洞窟
「ここが、古代より龍が眠りし山か」
今まで見たどんな山より大きく、禍々しいオーラを纏っている。
ここに辿り着くまで、五日かかった。
五日の間に、道中で色々なモンスターを倒し、俺のレベルはかなり上がっている。
まあ上がったところでステータスは元からMAXなので何も変わらないのだが。
『ここのドラゴン 倒す?』
「ああ」
ここにいるドラゴン、大龍王の首を獲り、新聞会社にでも持って行って、俺が倒したことを世間に知らしめる。
そうすれば、俺の強さは世界に轟き、世界征服に向けて大きく前進することになる。
「さてさて、楽しませてくれよ」
俺は期待に胸膨らませ、山の真ん中にある人一人通れるくらいの洞窟に足を踏み入れた。
異世界に来る前の世界は、山に本格的な洞窟なんてそんなに無かったような気がするが、この世界の山はある程度大きければ必ず洞窟になっているらしい。
そこはなんとなくゲームに近いなあと思う。
それに限らず、この世界は結構ゲームみたいなところが多い。
レベルがあったりHPや攻撃力などのステータスがあったり。
実はこの世界は異世界ではなくただのゲーム世界だった、なんて可能性もあるかもしれない。
いや、無いか。
ここはどう考えても異世界だ。
死んだ人は生き返らないしセーブポイントからやり直しもできない。
『暑い』
ミステは、だらーんと両手を前に倒し、今すぐ帰りたいといった目で俺を見た。
確かに、ここの洞窟はとんでもなく暑い。
大龍王は火を操るドラゴンだと聞いたが、まさかこんなところまで熱が来ているのだろうか?
もしそうなら、大龍王のところに辿り着いたところで暑くて戦えないんだが。
「そうですね、確かに暑いです。では」
カリバは全身を水色の光で包むと、その光を俺達の方へと飛ばした。
すると、今までの暑さなんて嘘だったかのように、暑くなくなった。
『ありがとう』
ミステも俺と同じように暑くなくなったようで、カリバにお礼を告げた。
「どういたしまして」
普段はミステにツンツンしているカリバだが、ミステの感謝の気持ちを素直に受け止め、カリバは普通に返事をした。
ふむ。
仲があまりよろしくない二人の距離が、なんだか少し縮まった気がする。
にしても、カリバの全ての回復、本当に便利だな。
「おっ、早速敵モンスターか」
いざ奥へと進もうとすると、豚のような姿をしたモンスターが、俺達三人の前に立ちふさがった。
ここに来るまでに今まで見たどのモンスターより、格段に強く見える。
だが。
鞘の剣を抜き、剣を上からモンスターに振り下ろすと、モンスターは一瞬で死んでしまった。
「ま、攻撃力9999じゃ超難関ダンジョンでもこんなものか」
少しは期待していたんだが、やはり弱かった。
大龍王はこんなに弱くないと良いが。
敵モンスターを一撃で倒しつつ進んでいくと、キラキラと輝く宝箱が置いてあるのを発見した。
カリバに聞いた話だと、洞窟にある宝箱は結構な高確率でトラップであることが多いらしい。
だが、トラップだったとしても俺の防御力ならダメージを受けることなどないので、臆することなく俺は宝箱を開けた。
「お!」
宝箱の中には、見るからに強そうな剣が一つ。
早速自分の装備と比べてみる。
おお、こっちの宝箱の剣の方が攻撃力が高い。
さすがは世界で一番強いドラゴンがいる洞窟だ。
俺の装備していた剣も最強クラスなのだが、それより更に上とは。
俺は、早速自分の装備を、新たに手に入れたものと入れ替えた。
他にも防具とか落ちてないかな。
俺は攻撃力も防御力も9999なので、結局何を装備してもステータスは変わらないのだが、それでも強い武器や防具は嬉しい。
俺は今までより目を凝らして、宝箱を探しながら、最奥地まで進んでいった。




