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謎の少年


 またチカみたいにとんでもない敵が現れるのは勘弁してくれよな……。

 そんなことを考えつつ、トタースの城の頂上へと歩を進めていく。そういえば何度もここへは来たものの、一階しか見ていない。一階以外の上のフロアのことは何にも知らない。

 ま、別に知ろうとも思わないがな。

 ただ黙々とゴールの見えない階段を上り続ける。結構長い間歩いたものの、誰かが襲ってくる様子は無い。どうやらチカより強い人物はいないと思ってもいいのかもしれない。

 いや、まだてっぺんに居座るやつの実力が未知数か。あのチート能力のチカさえ従えていることだし、どんなに強くても不思議ではない。


 今のこちらのメンバーは、俺、シュカ、ミステ、ツヨジョの四人。カリバ二人は死に、萌衣は休んでいる。二人目のシュカは今頃レジスタンスで俺の勝利を願っていることだろう。


 こっちの世界に来てから色々とあった。なんならこっちの世界に来てからの方が長く感じている。実際はそんなことはないんだけどな。


「あ、あそこで階段終わってない?」


 シュカの言うとおり、長い螺旋階段はそこで途切れていた。

 結構な距離を歩いたとはいえ、窓の外を見ればまだてっぺんまで到達していないことが分かった。そもそもてっぺんは雲よりも高い所にあるので、こんなに早く着くはずがない。


 ひょっとしてこの城は一番上まで行けない作りになっているのか? となると、ここがもう最終フロアなのか? 


 やがて階段の先端に辿り着き、見上げるほど大きな扉の前で立ち止まった。


 ごくり。

 生唾を飲み込み、皆の顔を確認する。既に覚悟はできている顔だ。それなら、このまま進んでも問題ないだろう。


 ゆっくりと扉を押す。扉はギシギシと音を立てて開いた。


「ん?」


 扉の先には誰もいなかった。だだっ広い部屋に、何やら虹色に輝く池のようなものが真ん中にぽつんとある。


「どういうことだ?」


 ここまで来たのは無駄足だったのか? そんなのは勘弁してほしいんだが。


『池 見覚えがある』


 池を見つめ、ミステが言う。


「何か知っているのか?」


『分からない だけど やるべきことは分かる』


 どういうことだろうか。


『この中に入れば場所が移動できる』


 どうしてそう思うのかは分からないが、ミステを見るに適当なことを言っているわけではなさそうだ。


「よし、じゃあ入るか」


 ミステを疑う必要は無い。俺は躊躇うことなく池に足を伸ばした。俺に続いて、シュカとツヨジョとミステも中へと入る。

 すると――俺達はいきなり違うところにいた。


 真っ暗だ。真っ暗で何も見えない。


 一体俺達はどこに来てしまったのだろうか。


「どうやら、ここへの行き方は覚えていたみたいだな」


 誰かの声がしたかと思うと、突如灯りがついた。

 灯りが付いた瞬間、眩しくて目を閉じてしまいそうになった。

 なんだこの金ぴかな部屋は。この世の全ての財宝はここにあるのではと思えるくらいに、高価そうなものがたくさんある。


「さて、久しぶりの再会なわけだが、俺のことは覚えているかな?」


 頭上から声が聞こえてくる。見上げれば、ゆっくりと、一際輝く金の椅子がこちらへ向かって降りてきていた。

 座っているのは、一人の少年。年齢は多分ミステと同い年くらいだ。あの少年が、この世界を握っている人物なのだろうか。


 やがて椅子は俺達を斜め上から見下ろせる場所で止まった。そしてまた言葉を続ける。


「返答は無し、か。寂しいなあ。俺はこんなにもお前がここに来るのを待っていたのに」


 少年が話しかけているのはミステで間違いないだろう。視線はずっとミステへと伸びている。そして少年は何も言わないミステを不思議に思い、少し首を捻ってこう訊ねた。


「なあ"萌衣"よ、何か答えてくれないか?」


 萌衣、だと? 突然出て来た名前に俺は戸惑う。ここには萌衣はいないし男の見つめている先はミステだ。

 大体、萌衣のことを萌衣と呼ぶのは俺だけであって他の人はその名前で呼んだりは――


「いや、こっちだとずっとシスタって名乗ってたんだったな。だったら俺もそっちで呼んだ方が良かったか? その呼び方は呼び慣れていないから、出来れば勘弁してほしいんだがな」


 またしても訳の分からないことを言う少年に俺は理解が追いつかない。一体この少年は何者なんだ? なぜミステを萌衣と呼んだんだ?

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