第11話 緑鳳会
第11話 緑鳳会
ユウトは部屋で、相当に-しょげていた。
カンナ『まぁ、元気だしなさいよ、ユウト。良い事あるわよ』
とのカンナに対し、ユウトは幽鬼の如くに、顔を向けた。
ユウト「・・・・・・カンナには分からないだろうね、俺の哀しみが」
カンナ『ま、まぁまぁ。可愛いフィギュアじゃない。
私が憑依する事で、可愛さが-
さらに増してるし。
見とれたり、撫で撫でしたり、お話したり、
果てはペロペロしたりしても、仕方ないわね』
ユウト「いや、ペロペロとか絶対しないから」
カンナ『したら、呪うわよ。うーらーめーしーやー、って』
ユウト「怖いよッ!」
カンナ『静かに、静かに』
と、カンナは-たしなめた。
ユウト『うん・・・・・・じゃあ、普通に念話で話そう。と言っても、
心の中で話すだけだけど』
カンナ『まぁ、大体、伝わってるから大丈夫よ。
ただし、伝えたくない思いは、聞き取り辛いけど』
ユウト『あ、そうなんだ』
カンナ『ええ、そうよ。まぁ、何言ってるか分からない時は、
聞くから大丈夫よ』
ユウト『了解。さて、そろそろ寝るか。いや、宿題しないと。
ああ、でも、宿題もってないや』
と言って、ユウトは-ため息を吐いた。
カンナ『宿題、宿題って、あんた宿題やり過ぎよ。病院でも
ずっとしてたじゃない』
ユウト『え?何それ?俺、宿題なんてしてないよ』
カンナ『してたわよ。学校の宿題。先生が来て、プリント
渡してたじゃ無い』
ユウト『え?・・・・・・それ、本当に俺?』
カンナ『あんた以外に居ないわよ』
ユウト『いや、あり得ないって。だって、俺、ゼンさんの
件が終わって、すぐに退院しただろ?』
カンナ『何-言ってんの?ゼンの件から二週間は病院に
居たでしょ?』
ユウト『え?それは無いって。大体、健康体なのに、そんな
長く病院には居れないって』
カンナ『知らないわよ。もし、病院側としても-早く退院させて
万一があったら、責任問題になるから、嫌だったんじゃ無いの?』
ユウト『いや、それは-そうかも知れないけど。ともかく、
ゼンさんの件が1月の19日だから、もし、二週間
たってるなら、もう2月じゃ無いか』
カンナ『だから、2月でしょうが』
とのカンナの言葉に、ユウトは面食らった。
ユウト『流石に-それは無いって。ほら、携帯の表示だって』
と言って、ユウトは携帯を開いた。
しかし、そこには2月2日との表示が映った。
ユウト『う、嘘だろ?パ、パソコンは?』
そして、パソコンを起動させ、右下の表示を見るも、
そこにも2月2日の表示が-あった。
ユウト『あ、あり得ない・・・・・・。そうだ、新聞』
そして、ユウトは部屋の隅に置いてあった-今朝の新聞を
見た。
しかし、そこでも結果は同じだった。
カンナ『ね、だから言ったでしょ』
それに対し、ユウトは考え込んだ。
ユウト『・・・・・・カンナ。俺に変な魔法、かけたりしてない
よな?』
カンナ『あのねぇ、そんな事、するワケ無いでしょ。
大体、何よ、その変な魔法って』
ユウト『いや、ごめん。でも、どういう事だ?記憶が二週間分、
飛んでる。俺は-この二週間、何をしてたんだ?』
カンナ『別に普通にしてたわよ。ああ、でも、私の事は
ことごとく無視してくれたわよね。あれは、
マジで-むかついたわよ。何度、ハリセンで
叩いたか。まぁ、それも無視されたんですけどね。
正直、涙目だったわよ』
ユウト『ご、ごめん・・・・・・』
カンナ『ほんとよ』
ユウト『ただ、逆に言えば、俺の記憶が飛んでる時期と、
カンナを無視する時期は一致しているって事か』
カンナ『まぁ、大体ね。ただ、記憶が飛んでる時でも、
たまに、しっかりと受け答えしてたわよ』
ユウト『あ、そうなんだ。どんな事?』
カンナ『どうでもいいような事よ。テンプレートな会話
って奴ね』
ユウト『そっか。つまり、俺は-その二週間、機械的に行動
してたって事かな?』
カンナ『まぁ、今にして思えば、そうかもね』
ユウト『しかし、気持ち悪いなぁ。事故の後遺症かな?』
カンナ『突然、発症したって事?』
ユウト『うーん・・・・・・分からない。もしかしたら、何か
きっかけが-あるのかも。何か、心当たり無い?』
カンナ『心当たり?ああ、その学校の宿題をするように
なってから、私を無視するように-なったわね』
ユウト『学校の宿題か。でも、ウチの学校って、宿題あんま
無いハズなんだけどなぁ』
カンナ『え?そうなの?』
ユウト『うーん、そもそも-その宿題って、どれ?』
カンナ『鞄の中に入ってるわよ』
ユウト『え?どれどれ・・・・・・』
そして、ユウトは鞄の中を漁りだした。
すると、プリントの束が出てきた。
ユウト『もしかして、これ?』
と言って、ユウトは-それをカンナに見せた。
カンナ『うん、それよ-それ』
ユウト『いや、でも、これって塾のプリントだよ』
カンナ『塾?でも、先生がユウトに渡してたわよ』
ユウト『・・・・・・思い出せない。どんな人だった』
カンナ『白いスーツに、薄ら笑いを浮かべてるような
人よ。まぁ、イケメンだったんじゃないの?
アホな女には-もてそうよね』
ユウト『俺、その人に、凄く心当たりが-あるんだけど』
カンナ『あら?誰よ?』
ユウト『緑鳳会の塾長だと思う・・・・・・。
ちょっと待ってて』
そして、ユウトはパソコンで画像を検索しだした。
ユウト『これじゃない?』
とのユウトの言葉に、カンナはフィギュアから出て、
画面を覗いた。
カンナ『ああ、それそれ。へー、神林 クルト って、
言うんだ、その塾長』
ユウト『ああ。そうなんだ。塾長は、特別クラスを受け持ってるんだ』
カンナ『塾長-自ら教えてんの?』
ユウト『うん。教えるのが好きなんだって』
カンナ『それで、生徒の見舞いまでするって事?
というか見舞いじゃなくて、プリントを
渡しに来たって事?塾の先生が?』
ユウト『多分・・・・・・』
カンナ『信じられない・・・・・・。学校のプリントを持ってくる
なら分かるけど。塾のプリントを病院に持ってくる
なんて。どんだけよ』
ユウト『まぁ、そういう塾なんだよ。緑鳳会は』
カンナ『でも、となると-その塾長が怪しいわね』
ユウト『まぁ、あの人は結構、黒い噂あるからね』
カンナ『でも、ユウトの記憶が飛んだのと本当に関係あるの
かしら?』
ユウト『分からない。でも、関係ありそうな気が凄くする』
カンナ『気が合うわね。私も-そんな気が凄くするわ』
ユウト『はぁ、とうなると調べるしか無いか』
カンナ『そうね。ユウトが救わねばならない少年・少女達と
関係が-あるかも知れないわ』
ユウト『あ、そうなの?』
カンナ『さぁ、私は大まかな運命しか見れないわ。
まぁ、自分で探すしか無いのよ』
ユウト『そうか、となると、塾に行ってみるしか無いな』
カンナ『ええ、今すぐ行かないとね』
ユウト『え?』
カンナ『え?』
と、お互いに、キョトンとした。
ユウト「い、いやいや、今日は-もう遅いでしょ?
無理ッ、無理だって!」
カンナ『シー』
との言葉に、ユウトは口を押さえた。
ユウト『で、でも今日はマジで辛いんだけど』
カンナ『我慢よ、ユウト。思い立ったが吉日と言うでしょ?』
ユウト『えー・・・・・・』
と、ユウトは不満そうに言うのだった。
カンナ『大体、考えて見なさい。相手がユウトに何かをしたと
して、まさか、記憶が戻った-その日に、やって来る
とは思って無いでしょ?』
ユウト『そりゃ、普通に寝てたいからね』
カンナ『ともかく、相手の想定外の事をする事で、奇襲に
なるのよ。さ、行くわよ。早く、早く』
ユウト『マジで?』
カンナ『大マジよ。今日なら、ユウト母も気を遣って、
この部屋に近づこうとは-しないでしょ?
だから、抜け出すなら絶好のタイミングよ』
ユウト『いや、それは-そうかも知れないけど。
マジで行くの?』
カンナ『行くのよ。さぁ』
とのカンナの言葉に、ユウトは大きく-ため息を吐いた。
ユウト『分かったよ。ええと、今、10時だから、ああ、普通に
やってるな』
カンナ『・・・・・・どんだけ遅くまで勉強してるのよ』
ユウト『まぁ、そういう塾だから』
カンナ『よーし、ともかく、行くわよ。えいえい、おー』
と、拳を突き上げ、言うのだった。
それに対し、ユウトは本日-何度目になるか分からない
ため息を、吐くのだった。
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