伝説級の四人が織りなす合体技
「合体技だと?」
「そ。マヤ達四人が一緒に行動していたのには、きちんとした理由があったってわけ」
まだそんな隠し玉をもっていたとはな……。伝説級の四人全員が力を合わせて放つ技か。どんな技なのか全く想像ができないが、あれだけ自信に満ちた顔をしたマヤを見るに、強力な技であることは間違いない。
「大丈夫。何が来ても私は負けない」
「お、おぉ……」
いつの間にかすっかり別人のように凛々しい姿になったウトが、不安な顔一つせずそう言った。
さっきまで自分のことに精一杯でウトの戦いはあまり見ていなかったのだが、一体何があったらこんなことになるんだ? なんかずっとオーラみたいなのが見えるし、話し方も片言じゃなくなっているし、彼女は本当にウトなんだよな?
「皆私の背後に下がって。全て受け止める」
俺達はウトに言われた通りに下がった。
「アイファサン、アイツカナリツヨイデスケド、ダイジョウブデスカネ?」
敵側のウトが、身を震わせながらアイファに訊ねた。見れば、身体中がボロボロだ。おそらくこちら側のウトにやられた傷なのだろう。どうやら同じウトでも、こっちのウトとあっちのウトとではかなりの力の差があったみたいだ。
一体どんな戦い方をしていたのだろう。普段のウトと同じならば長齢樹を使って戦うのだろうが、今のウトの手には長齢樹の種が入っている植木鉢が無い。
「なあウト、長齢樹は?」
「今の私そのものが長齢樹であり、ウトでもある」
「えーと……」
駄目だ。全く意味が分からない。
理解を諦めて敵側のウトの方を見ると、彼女はこちらの変わり果てたウトを見てずっと怯えていた。
「大丈夫だよウト、わたし達の必殺技はその気になれば町一つ壊せるほどでしょ?」
「ソ、ソウデスケド」
町一つ壊せるだと? そんなものをされたら今のウトでも危ないんじゃないか? ウトがどれくらい強くなったかは知らないが、いくらなんでも町を壊せるほどの攻撃に耐えられるとは思えない。
合体技とやらを出される前に、、あいつらを止めないと!
俺が相手の方へ行って止めようとすると、ウトに片手で制された。
「何が起こるか分からない以上、今動くのは危険だよ。カプチーノはそこでじっとしててもらえるかな?」
「は、はい!」
ウトの威圧感溢れる言葉に反射的に返事をして、俺は足を止めた。
「じゃあ行くよ皆! ウト! 幻伝樹用意!!」
マヤの声に呼応するように、ウトは人一人分ほどの金色の木を生やした。あんな光っている木は初めて見た。幻伝樹、という木なのか。
「よし! じゃあ次は赤ちゃん!」
「あうあう!!」
赤ちゃんはマヤに呼ばれると、幻伝樹を宙に浮かせた。そして、ぷかぷかと浮いた幻伝樹の先端を俺達の方に向けた。
あれを俺達にぶつけようってのか?
「アイファ! 点火!」
「了解!」
アイファの体から火が放たれ、幻伝樹は真っ赤に燃えた。
炎に包まれたまま、幻伝樹は恐るべき速さで根を伸ばしていく。
「本来木は水を吸って生きるのが普通だけど、ウトの持つこの幻伝樹は火を吸う特殊な木でね。火を受けることで絶大な力を得るんだよね。そこに更に、マヤの奥義で岩を全体にコーディング!」
そう言うと、燃え盛っていた幻伝樹を岩が包んだ。
すると、突如幻伝樹は七色に輝き出した。眩しい光が部屋全体を照らす。あまりの眩しさに耐えられず、俺は目を瞑った。
しばらくして再び目を開くと――そこにはまるでダイヤモンドのように透明に輝く一本の木があった。
なんて美しい木なんだろう。今まで見たあらゆるものに、その美しさは勝っていた。
「じゃあ赤ちゃん! あいつらにこいつをぶっ放しちゃって!!」
「あうあう!!」
赤ちゃんがマヤの声に頷くと、猛烈な突風が吹いた。そして、勢いよく伝幻樹は俺達の方へと向かってきた。
「皆、絶対に私の背から動かないでよね!!」
ウトのその叫び声が聞こえたかと思うと――
地面が揺れた。地震か? いや、そうではない。この揺れは、幻伝樹がウトにぶつかった時に発生した揺れだ。
暴風と衝撃波で、俺は大きく後方に吹き飛んだ。余りの衝撃波に、目を開けることが出来ない。ウトは大丈夫なのか?
衝撃波が収まった後、俺はゆっくりと目を開いた。
すると、そこには抉り取れた地面と、倒れたウトの姿があった。
「ウト!」
急いでウトに駆け寄る。今のウトは、あのオーラを放っていた姿ではない。よく知っている、いつものウトの姿だ。
心臓に耳を当てる。良かった。まだ生きている。
「カリバ! 回復を頼む!」
「は、はい! ただいま!」
生きてさえいれば、ウトをすぐ回復することが――
「ふっふふ。その子を回復する前に、もう一撃浴びせちゃおっかな?」
見れば、まだ幻伝樹は消えていなかった。見た目も美しい透明のままだ。ということは、あいつらがすぐにもう一度攻撃ができてしまう!
「赤ちゃん、やっちゃって」
「あうあう!」
やばい! カリバの回復が間に合わない! このままではウトが死んでしまう!
「いっけええええ! これでマヤ達の勝利だぁあああああ!!」
もう完全に終わりだと思った。仮にカリバの回復が間に合ったとしても、再びウトがまたあの姿になれるとは限らないし、なれたとしても俺達をまた守りきれるとも限らない。
俺は、こんなところで死ぬのか……。まだ何もできていない。まだ何も――
あれ……?
幻伝樹は、俺達を襲ってこなかった。
というか――
「木、どこにも無くね?」
いつの間にか、幻伝樹は消えていた。
「ギリギリ間に合った」
久しぶりにその声を聞いた気がする。たまに聞くことができる、俺が大好きな声。その声の主は――
「ミステ!!」
俺達の中でも最強の能力を持つ、一人の少女だった。




