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第17話  刺突

 第17話  刺突(しとつ)


 夜の街を娘達が歩いていた。

 彼女達は若く、成人していないように見えた。

 とはいえ、大人(おとな)ぶろうとメイクをきちんとしており、

それが逆に初々(ういうい)しくも見えた。

 すると、軽薄そうな男達が、彼女達に声を()けてきた。

 彼女達は最初、戸惑(とまど)うフリをしていたが、すぐに、男達と

歩き出した。

 そして、彼女達と男達は、冠木町(カブキチョウ)のカラオケへと

入っていった。

 それから、しばらくして、彼女達の一人と男達の一人が、

手を組みながら出てきた。

 さらに、別の一人と別の一人が。

 そして、カラオケには、一人と一人が残った。

女「ねぇ、私達も行こうよ」

男「(あせ)るなよ。せっかくのカラオケ代がもったいねぇだろ?

  それに、ここでだって、出来ない事もねぇし」

 と言って、男は女の下着の中へと手を入れた。

 そして、女の甘い声がカラオケ・ボックスに響いた。

女「駄目だって。監視カメラとかもあるんでしょ?」

男「暗黙の了解だって。それにダチの話じゃ、ここの店員

  はビビリで、何も言って来ないってさ。そのダチとか、

  やりながら、店員にドリンク注文したとか言って、自慢

  してたぜ」

女「えぇ、嘘でしょ?」

男「いやいや、あいつなら-やりかねねぇって。

  それに、見られるか分かんない中で-やるのも、

  興奮しねぇ?」

女「えぇ・・・・・・どうかなぁ・・・・・・」

 と、もじもじとしながら、言うのだった。

 それを(あん)肯定(こうてい)と受け取った男は、女の口をキスで

(ふさ)いだ。

 そして、舌と舌の絡みつく(みだ)らな音が(くちびる)から漏れるの

だった。

 すると、ノックの音が響いた。

 それから、店員らしき者が入って来た。

 その店員は(くも)りメガネに、マスクと、奇妙な()()

だったが、情事(じょうじ)最中(さなか)であった二人は、その違和感に

気づかなかった。

店員「失礼します。ドリンクをお持ちしました」

 との店員の中性的な声が、場違いに響いた。

男「は?頼んでねーし。まぁ、いいや、置いといて」

 と言って、再び、行為を再開しだした。

店員「はい」

 そう言って、店員はビール(びん)で男の頭を殴りつけた。

 突然の事態に、女は口をぱくつかせる事しか出来なかった。

 そして、女が叫び声をあげようとした瞬間、ナイフが女の

腹部に突き刺さった。


 ・・・・・・・・・・

 昼休み、外では雨が降っていた。

シュウ「そう言えばさ、昨日、冠木町(カブキチョウ)で事件があったみたい

    でさ。俺、ちょうど、野球部のOBに接待みたいなのを昨日して

    てさぁ・・・・・・。正直、練習の後は勘弁(かんべん)してくれって

    感じだけど、それで、冠木町(カブキチョウ)に行ったんだよ」

 と、隣のクラスの上谷(かみや) シュウが言った。

ユウト「それは大変だったな」

シュウ「そうなんだよ。で、そしたら、サイレンの音が響いて。

    人だかりが出来てんだよ。それで、警官が集まって

    来てさ。テープを張りだして、野次馬を追い出して

    てさ。不謹慎な言い方だけど、ドラマみたいだった

    んだよ」

ユウト「それで?」

シュウ「いや、詳しくは分からなかった。一応、俺、未成年

    だし、あの時間帯に-ああいう夜の繁華街に居るのって

    問題だろ?それで、OBの人達に(かえ)させられた」

ユウト「そっか」

シュウ「まぁ、早く帰れたのは良かったけど、最近、物騒だよな。

    ニュースじゃ緑鳳会の本部校が燃えたって話だし」

ユウト「う、うん・・・・・・」

シュウ「あ、そっか。ユウト、お前、緑鳳会に通ってたんだっけ?

    そりゃ、大変だな」

ユウト「まぁね。ただ、ちょっと、色々あって、緑鳳会は

    辞めるかもしれない」

シュウ「マジか・・・・・・。まぁ、ユウトなら何処(どこ)の塾でも何とか

    なるんだろうな」

ユウト「いやいや。入院してたし、結構、きついよ」

シュウ「そっか。でも、あんま無茶すんなよ。まだ、体調も

    戻ってないだろうし」

ユウト「ありがとう。まぁ、体力は戻った感じだけどね」

シュウ「それは良かった。でも、ユウトが学校に通えるくらいに回復して

    本当に良かったよ」

ユウト「うん。本当に」

シュウ「さってと、じゃあ、俺は(ひる)(れん)に行くわ」

ユウト「あれ?今、雨-降ってるのに?」

シュウ「雨なら雨で、やれる事が-あるからさ。筋トレとか。

    まぁ、春の未来選抜も近いんだ。気を抜けないよ」

ユウト「そっか。頑張ってるんだな」

シュウ「お前もな」

 そう言って、シュウは手を軽く振って、去って行った。

 すると、カンナの霊体が現れた。

カンナ『すっかり、学校に馴染(なじ)んでるわね』

ユウト『まぁね。あ、購買に行って良い?小腹が()いちゃって』

カンナ『お弁当、量、少なかったものね』

ユウト『まぁね。それに、(あぶら)っこいモノも食べたくなってさ』

カンナ『まったく。ユウト(ママ)も心配してるってのに』

ユウト『そうだね。心配ばっか()けちゃってるよ』

カンナ『・・・・・・危険を(おか)したくないのなら、このまま(ゆる)やかな

    日常を過ごすのも良いのよ』

 すると、ユウトは立ち上がり、答えるのだった。

ユウト『今更、前と同じようには生活できないよ。

    それに、カンナには生き返らしてもらった恩が

    あるし』

カンナ『そう・・・・・・』

ユウト『それに、困っている人が居るのなら、少しでも助けに

    なりたいんだ』

 と言って、微笑(ほほえ)むのだった。

カンナ『はいはい。じゃあ、から揚げやポテトでも食べて、

    スタミナを付けなさい』

ユウト『了解』

 そして、ユウトは歩いて行くのだった。


 ・・・・・・・・・・

 カラオケ店は現在、警察の手で封鎖されていた。

 一方で、そのカラオケの店長は、昨日に引き続き、

神宿署(シンジュクしょ)で事情聴取を受けていた。

 その様子を二人の警官がガラス越しに見ていた。

警官A「しっかし、あの店長さんも運がないと言うか。

    今回の事件が無ければ、こんなに(しぼ)られる事も

    無かったでしょうに」

 と、若い警官は言った。

警官B「自業自得だ。カラオケ・ボックス内での公然わいせつ

    行為を、通報もせずに見過ごしてたんだからな。

    さらに、脱税に、女性店員へのセクハラ。

    叩けば(ほこり)が出すぎる。まぁ、今回の事件とは直接の

    関係はなさそうな気もするがな。

    とはいえ、そういう場所だからこそ、犯罪は起きやすいという

    側面はある」

警官A「そんなモノですかね?」

警官B「そんなモノさ。小さな犯罪は大きな犯罪を呼ぶ。

    似た話で、街を清掃する事で、犯罪率を下げる事が

出来る。いずれにせよ、小さな事が連鎖し、大きな

因果が紡がれるモノだ」

警官A「はぁ・・・・・・?」

警官B「ともかく、あの店長を含め、細かく洗っていくぞ。

    これで女子高生の傷害事件は3件目だ。

    最初の2件こそ、上手くマスコミから隠されて

    いるが・・・・・・」

警官A「今回は、隠すのは無理でしょうね。場所が場所

    ですし。それに、従業員の誰かがネットで拡散

    してるみたいですし」

警官B「頭の痛い話だ。正直、情報は-こちらで制御して

    おきたいんだがな。まぁ、隠蔽(いんぺい)体質に(おちい)

    よりはマシなのかも知れないが」

警官A「しっかし、何なんですかね、この犯人の狙いは?

    被害者は女子高生のしかもお嬢様学校の生徒ばかり。

    しかも、手口は同じで、ナイフで腹部を突き刺す。

    まぁ、死者が出ていないのが幸いですがね」

警官B「もっとも、本当に犯人が同じかは分からないがな」

警官A「いやいや。これは-どうみても、同一犯ですよ」

警官B「それは-どうかな。模倣犯の可能性もある。

    さらに、最初の事件を知り、それを利用して

    連続事件に見せかける、という可能性もあり

得るだろう」

警官A「考え過ぎでは?」

警官B「刑事に、考え過ぎ、という言葉は無いぞ。

    常に、あらゆる可能性を考えておけ。

    もっとも、上から捜査を打ち切るように命じられたら、

    スッパリと忘れろ。それが、生き残るコツだ」

警官A「そんなモノですか」

警官B「ああ。その通りだ・・・・・・その通りなんだよ」

 と、自分に言い聞かせるように、(つぶや)くのだった。


 ・・・・・・・・・・



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