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第5話  生き甲斐

 第5話  生き甲斐(がい)


 ユウトは両親と(なご)やかな時を過ごすしていた。

 しかし、時計は夕刻を指しており、両親の帰る時間となった。

母「じゃあ、ユウト。そろそろ、帰るわね。でも、本当に、

  元気そうで良かった」

ユウト「うん。すごい調子は良いよ」

父「ユウト、少しでも気分が悪くなったら、ナース・コールの

  ボタンを押すんだぞ」

ユウト「分かってる。じゃあね、義父(とう)さん、義母(かあ)さん」

母「明日も来るからね」

ユウト「うん」

父「・・・・・・ユウト、私は明日は-どうしても外せない仕事が

  入ってしまったんだ。ただ、仕事が終わったら必ず、

  見舞いに来るからな」

ユウト「うん、気にしないで」

父「・・・・・・じゃあ、帰ろう、母さん」

 そして、二人は病室を去って行った。

カンナ『ほんと、良い-ご両親ね。こんなに毎日、見舞いに来て

    くれるなんて』

ユウト「ほんと、俺には-もったいないくらいだよ」

カンナ『さて、じゃあ、病院の探索よ、探索』

ユウト「分かった」

 そう言って、ユウトは立ち上がるのだった。


 ・・・・・・・・・・

 ユウトは-あてもなく、病院をうろついた。

 すると、車椅子に乗った少女と、それを後ろから押す青年が

廊下の向こうから歩いて来た。

ユウト(あれ・・・・・・あの制服って・・・・・・)

 青年の来ている制服は、ユウトの学校のモノだった。

 そして、青年はユウトに気づき、声をあげた。

青年「あれ?如月(きさらぎ)か?」

ユウト「ええと・・・・・・上谷(かみや)か?」

上谷「なんだよ、ひでーな。即答してくれよ」

ユウト「悪い、悪い。髪、(まる)()りに-なってたからさ」

上谷「そりゃあ、野球部だからな。でも、久しぶりだな。

   一年の時はクラスが一緒だったけど、二年の時は

   クラスが違って、それ以来、あんまし会ってなか

ったもんな」

ユウト「そうだったな・・・・・・」

上谷「それより、何だよ、その松葉杖。お前、入院してたのかよ?」

ユウト「いやぁ・・・・・・話せば長くなるんだけど・・・・・・。

それより、その子は?妹さん-とか?」

 と、ユウトは車いすの少女を見て、言った。

上谷「ああ、違う、違う。俺のファンなんだ」

ユウト「ファン?へぇ・・・・・・。すごいなぁ」

 すると、少女が口を開いた。

少女「ファンなんかじゃ・・・・・・ない」

 その一言に、沈黙が流れた。

上谷「・・・・・・まぁ、結構、辛口なんだ、こいつ」

ユウト「そ、そうか・・・・・・」

上谷「ああ。紹介するよ。彼女は彩花(あやか) ルリだ。

   ルリ、こいつは如月(きさらぎ) ユウト。うちの学園

   でも一、二位を争う、天才だ」

ユウト「い、いや、一位になれた事は無いから」

上谷「まぁ、でも、二位はキープしてんだろ?

   俺みたいな馬鹿からすると、宇宙人レベル

   だって」

ユウト「いやいや」

ルリ「・・・・・・すごい、です。(れい)(せい)-学園で二位なんて」

 と、少し、目を輝かせて言うのだった。

上谷「さて、そろそろ、病室に戻った方が-いいな。

   面会時間も過ぎそうだし。悪い、如月ユウト

   部屋の番号、教えてくれよ。明日にでも

   見舞いに行くから」

ユウト「あ、うん。なら、一階で待ってるよ。そんなに

    かからないだろ?」

上谷「ああ。じゃあ、すぐ行くよ。よし、ルリ、戻るぞ」

 との上谷の言葉に、ルリはコクリと(うなず)いた。


 ・・・・・・・・・・

 一階のロビーでユウトは-のんびりと座っていた。

 すると、カンナが現れた。

カンナ『ユウト。さっきの子・・・・・・』

ユウト『ああ、ルリちゃん-の事か?』

カンナ『ええ。あまり言いたくは無いけど、死相が見えたわ。

    あまり、長く無いと思う・・・・・・』

ユウト『・・・・・・それは寿命って事か?』

カンナ『・・・・・・ええ』

ユウト『・・・・・・そっか・・・・・・』

 と答え、ユウトは深く-ため息を吐いた。

 すると、上谷(かみや)が歩いて来た。

上谷「よっ。待ったか?」

ユウト「いや、大丈夫」

上谷「そっか。しかし、こうして話すのも久しぶりだな。

   まぁ、一年の時も試験勉強を教えてもらったって

   くらいだけどな」

ユウト「そうだったな・・・・・・」

上谷「あの頃は、俺は不良だったし、お前も優等生って感じ

   だったし、あんまし、遊んだりは-しなかったんだよね」

ユウト「はは、そうそう。お互い、丸くなったよな」

上谷「まぁ、俺の場合は頭が丸くなったんだけどな」

 と言って、上谷は自分の(まる)()りの頭をポンと叩いた。

ユウト「ふふ、それで、上谷は-この病院に良く来るのか?」

上谷「まぁ、週一くらいはな。本当は-もっと来たいんだけど、

   ほら、地獄の部活が-あるからさ」

ユウト「ウチの野球部は本格的だからなぁ・・・・・・」

上谷「まぁ、でも、今年はマジで甲子園、目指せるぜ。

   なんせ、エース・オブ・エースが居るしな」

ユウト「ああ、シオンか。あいつ、プロから既に、スカウト

    とか来てるんだろ?」

上谷「ああ。しかも、シオンは野球だけじゃなくて、勉強も

   出来るからなぁ。化け物だよ、ほんと」

ユウト「そっか。でも、野球、ほんとに頑張ってるんだな、

    上谷も」

上谷「ああ。それより、いい加減、下の名前で呼んでくれよ。

   友達だろ?」

ユウト「ああ。じゃあ、シュウ、よろしくな」

 と言って、ユウトは上谷(かみや) シュウに対し、手を差し出した。

シュウ「へへ、何か照れくさいな。ま、改めてよろしくな。

ユウト」

 そう言って、シュウはユウトの手を握るのだった。


 それから、しばしの間、二人は-とりとめの無い話をした。

ユウト「そっか、じゃあ、シュウは半年前から-この病院に

    来てるんだ」

シュウ「ああ。そうなるな」

ユウト「なら、聞きたいんだけど、最近、この病院で変わった

    事ない?」

シュウ「変わった事・・・・・・?ああ、そう言えば、噂が-あるんだよ。

    ルリから聞いたんだけどよ。なんか、この病院でさ、

    死んだハズの男が動き出したって話だ。ゾンビかよ

    って思うけど・・・・・・って、どうした?」

ユウト「い、いや・・・・・・何でも無い。それより、他に変な事は

    無いかなぁ?」

シュウ「いや・・・・・・。ちょっと、他だと心当たり無いわ。

    わり」

 と言って、シュウは手を合わせて謝った。

ユウト「いや、気にしないでくれ。ところで、ルリちゃん、

    入院、長いのか?」

シュウ「ん・・・・・・ああ。まぁな・・・・・・。そう言えば、お前、

    医学部-志望だったか」

ユウト「ああ、そうだけど」

シュウ「そうか。なら、話しておこうかな。あいつは(こつ)肉腫(にくしゅ)

    だ。福岡の出だ。後は、分かるだろ」

ユウト「・・・・・・主戦場じゃ無いか・・・・・・。劣化ウラン弾の

    影響か?」

シュウ「ああ・・・・・・恐らくな。数年前までは普通に暮らしていたそうだ。

    だが、右足の(ひざ)の所に、腫瘍(しゅよう)が出来て、

    それで・・・・・・幸い足の切除には至らなかったが、

    それでも車いす生活だ。もっとも、歩けないワケ

    じゃない」

ユウト「なぁ、あまり言いたくは無いが、若い頃の(がん)は、

    進行が早いだろ?」

シュウ「・・・・・・ああ。そうだ、その通りだ。だから、ルリは

    常に死の覚悟を持って生きている。まだ中学生だって

    いうのにさ」

ユウト「・・・・・・そうか」

シュウ「まぁ、暗い話は-よそう。この大学病院は、その手の

    権威の-お医者様が居るみたいだしさ。それに、今の

    所、転移は見当たらない。とはいえ、体の調子が元に

    戻らないみたいでさ、免疫が落ちてるのかな?すぐに

    喘息(ぜんそく)とかで、入院してしまうんだ。

    特に、今回の入院は長いな。そろそろ半年くらいだ」

ユウト「そうか・・・・・・。支えてやれよ」

シュウ「ああ。しかし、ユウト。そこで、『大丈夫だよ』とか

    『きっと、良くなるよ』とか言わないのが-お前らしいな。

    なんつーか。お前の言葉、素直に嬉しいよ」

ユウト「そ、そうかな・・・・・・」

シュウ「まぁ、ルリとは幼なじみ-みたいな感じでさ。小さい頃から、

    俺がスポーツしてるのを応援してくれてたんだ。

    ああ。幼なじみっつっても、俺が8歳くらいの時に

    ルリが-こっちに越して来たんだ」

ユウト「なる程」

シュウ「それで、兄妹-同然に育って。とはいえ、ルリの家が

    色々あって、それから、しばらく会わなくなって。

    それで、ルリが入院したってのは知ってたけど、

    詳しい事は知らなくてさ。まぁ、それから、今にいたると。

    そんな感じだ」

 すると、カンナが現れた。

カンナ『ユウト。ルリちゃん-が野球に興味があるか聞きなさい』

ユウト「・・・・・・そっか。なぁ、シュウ。彼女、お前が野球してる事、

    知ってるのか?」

シュウ「知ってるも何も、あいつが居なかったら俺は野球して

    ねーよ」

ユウト「そうなのか?」

シュウ「ああ。ウチの学園はさぁ、スポーツ枠が-あるだろ。

    そして、俺は-そのスポーツ枠。はたまた、お前の

    ように一般入試で入って来る勉強の出来る奴が

    居る。その癖、クラスは同じだから、俺みたいな

    馬鹿は授業に付いていけない。でも、それでも

    スポーツで結果が残せれば-いいさ。でも、俺は

    サッカー部で・・・・・・まぁ、顧問や先輩達に嫌われ、

    部活を辞めちまった。

サッカーのスポーツ推薦で入ったのにな・・・・・・。

   それで、高校一年の時は-かなりグレてただろ?」

ユウト「ああ。でも、他の不良と違って、イジメとかは-しなかっただろ?」

シュウ「まぁな。でさ、皆が俺を嫌う中、お前だけは、試験前

    俺に勉強を教えてくれたよな」

ユウト「まぁ、最初はクラス委員だったから-だったけど、

    途中から、結構、楽しくなっちゃってさ」

シュウ「はは。二人でファミレスで-勉強したりしてたよな」

ユウト「そうそう」

シュウ「でも、二年になって、会わなくなっちまった。まぁ、

    というか俺が会わないように-してたんだけどな」

ユウト「どうしてだ?」

シュウ「・・・・・・お前、俺の勉強を見てから、少し、成績、

    落としたろ?」

ユウト「いや、でも、落としたって言っても、第一回目の

    実力試験が-すごい良かったってだけで。二学期や

三学期の中間や期末の結果は本来の実力だったと

思うけど」

シュウ「まぁ、でも、あんまし迷惑-かけられないかな、と-

    思ってさ。それに、二年からは俺は、野球部に入って、

    マジで(いそが)しかったしな。ただでさえ、部活は

    厳しかった上に、遅く入った分、人一倍-自主練しなきゃ、

    いけなかったしよ」

ユウト「まぁ、でも、だからこそ、スタメンに入れたんだろ?」

シュウ「おう。まぁ、それで話を戻すと、俺が野球部に入る

    きっかけを作ってくれたのが、ルリなんだ。そう、

    一年から二年への春休み、その時、俺はケンカで

    怪我して、病院に行ってたんだ」

ユウト「そ、そうだったのか?」

シュウ「ああ。それで、その時、入院してた-ルリと再会したんだ。

    怒られたよ・・・・・・。何してるんだ、ってさ。

    それで、サッカー辞めた事、話したら、もっと怒られた。

    俺も-その時、荒れてたから、怒鳴り返そうかと

    思ったが、出来なかった。泣いてたんだ、あいつ。

    目に大粒の涙を浮かべて、それで、ぽろぽろと涙を

    こぼして・・・・・・。はは、ズルイよな。そんな事され

    たら、改心せざるを得ないだろ?」

ユウト「ああ・・・・・・そうだな」

シュウ「それで、心を入れ直して、何かスポーツを始めようと

    思ったんだ。俺には体くらいしか、()()が無いから

    さ」

ユウト「それで、野球を始めたのか」

シュウ「ああ。そうだ。くさい話だろ?」

ユウト「はは、そうだな、くっさ-くさだ。でも・・・・・・すっごく

    納得した。良かったな。生き甲斐(がい)を見つけられて」

シュウ「ああ・・・・・・。そうだな。その通り・・・・・・その通りだ」

 そして、しばらく二人の間に、沈黙が優しく満ちた。

シュウ「さって、それより、お前の方は大丈夫なのかよ?」

ユウト「いや・・・・・・実は死にかけちゃってさ・・・・・・」

シュウ「はぁ?死にかけたって、お、お前。どういう事だよ」

ユウト「まぁ、実は・・・・・・」

 そして、ユウトは大まかな事情を話した。

 ただし、もちろん、カンナの件には何も触れなかった。

シュウ「マジかよ・・・・・・。はぁ・・・・・・。それは-また、何と

    言うか・・・・・・。お前、ほんと、体には気を付けろよ。

    誰かを助けるのも-良いけどよ、お前自身が死んじゃ、

    もともこうも無いじゃないかよ」

ユウト「ああ・・・・・・分かってる」

シュウ「まぁ、でも、無事で何よりだぜ」

ユウト「まぁね」

 そして、二人は-しばし無駄話をするのだった。

 しかし、とうとう看護師に怒られ、退散する事となった。

シュウ「じゃあ、俺は明日も来るからよ。会おうぜ」

ユウト「ああ。じゃあ、明日」

シュウ「おう」

 そして、シュウは去って行った。

シュウ「さて・・・・・・部屋に戻ろう」 

 そう(つぶや)き、シュウはエレベーターへと向かうのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 ユウトはベッドに転がり、物思いに-ふけっていた。

カンナ『何を考えて居るの?』

 月明かりに照らされる中、カンナは-そう尋ねた。

ユウト「・・・・・・ルリちゃん-の事を」

カンナ『・・・・・・そう』

ユウト「ルリちゃん-の寿命は残り少ないのか?」

カンナ『そうね。あと、半年も無いんじゃないかしら?』

ユウト「嘘だッ・・・・・・。そんな。だって、結構、元気そうに、

    いや、そりゃ普通の人に比べたらダルそうだったけど、

    とても末期には見えなかった。抗ガン治療だってして

    無いだろ?」

カンナ『・・・・・・でも、彼女は自らの死を悟っているわ。

    それは-貴方も感じたでしょう?』

ユウト「そ、それは・・・・・・」

 そして、ユウトは思いだした。

 ルリの目には光が失われていた事を。

 いや、わずかな光が残されているとすれば、それはシュウの

存在、ただ-それだけなのだろう。

 それをユウトは無意識の内に感じていたのだった。

ユウト「・・・・・・何とか-ならないのか?俺は、彼女の命を救えないのか?」

カンナ『無理よ。私の力では』

ユウト「じゃあ、俺は何で生き返れたんだ?」

カンナ『あなたは-生き返るべくして生き返った。

    その傷も奇跡的に後遺症(こういしょう)を外れるように位置して

    いたわ。

    人の運命は悲しい程に不平等よ。

    そして、それに対し、私は-あまりに無力よ。』

ユウト「神なのに、なんで・・・・・・」

カンナ『私は神じゃ無い。神であって神では無い。

    故に、神無(かんな)

    かつて、月を(つかさど)巫女(みこ)の役を命じられたモノ』

ユウト「え・・・・・・今、なんて?」

 とのユウトの言葉に、カンナは深く-ため息を吐いた。

カンナ『何でも無いわ。まぁ、でも、あまり深く考えなくても

    いいんじゃないかしら。私の()()ても良く外れるし。

    それに、この病院は相当に優秀な医師も居るみたい

    ですし』

ユウト「そ、そうだよ。そうに決まっている」

カンナ『ともかく、今はゼンの方に集中しなさい。私達は病気を

    治す事は出来ない。それは、医者の仕事よ。でも、殺しを

    止める事は出来るかもしれないわ』

ユウト「ああ。そうだな。気を切り替えて、ゼンさん-の件に

    集中しよう。ルリちゃん-の事は、そっちに決着が

    着いてから考えれば良い。じゃあ、そろそろ眠るよ。

    おやすみ」

カンナ『ええ、お休み』

 そして、ユウトは部屋の電気を切り、シーツに(もぐ)った。

 その様子をカンナは-しばらく見つめていた。

カンナ『ユウト・・・・・・仮に命を救えずとも、心を救う事は

    出来るのよ。でも、それは-まだ若い-あなたには

    理解しがたい-かも知れないけど。それでも、

    だからこそ、あなたに-しか出来ない事なのよ』

 と、一人、(つぶや)き、月夜の中、影の(よう)に消えるのだった。


 ・・・・・・・・・・

 ユウトは深夜、妙な予感に目を覚ました。

ユウト「う・・・・・・はぁ、一時か。何で、こんな時間に。

    トイレでも行こうかな?でも、夜の病院って

    怖いから出たくないんだよなぁ」

 すると、ノックの音が響いた。

ユウト「ヒッ、だ、誰ですか?」

如月(きさらぎ)さん、見回りに来ました」との看護師の声が聞こえた。

ユウト「え?あ、はい。どうぞ」

 そして、一人の看護師が入って来た。

 その看護師は-辺りをキョロキョロと見回し、部屋にユウト

しか居ない事を確認し、(うなず)いていた。

ユウト(こ、この人は。う、嘘だろ・・・・・・。宮沢(みやざわ)さん-じゃ

    ないか。な、なんで、ゼンさん-暗殺計画、一番の

容疑者が、こんな所に・・・・・・)

 すると、看護師の宮沢はユウトの方に近づいて来た。

ユウト「あ、あの。どうか-なされましたか?」

 と、ユウトは-おずおずと声をかけた。

 すると、宮沢は妖艶(ようえん)にクスクスと笑った。

宮沢「ねぇ、君、私の事、()()に聞いたでしょ?」

ユウト(や、やばい。もしかして、俺が探りを入れたから、

    俺を口封じに来たのか?)

宮沢「ああ、佐良って、私の同僚ね。君が私の事を聞いた

看護師よ」

ユウト(ああ、あの告白が-どうとか言ってた人か。

    ていうか、カンナ。助けてくれ。カンナ?)

 しかし、カンナは現れなかった。

宮沢「どうしたの?黙っちゃって。緊張しちゃったのかな?」

ユウト「え、ええと・・・・・・。すいません。よく覚えてなくて」

宮沢「覚えてない?もー、照れなくて良いのよ。ほら、今、

   みんな寝静まってるわ。この部屋には君と私しか-

   居ないの」

ユウト(ん?なんか、違う気がしてきたぞ。ま、まさか)

宮沢「君、結構、かわいい-と思うわ。ね、良ければ、

   お姉さんと楽しい事、しましょ」

 との言葉に、ユウトは愕然(がくぜん)とするのだった。


 ・・・・・・・・・・



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