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あっけない勝利


 技を使った後建物から抜け出すと、真っ先に倒れた萌衣の姿を見つけた。


「萌衣!」


 萌衣の右腕が無い。少し周りを見ると、千切れた右腕が見つかった。


「くそッ!」


 なんで萌衣がこんな目に……。


「お兄……ちゃん」


「萌衣!」


 俺が声をかけると、萌衣が微かに目を開いた。


「大丈夫か? シュカ、萌衣をトタース第二支部へ連れて行ってやってくれ」


「うん。分かった!」


 出血が酷い。一刻も早く手当てをしなければ助からない。


「お兄……ちゃん。わたし……やったよ」


 擦れる声で萌衣は呟き、ゆっくりと一つの場所に指を指した。指の先には、先程何が起こったのか分からずに呆然としているチカがいた。


「分かった! だからもうそれ以上しゃべるな」


「ねえ。わたし……頑張った?」


「ああ! 頑張ったよ!」


 きっと誰もがお前を称賛するはずだ。お前のおかげでこの世界は救われるんだ。


「そっか。えへへ」


 萌衣はそう笑うと、静かに目を閉じた。

 そしてすぐにシュカと共にトタース第二支部へと戻っていった。これで命は助かるはずだ。


「この野郎……!」


 チカを睨み、俺は唸った。


「あれ? 君来てたんだ。って、いつの間にかあの二人がいない! 逃げられたの!?」


 どうやらチカは呆然としていたせいで萌衣とシュカの瞬間移動に気づいていなかったようだ。


「はぁ……なんとかしてあの子を動けない体にしておきたかったのに……」


 サラッと俺の逆鱗に触れることを言った。


「でも君が来たってことは、あたしの力ももう最強になったってことだ。あの子たちと戦ってると体が重くてさぁ。ま、手を千切る程度の力は出せたんだけどね」


 どうやらまだ自分が能力を失ったことに気づいていないらしい。いや、それとも能力無効化(ボイド)は失敗したのか? 

 戦ってみない以上、真実は分からない。


「どうしますか?」


 ツヨジョの問いに、俺は迷わず答える。


「決まってる、倒すぞ」


 たとえ能力が残っているままでも俺は戦わないつもりはない。


「ふーん。前回負けたのに元気あるんだね。そっちの天使は知らない人けど、二人だろうと負ける気はないよ」


「それはどうかな」


 能力無効化(ボイド)がかかっていることを信じて、俺は飛び出した。


「おりゃぁああああああ!」


 手を抜かず、全力を出して拳を放った。


「なっ……!」

 

 その拳を見てチカは驚愕で目を見開いたかと思うと――避けることなく顔面に当たり後方へとぶち飛んだ。


「あれ?」


 いつものチカならあれくらい避けれるはずだし当たったとしてもここまで飛ばないはず。

 飛んで行ったチカの方へと急いで駆け寄る。何にせよ追撃は必須だ。


「このっ……ん?」


 もう一撃浴びせようとしたものの、チカの反応は無い。まさかこいつ……気絶しているのか?

 ツヨジョもチカの無反応が気になったようで、隣に駆け寄ってきた。


「これは……」


 ツヨジョも気絶していることに気付いたらしい。


「どうやら、能力無効化(ボイド)は効いたらしいな」


 だからといって、能力が無いだけでこんなにも弱いなんてな。拍子抜けってやつだ。


「どうしますか? この女」


「とりあえず、能力を失ったこいつはもう何の脅威でも無い。わざわざ殺す必要も無いし、このままでいいだろ」


 恨みや憎しみは多いが、殺したところで解決するわけじゃない。こいつを殺したところで萌衣の腕は帰ってこない。


「ただいま。とりあえず萌衣は預けてきた……って、もう終わってる!」


 帰ってきたシュカが、倒れているチカを見て驚く。


「何の歯ごたえも無かったよ。一発殴って終わり」


「あのチカが一発? とても信じられないけど、見たところ二人に傷は全く無いし本当みたいだね」


 そう言って、シュカは微笑む。


「さて、ずっと勝利に喜んでいる暇は無い。いよいよ行くぞ、大本命の元に」


『この世界の頂点に立つ相手 どんな人間なのか』


「さあな。まあどんな人間にせよ負けるつもりも無いし許すつもりもねえ。ぼっこぼこにして、この世界を変えてみせるさ」

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