そして彼女達は現れる
トタースの中心に聳える天まで届いていそうな長い城。城というより塔だろうか。そこに、この世界の支配者がいる。
その人物がどんな人物でどのような力を持っているのか、俺はまだ、性別すら知らない。だからこそ、城へ近づくほどに未知という恐怖に怯える。それは、絶賛無双中であろうとも変わらない。
トタースで迫ってくる人達は、思いのほか強くは無かった。苦戦することも無く、俺達は城へと進んでいる。途中幹部のような人に何人かすれ違ったが、彼女達は技を出す前に俺達にやられた。
そういえば、この街には女しかいない。俺達の元いた世界のトタースと同じだ。俺達のいたトタースは元々は男はいたが、追い出したことにより女だけになった。だが、この街はどうしてだろうか。
あ、そうか。確か奴隷として使えない人間は全て殺しているんだっけか。それなら女しかいないのも納得だ。たとえ奴隷だろうとも男なんて使いたくないもんな。
こうして考えている間にも、俺は何人もの人を殺している。なるべく殺さないように行動しているものの、こう一気に大勢来られれば、全員殺さないなんてのは不可能だ。だが俺は、あまり何かを感じるようなことは無かった。一人目を殺してしまった時は、罪悪感に苛まれた。だが、何人も殺している内になんとも思わなくなったのだ。人ってのは、こんなことにも馴れちまうもんなんだな……。
できればこんなこと、馴れたくは無かった。
カリバ2の方を見れば、彼女は人を一人も殺さないように細心の注意を払いながら行動していた。あいつは偉いな。俺ももっと気を付けないと。
「カプチーノ様、そろそろ城に到着します」
カリバの声で、思考の海から離れた。いつの間にか、俺達は城のすぐ近くまで来ていたようだ。どれくらい歩いたかは分からない。だが、これだけは分かる。ここからが、本当のスタートなんだと。
今まで襲ってきた有象無象の女達と同じように、城の中にいる人たちも弱い人ばかりだといいのだが、果たしてどうなるやら。
「行くぞ皆、ちょっとでも怪我をしている人は今のうちにカリバの回復を受けておけ」
万全の体制で挑みたい。あの時こうしていれば上手くいったのに、なんて後になって思うのはごめんだ。
俺達が城へと入った途端、耳を劈くほど大きなサイレンが室内に響き渡った。
だが、そのサイレンが鳴る前に、既に何人もの女が俺達を待ち構えていた。
城の中をぐるりと見渡す。どうやらこの部屋だけで一階はほとんど全てみたいだ。ごちゃごちゃ入り組んでいるより、一つの階層に一部屋なのは非常に助かる。
上の階も同じだといいんだけどな。何部屋もある階層は御免だ。
遠くを見れば、階段があるのが見えた。ここからだと少し距離があるが、問題ない。
「ここから先は通しません!」
いかにも強そうな、筋肉質の女が道を塞いだ。
「ウト」
「エイッ!」
俺の手を使うことなく筋肉女は倒れた。
筋肉なんてしょせん見かけ倒し。俺が元いた世界ならともかく、この世界での筋肉の有無は強さを左右しない。
ウトの攻撃を見て、女達は驚いた。というか、そもそもウトの攻撃を見る前からウトを見て驚いていたような……いや、ただの気のせいか。
「ニークさんがあんな一瞬でやられるとは……。こうなったら、全員で襲い掛かるしかないようですね!」
またそれかよ。その方法は既に外の人達が試していたから意味ないぜ?
「ミステ!」
俺の声と同時に、襲ってきた女達の剣は消えた。まあ別にこんなことしなくても勝てることくらい分かっているが、まだこの城内での戦闘経験が少ないからな。保険みたいなもんだ。
「おっ!」
意外なことに、今までの敵と違って剣を失っても女達は止まらなかった。怯むことなく、そのまま俺達に突撃してくる。
そして勢いのままに、俺の体に蹴りを放った。
「結局この程度か」
全然痛くない。この程度の攻撃、身に何も纏っていなかったとしても痛みを感じることは無かっただろう。
「おら!!」
襲ってきた女の前で剣を横に大きく振ると、剣によって発生した風により女達が飛んでいった。
そして剣を懐に戻し、飛んでいった女達に向けてすかさず移動し、次々に打撃を放った。何人もの女を、殺すことなく気絶させていく。
「いっちょあがりっと」
俺の前には、気絶して倒れた女の山ができていた。皆ピクリとも動かない。
「よし、階段を上るぞ!」
一番偉いやつってのは、一番頂上にいるもんだ。俺もそうだったからな。
「残念ながら、君たちは先に進むことはできないよ」
先へ進もうとしたところで、聞いたことのある声が階段の奥から聞こえた。
「今までいた人は超雑魚だもんねー。あんなの倒したくらいで良い気になってるとかマジウケる」
また別の女の声。だがこの声も、聞いたことがある。
「ミナサン、ユダンハダメデスヨ。ココマデキタトイウジジツヲ、ワスレナイデクダサイ」
この声は隣にいるウトの声では無い。聞こえてくるのは、階段の奥からだ。
その声の主達の姿が徐々に見え、俺は驚きで目を見開いた。
くそっ……。まさかこいつらがこのトタースにいるとはな……。
階段から降りてきたのは全部で四人。そのうち一人は赤ん坊。
そう。そこに現れたのは、萌衣の生き返りに力を貸してくれた伝説級の能力者の四人達だったのだ。




