表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/20

第1話  二度目の生 《イラスト2点-追加》

 神無(かんな)エクステンション

 

第1話  二度目の生


挿絵(By みてみん)

 《カンナ》


 やれやれ、とうとう-この時期が、やって来たか。

 ああ、僕の名はフェイキオス。

 この世界の観測者だ。

 まぁ、この世界、惑星アースを何周も何周も見ているワケさ。

 でも、この世界も何周もするウチに-ずいぶんと変わったモノ

だね。

 たとえば、国の名前とかね。

 国名こそ変わらずとも、文化や言語や人種が微妙に違ったりとか。

 まぁ、でも、本質の運命は悲しいくらい変わらないんだけどね。

 その滅びの運命は・・・・・・。

 さて、君を彼女のもとへと案内する前に、記憶を取り戻してもらおう、

如月(きさらぎ) ユウト-君。

 

 

 そして、俺の意識は暗転し、ザー、ザーと、壊れたテレビの

ような音が、鳴り響いた。


 それは夜の大通りだった。

 俺は遅くまで塾に通い勉強をして、その帰りだった。

 今は、高校2年の冬。

 受験まで後、一年を切った。

 今の内に詰め込んでおかないと-いけない。

 春になれば、運動部を引退した受験校の連中が、必死に勉強を開始し、

追いついてくる。

 ああ、頭が-ぼんやりする。

 今日も頑張った。

 でも、何故だろう。この満たされない気分は・・・・・・。

 その時、俺は-ありえないモノを見た。

 小さな子供だった。サッカー・ボールで-その少年は遊んでおり、

コロコロと道路に転がっていったボールを追いかけていった。

 車が普通に走っているのに。

 気付けば俺は駆けだしていた。

 バカみたいに何も考えずに、体だけ動いていた。

 そして、少年を突き飛ばし・・・・・・。

 気付けば俺は空に浮いていた。

 下では街路樹にぶつかった軽トラック、それを囲むように

人だかりが、そして、その中心に血まみれの俺が居た。

『え・・・・・・あれ?嘘・・・・・・だろ?漫画とかじゃ無いんだからさ』

 しかし、浮いてる自分の手を見ると透けていた。

『俺・・・・・・死んだのか?』

 遠くから救急車とパトカーのサイレンの音が近づくのが聞こえ、

俺は・・・・・・。



 そこには一人の少年が居た。

少年「やぁ、やっと思いだしたみたいだね。

   如月(きさらぎ) ユウト-君」

ユウト「・・・・・・俺は死んだのか?」

少年「死んだね。完全に脳と心肺は停止し、魂は肉体を

   離れた。運が無かったね」

ユウト「嘘だろ・・・・・・」

少年「まぁまぁ、そう-しょげる事は無い。不幸中の幸い、

   という言葉も-あるしね」

ユウト「ど、どういう事だよ・・・・・・」

少年「まぁ、生き返るチャンスが-あるって話さ」

ユウト「生き返る?そんな事-言われたって、死んだ実感も

    無いのに」

少年「だろうね。実感が-あったら、もっと取り乱している-

   だろうさ。ただ、彼女が待っている。付いて来てくれ」

ユウト「彼女?」

少年「死神・・・・・・だよ」

 と言って、少年はユウトに背を向け、歩いて行った。

ユウトは仕方なしに少年に付いていった。

ユウト「こ、ここは何処なんだ?」

 ユウトは左右をキョロキョロと見回しながら尋ねた。

 そこは細い道となっており、幻想的な風景が眼下に浮かんで居た。

少年「死後の世界。霊界・・・・・・と言った所かな」

ユウト「天国・・・・・・なのか?」

少年「違う。天国や地獄と言った世界と、ヒトの世界の狭間(はざま)

   世界。だからこそ、君はヒトの世界に戻る事が理論上は

   可能だ」

ユウト「よ、良く分からないけど、あんたに従ってれば、俺は

    生き返れるのか?」

少年「それは、君しだいだね、ユウト君」

 と言って、少年はフフッと笑うのだった。

 そして、しばらく二人は歩くと、巨大な扉の前に辿(たど)り着いた。

少年「ここから先は一人で進んでくれ。彼女も-それを望む

   だろう」

ユウト「え・・・・・・あ、ああ。な、なぁ、あんたの名前は?」

少年「さっきも話したけど、もう一度、名乗ろうか。

   僕の名はフェイキオス。惑星アースの観測者だよ。

   さぁ、扉に手をかけて、望めば扉は開かれる」

ユウト「わ、分かった」

 そう言って、ユウトは扉に手を当てた。

ユウト「な、なぁ。フェイキオス。あんたとは、ここで

    お別れなのか?」

とのユウトの言葉に、フェイキオスは微笑んだ。

フェイキオス「僕は何処にでも居るさ。特に君が僕を思い出して

       いる時は・・・・・・。

       如月(きさらぎ) ユウト、

       君に(さち)あらん事を」

ユウト「ありがとう」

 そう答え、ユウトは力をこめ、扉をゆっくりと押した。

 すると、扉は以外にも簡単に開いていき、中から光が

漏れてきた。

 そのほとばしる光にユウトの意識は飲まれていった。


 気付けばユウトは黒い部屋に居た。

 そこには大きな玉座があり、一人の銀髪の美少女が座っていた。

少女「・・・・・・やっと、来たのね」

 見れば、少女の体の周囲には幾本もの鎖が巻かれていた。

ユウト「き、君は・・・・・・」

少女「私の名はカンナ。如月(きさらぎ) ユウト。あなたを待っていたわ」

ユウト「俺を・・・・・・?」

カンナ「そう。あなたに頼みたい事が-あるの。それを引き受けて

    くれれば、あなたを生き返らせても-いいわ」

ユウト「た、頼みって・・・・・・」

カンナ「今、世界は滅びへと向かって居る。私は-それを止め

    たい。でも、私自身は今、見ての通り封じ込まれて

    いて、直接-手を出せない。だから、ユウト、あなた

    に頼みたいの。あなたに世界を救う手助けをして-

    もらいたいの」

ユウト「ま、待ってくれ。世界を救うって、そ、そんな抽象的

    な事、言われても」

カンナ「じゃあ、具体的な話をしましょう。私が今から言う事を

    聞いてくれると約束するなら、あなたに生きる-

    チャンスをあげるわ」

ユウト「あ、ああ・・・・・・」

カンナ「今、この世界には死の運命を持った少年・少女達が

    存在するわ。その少年・少女達を-その運命から救い

    なさい。それが条件よ」

ユウト「何人、救えば良いんだ」

カンナ「必要なだけよ。ただし、数十人-以内よ」

ユウト「・・・・・・救った後は?」

カンナ「後は自由に生きて頂戴(ちょうだい)

ユウト「わ、分かった。なら、もう一つ、もし、俺が生き返って

    約束を守らなかったら-どうなる?」

カンナ「その時は、あなたは死ぬでしょうね。ただし、それは

    自然な形での死よ。私が殺すワケじゃ無い。今、私の

    力で-あなたを生き返らせても、あなたの死の運命は

    弱冠(じゃっかん)、引き延ばされたに過ぎない。放っておけば、

    また、別の形で死ぬでしょう」

ユウト「そ、そんな・・・・・・」

カンナ「ユウト、これは-あなたの(ため)でも、あるのよ。

    因果応報という言葉があるでしょう。

    善因(ぜんいん)善果(ぜんか)を生む。

人を救っていけば、あなた自身も救われるでしょう」

ユウト「・・・・・・分かった。ともかく、生き返らせてくれるなら

    それでいい。あ、ただ、その救う対象は誰なんだ?」

カンナ「それは生き返ったらビジョンを送るわ。

    ここは-あなたの内面世界でもあるの。

    あなたが知るはずも無い情報は、生き返った時に、

    忘れてしまうわ」

ユウト「なら、今の会話は?」

カンナ「これは、あなたの今までの記憶を利用して構築して

    いるから、大丈夫よ」

ユウト「そ、そうか。良く分からないけど、分かった」

カンナ「ああ。ただ、一人目は教えておくわ」

 すると、ユウトの脳裏に一人の女子高生の顔が浮かんだ。

ユウト「い、今のは・・・・・・」

カンナ「今のが一人目。あなたが最初に会うべき相手。

    彼女を探しなさい。彼女に会えば、あなたの

    運命は切り開かれるわ」

ユウト「わ、分かった・・・・・・」

 とのユウトの様子を見て、カンナは満足そうに、(うなず)いた。

カンナ「では、契約を」

 そう言って、カンナは右腕を少し、持ち上げ、小指を出した。

ユウト「え、ええと」

カンナ「(ゆび)()りを(かわ)すの。さぁ、早く」

ユウト「あ、ああ」

 そして、ユウトも右手の小指を差しだし、カンナの小指に

触れさせた。

カンナ「では、契約を果たしますか?」

ユウト「ああ」

 すると、カンナの小指から魔力が流れ込んできた。

ユウト「ッ・・・・・・あ、熱いッ・・・・・・」

 ユウトは全身が熱を持つのを感じた。

カンナ「それが生きているという事よ。では、如月(きさらぎ) ユウト、

    あなたを(かげ)ながら見守って居るわ」

 とのカンナの言葉に、何かを答えようとするも、ユウトの

意識は熱の中に消えていった。


 ・・・・・・・・・・

 気付けば、そこは病室だった。

医師「22時38分、ご臨終(りんじゅう)です・・・・・・」

 との医師の宣告がユウトの両親にされていた。

 それを聞き、母は泣き崩れ、それを父が体を震わせながら、

支えた。

医師「力及(ちからおよ)ばず・・・・・・申しわけ-ございません。

最善を尽くしたのですが・・・・・・。

ただ、お悲しみの所、申しわけないのですが、

ベッドの()き室の関係から、すぐに霊安室に

移動を 」

ユウト「え・・・・・・ちょっ・・・・・・まだ、生きて・・・・・・」

 と、ユウトが起き上がると、医師は-びっくりして、「ヒエエッ」と

声をあげながら、腰を抜かしてしまった。

 そして、ユウトの両親は-突然の事態に反応出来ていなかった。

 そんな中、ユウトは口を開き-とまどいながらも言うのだった。

ユウト「え・・・・・・ええと。ただいま、義父(とう)さん、義母(かあ)さん」

 と。


 そして、こうして、如月(きさらぎ) ユウトの物語は再び始まる

のだった。


 ・・・・・・・・・・


挿絵(By みてみん)


《左・フェイキオス、右・ユウト、真ん中・カンナ》


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ