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第19話  始まり

 第19話  始まり


 一人の男が玉座(ぎょくざ)に腰を掛けていた。

 その隣の(やわ)らかい床では、裸の男女が幾人も

(から)みつき合っていた。

 (まじ)わりの音が幾重(いくえ)にも-部屋に響き渡っていた。

それを男は-つまらなそうに聞いていた。

 すると、誰かが入って来た。

 それを見て、男はニヤリと顔をほころばせた。

男『これは、久しぶりだねぇ。(うわさ)には聞いているよ。

  あぁ、ここの犬達は気にしなくて良い。

  心が壊れてしまっているから。

  僕たちの声は届かない。

  しかし、ずいぶんと派手に-やったね。

  警察も本腰を入れて、動き出したそうじゃないか』

 ノイズが走った。

男『そう、問題ないのかい。まぁ、確かに、君の能力なら

  警察も、公安さえ除けば、問題は無いだろうね。

  ただ、最近は独断で能力者(のうりょくしゃ)()りをする馬鹿も

  公安には居る。

  気を付けるといい』

 ノイズが走った。

男『そう。ところで、今日は何をしに来たのかな?

  僕としては、君という仲間と久しぶりに会えて、

本当に嬉しいんだよ』

 ノイズが走った。

男『なる程。同種の能力者か。それは危険かもね。

  しかし、君は手の込んだ事をするね。

  僕に任せてくれれば、すぐに消してあげるのに』

 ノイズが走った。

男『なる程ね。しかし、君と話すと疲れるね。

  あんまし、僕に能力を使わないで欲しいな。

  僕は君に危害を加えるつもりは無いんだから』

 ノイズが走った。

男『まぁ、いいや。せっかく来たんだから、遊んで行くかい?

  君は男も女もいける口だろう?そこに居るので良ければ、

  いくらでも、遊んで行ってよ』

 ノイズが走った。

男『え?ああ、僕かい?最近、能力の使いすぎで、体の調子が

  悪いけど、いいよ。他ならぬ君となら、やるのも悪く無い』

 そして、大きなノイズが走り、いつしか、玉座(ぎょくざ)以外での

(まじ)わりは終わっていた。

 床には、だらしなく口を開け-気絶した男女が、(むな)しく

横たわっているのだった。


 ・・・・・・・・・・

 ユウトは部屋で今後を考えて居た。

カンナ『何を考えて居るの?』

ユウト「いや、塾をどうしようかと、思ってさ」

カンナ『あんたねッ!私との契約は-どうしたのよッ!』

ユウト「いや、もちろん覚えてますよ。でもさ、手がかり

    も無いしさ。何度も言うけど、受験は失敗できな

    いんだよ」

カンナ『・・・・・・この勉強バカッ!』

ユウト「そんな事、言われても。まぁ、義父(とう)さんからは

    あまり無理しないように言われてるけどさ。

    緑鳳会の校舎も燃えちゃったし。

    というか、流石に、あれだけ色々とやらかして、

    緑鳳会に戻るのも、無理だよなぁ」

カンナ『じゃあ、妥協点を探りましょう。土日だけ、塾に

    行くってのはどう?』

ユウト「うーん。まぁ、それが妥当(だとう)か。あんまし、週に何日も

    入れると、疲れるし、心配されるし。しばらくは、

    それで様子を見ようかな」

カンナ『そうよ、塾もタダじゃ無いんだから』

ユウト「いや、全国模試の結果によっては、タダになる所も

    あるんだよ。仕方ない。塾に申しこみに行こう」

カンナ『タダの所?』

ユウト「そうそう。じゃあ、行こうかな」

カンナ『なんて所?』

ユウト「代模擬(ヨモギ)アカデミーって所」

カンナ『ああ、あの時計台みたいな大きな建物でしょ?』

ユウト「そうそう。よし、なら申し込みに行こう」

 そして、ユウトは立ち上がった。


 ・・・・・・・・・・

 ユウト達は、代模擬(ヨモギ)アカデミーの建物の受付に居た。

事務員「申しわけありません。特待生の申請は、今年は

    申込者が多く、既に締め切られてしまいまして」

ユウト「そ、そんな・・・・・・」

カンナ『あ・・・・・・もしかして、緑鳳会が燃えて、その生徒が

    こっちに流れたのかも・・・・・・』

ユウト「や、やってしまった・・・・・・」

 と言い、ユウトは頭を抱えた。

事務員「お、お客様。大丈夫ですか?」

ユウト「は、はい・・・・・・大丈夫です。すみません」

事務員「ですけど、割引なら-ございますよ。お客様のご成績

    なら、8割引となります」

ユウト「え?本当ですか?」

事務員「はい。資料をいかがですか?」

ユウト「あ、はい。お願いします」

 そして、ユウトは講座の資料を受け取った。


 ユウトは、建物の20階にある《空中展望台》と呼ばれる

階層で、ベンチに座っていた。

カンナ『ずいぶんと眺めが良いじゃない』

 と、カンナは浮遊しながら、地上を見下(みお)ろし、言うのだった。

ユウト『そうなんだよ。前に、模試に来た時に知ったんだ』

カンナ『ふーん。ところで、ここより上って何があるの?』

ユウト『え?確か、居住区じゃなかったかな?浪人生用の』

カンナ『はぁ・・・・・・今時(いまどき)の浪人生は、こんな豪華な所に住む

    のね』

ユウト『確かに、部屋の間取(まど)りにしては、料金は

    高かった記憶があるな』

カンナ『よっぽど金持ちの子が住むのね』

ユウト『どうなんだろう。受験が(から)むと貧乏な親でも、

    借金まがいな事をしてまで、塾代を出したり

    するからね』

カンナ『それで落ちたら、悲惨ね。でも、ユウトの家は

    それ程、貧しそうに見えなかったけど』

ユウト『多分、そうなんだろうね。ただ、やっぱり、迷惑は

    かけたくないんだ』

カンナ『・・・・・・まぁ、いいわ。それより、いい講座あった?』

ユウト『まぁまぁ、かな。このビデオ講座は結構、いいかも。

    時間をこっちで指定できるから、時間に融通(ゆうずう)がきく。

    カンナとの契約で時間が取られても、これなら大丈夫

    かも知れない』

カンナ『そう・・・・・・ちゃんと考えてくれてるのね』

ユウト『まぁね』

カンナ『でも、授業料は?』

ユウト『1科目だけなら、安いけど、全科目と思うと、

    やっぱり高いかも・・・・・・』

カンナ『8割引でも?』

ユウト『まぁ、微妙なライン』

カンナ『なら、いいじゃない』

ユウト『それに、入会金は-かかるみたいだし』

カンナ『ああ、もう。そんくらい、親に甘えなさいッ!』

ユウト『う、うん・・・・・・まぁね・・・・・・』

 すると、上層の居住区から、一人の女子高生が出てきた。

 その女子高生は妙なオーラを発しており、ユウトは彼女に

目を向けるのだった。

 女子高生はユウトの方をチラッと見るも、何事も

無かったかのように、そのまま歩き去って行った。

ユウト『今の・・・・・・』

カンナ『ええ・・・・・・何て事・・・・・・ユウトも感じたのね』

ユウト『感じたというか、すごい綺麗だった』

カンナ『駄目だ・・・・・・このバカ男・・・・・・』

ユウト『ごめん・・・・・・それで、何だっけ?』

カンナ『あの子よ。あの子が、次の助ける対象よ!』

ユウト『・・・・・・え?今、何て言った?』

カンナ『だから、あの子が、次の助けるべき子なの!』

ユウト『・・・・・・ごめん、本当に、聞こえないんだけど』

 とのユウトの言葉に、カンナは考え込んだ。

カンナ『そう・・・・・・そうだったわね。ユウトが全く知らない

    情報は基本、伝えられないんだった。ゼンの時は-

    上手く伝えられたんで-失念してたわ。

    クゥ、おっさんの時は上手くいくなんて』

 と、(つぶや)くのだった。

ユウト『カンナ?』

カンナ『うっさい!ユウト、何か感じる事は無かったの?』

ユウト『感じる?・・・・・・あれッ?』

カンナ『どうしたの?』

ユウト『なんか落ちてる。あれ・・・・・・携帯のストラップか

    何かかな?』

 そこには、クマのキー・ホルダーが落ちていた。

ユウト『多分、さっきの女子高生のだ。ど、どうしよう』

カンナ『届けなさいッ!いいから!』

ユウト『い、いやぁ・・・・・・でも、恥ずかしいし。落とし物

    センターとかに(あず)ければ』

カンナ『くぅ、この馬鹿ユウトッ!』

 と言って、カンナはユウトに()りを入れた。

 しかし、霊体なので、当然、透けるのではあった。

ユウト『えぇ・・・・・・。ま、まぁ、でも、あんな綺麗な人と

    お近づきになれるなら・・・・・・』

カンナ『くぅ、このエロ馬鹿。でも、いいわ。本能(リビドー)

    (おもむ)くままに、今だけは行動しなさいッ!』

ユウト『う、うん・・・・・・』

 そして、ユウトはクマのキー・ホルダーを拾い、

女子高生を追うのだった。


 この時、(いま)だユウトは知らない。

 これこそが、《神無(かんな)エクステンション》の真の始まり

であったという事を。


 ・・・・・・・・・・



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