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ほんの一時の平穏


「まさか、こっちの世界の私と一緒にいたとはねぇ」


 萌衣達と別れてからの話を、じっくりと話した。全部は伝えきることは出来ていないとは思うがそれでも覚えていることは全部言った。


「まあ、カリバちゃんにもいたし、シュカちゃんにいてもおかしくはないよねぇ」


 既にカリバ2と出会っている分、皆驚きは少なかったようだ。


「平行世界の私かぁ、ちょっと会いたかったかも」


「良いヤツだよ。全てが終わったら、会いに行こうな」


 きっとあっちのシュカも皆に会いたいはずだ。そして会ったら絶対仲良くなれる。


「私とどっちが可愛かった?」


「どっちっていうか、見た目同じだからな。あ、でも不思議なもんで中身は結構違ったな」


 同じシュカだが俺にとってはもう二人は別の人だ。どっちも同じ顔だがそれぞれ別の魅力がある。


「気になるなあ。あ、でも、カプチーノが助かったのはそのもう一人の私のおかげってことだよね? それってなんか嬉しいかも」


 まるで自分のことのようにシュカは喜んだ。いや、まあある意味本当に自分のことなんだけれども。


「シュカがいなきゃ今頃どうなってたか。だけど――俺のせいでシュカは」


「手を、失っちゃったんだよね……。瞬間移動をさせないために手を切るなんて、チカはサイテーだよ!」


「ああ。だから俺はアイツを許さない。絶対にリベンジしてやる」


 どんなに強かろうと、俺はチカに一矢報いなければ気持ちが収まらない。


「こっちにはミステがいるからね! らくしょーらくしょー!」


 確かにミステがいればどんな強い奴だって簡単に消してしまえる。たとえチカだろうとそれは同じはずだ。ただ消してしまう前に必ず一度チカを殴らせてもらうがな。


『目 回復 まだ』


 申し訳なさそうにミステは文字を出した。


「まだ目が見えないのか?」


『見えなくはない だけど 視界 ボヤける』


「視界がボヤけていると能力は」


『使えない』


「そうか……」


 となると、チカはミステの力を借りずに倒さなければいけないってわけか……。最強の能力を使えないのはとても惜しいが、カリバがいない以上回復は出来ないし、いつ治るか分からない目を治るまで待っているわけにもいかない。チカは俺がなんとかするしかない。


「そういえば、皆はこの一週間でアイスを倒す方法を考えてくれてたんだっけか。何か良い案は出たのか?」


 今倒す方法を考えるべき相手はチカなのだが、アイスを倒す方法でも応用することで何か役に立つかもしれない。


「正直に話すと、確実なものは一つも思いつかなかったよ」


「まあ、そうだろうな」


 アイスは確実に勝てる方法なんてあるような奴じゃない。きっと何年考えようが結果は同じだ。


『だから カプチーノがアイスと同等の強さになっていると聞いて驚いた』


「お兄ちゃんがどんどん強くなっていって萌衣から離れて行ってしまう!」


 ガバっと萌衣が俺に抱きついてきた。優しい匂いが鼻腔をくすぐる。


「離れない離れない。しかし、アイスはなんとかできてもチカがな」


「チカちゃんはどんな相手だろうと勝てちゃうからねえ」


「これ以上強くなったところで、相手がチカである以上は意味は無いだろうな」


 俺がいくら強くても、チカは特に何もすることなく上回る。本当に厄介な能力だ。


『あの作戦なら 平気』


「あの作戦?」


『確実ではないけれど 一つ思いついた作戦』


「そんなものがあるのか?」


 俺の問いに、ミステはこくりと頷く。


「そういえば昨日ミステちゃん言ってたね! 大天使様のところに行けばいいって!」


 大天使様、その手があったか!

 何故もっと早く思いつかなかったのだろう。大天使様のところに行けば、まだ可能性は大いにある。


「あー言ってたかも。でも、大天使ってなんなの?」


 萌衣が頭に疑問符を浮かべ首を傾げた。そういえば大天使のところに行った時は萌衣は死んでいたから会ったことがないのか。


「萌衣とウトには説明しなくちゃな。って、そういやウトはどこ行ったんだ?」


 いつの間にかウトはいなくなっていた。ついさっきまでいたはずなんだが。


「ウトちゃんなら心配いらないよ。この時間にいなくなるのは日課だからね」


「日課? よく分からんが帰ってくるってことか」


 俺が戻ってきた日くらいずっと一緒にいて欲しかったような気がしなくもないが、何かウトなりの理由があるのだろう。


「じゃあまあ萌衣だけに説明しとくか。大天使様ってのは、簡単に言えば未来を知ることが出来る。萌衣を早く生き返ることが出来たのも、実はその大天使様ってやつのおかげんなんだよ。大天使がいなきゃ、生き返らせるのにもっと苦労してただろうさ」


 萌衣が生き返ることが出来たのは、遠い未来に俺達がワードルを見つけることを聞いたからだ。結果、俺達はそのワードルに行く時間を本来の未来よりも早めることができ、早く萌衣を生き返らせることが出来た。


「未来!? すごい!!」


「確かに、その大天使様のところにいけばチカを倒す方法は見つかるかもしれない。ただ、あくまでかもしれないだけであって絶対ではない」


 ミステが確実では無いと言っていた理由が、俺にはよく分かっている。

 大天使様の力は、あくまで未来を見る力なのであって解決策を知る力では無い。

 つまり、俺があ未来永劫チカを倒すことが出来ないのならば、何も意味が無い。


「ま、なんにせよ今は大天使様に会うことが最善の策であることに間違いない」


「決まりだね。じゃあそこに行こうよ!」


 幸い場所は覚えている。あそこならここからでもそこまで時間をかけずに行くことが出来るはずだ。


「じゃ、早速」


「だめ! お兄ちゃん体ボロボロでしょ? ちゃんと休んでから行かなくちゃ」


 俺が立ち上がろうとしたところで、萌衣に止められてしまった。


「今こうしている間にもこの世界はどんどん悪くなっていってるんだぞ。ただでさえ一週間も修行で時間を使ってしまったんだ。休んでいる余裕なんか」


「そうだけど、でも駄目なの! 急がば回れ! ここで焦ったって後に響くよ」


 萌衣が心の底から俺のことを心配してくれていることが、ぐっと伝わってきた。


「……分かったよ」


 萌衣の言葉を聞いて、逆らわずに素直に従うことにした。今日はアイスと殴り合ったりチカにボこられたりしたし、一日くらい体を休ませてもバチは当たらないだろう。


「じゃあお兄ちゃんはここでじっとしててね。今日はわたしもここで寝るから」


「ちょっ、シスタ! あんたなんか変なこと考えてるんじゃ」


「変なことって?」


 萌衣はニタニタしながらシュカの方を見た。


「わ、分かってて聞いてるでしょ」


 顔を朱くして、シュカは言い返す。


「どっかで聞いたんだけど、戦争してる時の夜ってそういうことする人が多いらしいよ?」

 

 確か身の危険を感じるから子孫を残そうと本能がそういうことをさせたがるんだっけか。


「あんたは戦争関係なく性欲の塊だと思うんだけど」


『シスタ危険 私もここで寝る』


「じゃ、じゃあ私も!」


「ここに三人全員一緒に寝るってのか? こんなに狭い中でか?」


 明らかに四人で寝るようなスペースは無い。


「いいの!」


 俺の言葉に対し、三人全員が声を揃えて言った。全く、こいつらは変わってな――


 ズドォォオオオン!

 

 突如、天井からたくさんの瓦礫が落ちてきた。慌てて頭上を見上げると、地下であるはずのこの場所に空が見えるほどの穴がぽっかりと開いていた。


 そして――


「ここが君のアジトかぁ。地下にあるだなんて、随分と面倒なことしてるんだね」


「て、てめぇは!」


 開かれた穴から、一人の少女が降りてきた。

 その少女は――


「チカ……!!」


 今最も会いたくない人物が、そこにいた。

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