第2話 復活
第2話 復活
俺の名は如月 ユウト、高校2年生だ。
どうも、俺は軽トラックに-はねられ、三日間、意識を失い、
一度、死んでしまったらしい。
ただ、カンナという少女というか死神?の力で現世に戻って
来る事が出来た・・・・・・のは良いんだが。
ユウト「はぁ・・・・・・眠れん・・・・・・」
と、夜の病室でユウトは一人、そう呟くのだった。
両親は遅くまで病院に残っていたが、ユウトの体に特に問題が
無い事を、医師に告げられた上、面会時間が終了したため、
しぶしぶ帰っていったの-だった。
ユウト「義父さん、義母さん・・・・・・。
泣いてたな・・・・・・。
はぁ、駄目だな、俺。親に心配ばっか-かけて。
全然、親孝行できてないや・・・・・・」
と、言い、ため息を吐くのだった。
『気にする事は無いと思うわ』
との少女の声が病室に響いた。
そこには、カンナの姿が-ぼうっと浮いていた。
ユウト「う、うわぁぁぁッ!」
との叫び声をユウトは-あげた。
カンナ『オバケじゃ無いわよ』
ユウト「あ、あなたは・・・・・・カンナさん」
カンナ『カンナで-いいわ』
と、銀髪の美少女は答えるのだった。
ユウト「あ、ああ。じゃあ、カンナ?えぇと・・・・・・ちょっと
よろしいでしょうか?」
そう言って、ユウトは恐る恐るカンナの手に触れようとした。
しかし、ユウトの手はカンナの手を透けていった。
ユウト「ヒィィッ!や、やっぱ、オバケッ!」
と叫び、ユウトはシーツの中に-くるまった。
カンナ『まぁ、オバケみたいなモンかもしれないけど、別に
悪さはしないわ。こら、出てきなさいッ!』
とのカンナの言葉に、ユウトは-おずおずとシーツから出てきた。
ユウト「はい・・・・・・。そ、それで何の-ご用でしょう?」
カンナ『ちゃんと生き返ったか確かめに来たのよ。それと、
私も長時間、こちらの世界には居られないわ。
なので手短に話すわね』
ユウト「はい・・・・・・」
カンナ『そう、かしこまらないで。ともかく、体に異常は
無さそうね』
ユウト「う、うん」
カンナ『まず、前に見せた女子高生を探しなさい』
ユウト「・・・・・・顔を思い出せないんだけど」
カンナ『会えば分かるわ』
ユウト「そ、それって探しようが無いんじゃ」
カンナ『ともかく、やるのよ。ファイト!』
ユウト「ふぁ、ファイトー・・・・・・」
カンナ『・・・・・・コホン。それで、その前に、別の用事が』
すると、病室の扉が開かれ、看護師が入って来た。
看護師「如月さん、どうかなされ・・・・・・」
すると、看護師の目はカンナの方に釘付けになった。
看護師「キャアアアッッッ!」
と、叫び、地面を転がりながら、必死に病室を出て行った。
ユウト「あ、あれ・・・・・・?」
カンナ『霊感の強い人には、時々、見えるのよね。
ただ、一般人には見えないわ』
ユウト「そ、そう。とはいえ、病院勤めで-霊感体質なんて、
大変だなぁ・・・・・・」
カンナ『幽霊は美人の方が怖いモノだしね』
ユウト「はぁ・・・・・・?」
カンナ『・・・・・・コホン、まぁいいわ。と、というか、何か、
リアクションしなさいよ、恥ずかしいでしょ?』
ユウト「え?ああ・・・・・・まぁ、綺麗だとは思うよ」
カンナ『あなた・・・・・・ロリコン?』
ユウト「違うから。だいたい、じゃあ、なんて、反応すれば-
いいんだよ・・・・・・」
と、困ったふうに言うのだった。
カンナ『まぁ、時間も少ない事だし、冗談は止しておいて、
ともかく、今日は顔合わせね。また、ちょくちょく
現れるんで-よろしくね」
ユウト「え・・・・・・」
カンナ『何よ、その嫌そうな顔は』
ユウト「いや・・・・・・ま、まぁ、別に-いいけど。あんまし、
プライベートは侵害しないでくれよ」
カンナ『善処するわ』
そう言って、カンナは煙のように消えていった。
ユウト「それ・・・・・・役人の断り文句なんだけど・・・・・・」
と、ユウトは呟くのだった。
・・・・・・・・・・
翌日、ユウトは松葉杖をつきながら廊下を歩いていた。
カンナ『調子はどう?』
ユウト「うわッ!」
カンナ『声を出さない方が良いわ。心の声で話しましょう。
あなたが強く念じた事は読み取れるから』
ユウト『・・・・・・分かる?』
カンナ『分かるわ』
ユウト『どうかした?』
カンナ『少し、気になる事が-あって』
ユウト『気になる事?』
カンナ『この病院、何か-おかしいわ。何か、嫌な事が起きる。
そう。たとえば、殺人とかね』
ユウト『いや、病院だから人は死ぬんじゃないか?俺も死んで
たし』
カンナ『それとは違うのよ。強烈な悪意というか、そういう
モノを感じるの』
ユウト『もしかして・・・・・・それを何とかしろって?』
カンナ『これは、契約の範囲外よ。だから、お願い、ね』
ユウト『お願い・・・・・・ねぇ』
カンナ『お願いッ』
と、カンナは-上目遣いでウルウルした。
それをユウトは微妙な表情で見つめた。
カンナ『・・・・・・何よ』
ユウト『なんて-リアクションしたら-いいか、分からなくて』
カンナ『・・・・・・そういう反応が一番、恥ずかしいのよッ!』
ユウト『だったら、やんなきゃいいのに・・・・・・』
カンナ『あのねぇ、その心の声、聞こえてるからね』
ユウト『・・・・・・ごめんなさい』
カンナ『ともかく、何か異変が無いか、些細な事でいいから、
注意しなさい』
と言い残し、返事を聞かずに、カンナは消えてしまった。
ユウト「さて、多分、もうじき義父さんと義母さんも
来るだろうし、その前に、一応、見回って-おこうかな」
と、呟き、ユウトは松葉杖を片手に歩き
出すのだった。
・・・・・・・・・・
ユウトが頑張って歩いていると、自動販売機の前に、
一人の強面の男が立っていた。
その男は明らかにカタギでは無く、周囲の人々は、
男を避けるようにしていた。
ユウト(抗争か何かで怪我したのかなぁ・・・・・・?)
と、ユウトは思いながら通り過ぎようとした。
すると、男は百円玉を自動販売機に入れようとして、
落としていた。
男は何度も、百円玉を拾い、自動販売機に入れようと
するも、手が震えるためか、上手く入れる事が-やはり
出来なかった。
しかし、周りの人は-男の方を見ようとすら-しないので
それに気付いていなかった。
ユウト「あの、オジサン、大丈夫ですか?」
そう言って、ユウトは百円玉を拾った。
男「・・・・・・それ、ここに入れて-もらえるかの?
ユウト「ええ」
そう答え、ユウトは自動販売機に百円玉を入れた。
ユウト「ボタン、押しましょうか?」
男「・・・・・・コーヒーのブラックで頼むわ」
そして、ユウトはコーヒーのボタンを押すのだった。
ユウトと男はソファーでジュースとコーヒーを飲んでいた。
ユウト「すいません。おごって-もらっちゃって」
男「いいんじゃ。むしろ、助かったのう、ほんまに」
ユウト「いえ。困った時は-お互い様と言いますし」
男「ほうか・・・・・・」
と答え、男は沈黙した。
ユウト「あの・・・・・・おじさんは、この病院で何か妙な噂とか
聞きませんでしたか?」
男「なんじゃ?妙な噂?幽霊のたぐいなら、聞いとるで。
ワシは-ここに長いからのう。もう、三ヶ月になるわ」
ユウト「そうなんですか」
男「ほうじゃ。じゃが、全然、体は戻らんのう。もっとも、
これでも大分マシとも言えるがのぅ・・・・・・」
と、男は自身の震える手を見つめ言った。
ユウト「それは辛いですね」
男「どうじゃかのう。今までは、朝も夜も金の事ばかり、
心休まる暇も無い。じゃが、今となりゃあ、結局、
金など泡のようなモノじゃったと、気付かされたわ」
ユウト「でも、気付けたなら-よかったじゃないですか」
男「ほうじゃのう・・・・・・。じゃが、恐らく、ワシは-ここを
出る事は叶わんじゃろうなぁ」
ユウト「え?そんなに悪いのですか?」
男「ちゃう、ちゃう。ここだけの話じゃがな・・・・・・。恐らく
ワシは殺される・・・・・・」
・・・・・・・・・・
ユウトはベッドの上に転がりながら考えごとをしていた。
ユウト(結局、あのオジサンとは、あの後、特に話しも無く、
別れちゃったけど・・・・・・。はぁ・・・・・・)
すると、ノックがされた。
ユウト「あ、はい」
「ユウト?」
との中年女性の声が響いた。
ユウト「あ、義母さん、どうぞ、どうぞ」
そして、ユウトの両親が病室に入って来るのだった。
・・・・・・・・・・
それから、ユウトは-しばらく両親と話していた。
いつしか、日は暮れ、両親も帰る時間と-なった。
母「じゃあ、ユウト。明日も来るからね。本当に体は
大丈夫なのよね?」
ユウト「大丈夫だよ、義母さん」
父「ユウト。安静にしてるんだぞ、明日も来るからな」
ユウト「義父さん。仕事は大丈夫なの?明日も平日でしょ?」
父「馬鹿な事を言うな。息子の一大事に、仕事などして
いられるか」
ユウト「でも、俺は大丈夫だから」
父「・・・・・・そうか。まぁ、ともかく、今日は帰るぞ。
ちゃんと、眠るんだぞ」
ユウト「うん」
そして、両親が病室を去り、ユウトは一人-残された。
ユウト「カンナ、居るんだろ?」
すると、カンナの霊体が現れた。
カンナ『よく分かったわね』
ユウト「何となく気配を感じた」
カンナ『そう。でも、少し前よ。来たのは。空気を読んで
待ってたんだから』
ユウト「そっか・・・・・・」
カンナ『でも、良い-ご両親じゃない』
ユウト「そうだね。本当に・・・・・・。俺には-もったいない
くらいに」
カンナ『そう・・・・・・』
ユウト「そう言えば、カンナって・・・・・・いや、いいや。
何でも無い」
カンナ『何よ、気になるわね』
ユウト「いや、聞いて良い事か、どうか」
カンナ『何よ。聞いてみなさいよ。答えたくない時は答え
無いだけよ』
ユウト「えっと、さ。カンナには両親って居たのか?」
とのユウトの言葉に、カンナは目を細めた。
カンナ『あなたと同じよ・・・・・・』
と、カンナは告げるのだった。
ユウト「それって・・・・・・」
カンナ『この話は-よしましょう。まぁ、でも、今日は色々と
収穫が-あったわね』
ユウト「収穫?」
カンナ『そう。あのヤクザっぽい、オッサンよ』
ユウト「ああ、あの人」
カンナ『彼からは死相が-していたわ』
ユウト「本当に?」
カンナ『ええ。かなり危険ね。そう、私の感じている悪意も
彼に向けられているモノな気がするわ』
ユウト「あのさ。一つ聞いて良い?」
カンナ『ええ』
ユウト「悪意を発している人を探せないのか?」
カンナ『私の力では無理ね。私は-この世界に存在して居ないの。
だから、何かを探知するにせよ、あなたを媒介にして
行っているのよ。だから、あなたが全く気付いて
いない事には、気づけない。逆に、あなた自身が色々と
動いて、情報を集めれば、私も-より多くを探知する
事が出来る』
ユウト「つまり、もっと働けと」
カンナ『端的に言えば、そうね』
ユウト「はぁ。じゃあ、少し、散歩に行きますかな」
と言って、ユウトはベッドから降りるのだった。
・・・・・・・・・・
夕暮れの廊下をユウトは歩いていた。
カンナ『でも、この悪意を発している奴。巧妙に隠してるわね。
恐らく、医師か看護師か病人か、もしくは-掃除夫とかの
関係者に偽装してるんでしょうね』
ユウト『人数が多すぎるよ・・・・・・』
カンナ『何か不自然な事は無かった?些細な事が鍵と
なるモノなのよ』
ユウト『そんな事、言われても。というかさ、そもそも、あの
オジサンに、もっと話を聞いた方が良いんじゃない-か?』
カンナ『それも-そうね。敵の情報を正確に把握した方が良いに
決まってるわ』
ユウト『敵って・・・・・・。まぁ、いいや。ともかく、病室の
番号は聞いといたから、会いに行こう』
そう言って、ユウトはエレベーターの方へと向かうのだった。
・・・・・・・・・・