ほら、あのカードに能力書くところあっただろ?」
「ああ、あれなら、『メリャ』って書いたよ」
「は?」
「だから、メリャって書いたの」
メリャって、あのトラクエに出てくるあれか?
「おま、アホすぎるだろ」
「え? なんで?」
「だって、なんでよりによってメリャなんて書くんだよ」
「それしか知らないから」
「はぁ?」
「わたし、普段全くゲームやらないから、それしか能力知らなかったの!」
「いや、メリャは能力っつうか魔法なんだけど……」
「え? 魔法と能力って何か違うの?」
「あのなぁ」
相変わらずのおバカっぷりだ。
さすが中学校の期末テスト後ろから一番。
「そういうお兄ちゃんはどんな能力なの?」
「俺か? 俺は女をウインクだけで落とせる能力」
「ふぇ?」
「だから、女をウインクだけで落とせる能力だよ」
「な、なにそれ!?」
「凄いだろ?」
「凄いっていうか、キモい」
「うっ……」
実の妹にキモいと言われるのは、普通に傷つくんだが。




