水龍
月狼に聞きながら、夜月が陽矢のいたらしき場所へ向かうと、
あの少年…陽炎が立っていた。
しかし、背を向けているので顔は分からない。
月狼を見ると、少年に対して怯えているようだ。
陽炎「…どうやら戻ってきちゃったみたいだね」
夜月「…誰だ」
陽炎「…いずれ分かるよ。今は話せないけど」
背を向けたまま、何処からか吹きぬけた風と共に陽炎はその場から消えた。
夜月「…クソッ」
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──青龍の祠
陽矢「…なー、ホントにあってんのか?」
レキ『う、うーん…ここまで来ると自信ねえな…』
肩に乗ったレキが、陽矢に出口を教えると言ったが…
未だ、洞窟内を迷子になっている。
しばらく進んでいると、出口ではなく…祠のところに出てしまう。
陽矢「…出口じゃないじゃないか」
レキ『おっかしーな…祠のある所なら、出口の光が見えるハズ…』
陽矢「…」
レキ『…そんな目で見んなよ。
…あーもう!祠! よし! 祠見に行ってこい!』
陽矢「…アンタ、ヤケになってない?
ていうか、見に行く意味が分からないし…」
レキ『うるさーいッ!!』
陽矢「…はあ…」
レキに言われて、祠の方に歩み寄る。
祠を見ると、自分の知っているタイプの祠と特に代わりはないが、真ん中に青色の水晶のようなモノが祀られているようだ。
レキ『それはだな…青龍が持っていたモノらしく、水を自在に操ることが出来るらしいんだ』
陽矢「ふーん…」
レキ『ふーん…って、興味ないのかよ』
そんな会話をしていると、どこからか声がした。
『少年…』
陽矢「…?」
レキ『ん、なんだ?』
突然、景色が変わった。陽矢は今、水面の上に立っている。
目の前に、両手に球体を持った青い龍が水中から飛び出し、陽矢を見る。
呆気にとられ、その場に立ちつくしていると…
『少年…どうやら汝には私の姿が見えるようだな』
どうやらこの龍が声の主のようだ。
『私は青龍。四神の一人、水を司る者なり。
我ら四神が仕えし主の命により、汝に水を操る我が力を授けよう…!』
陽矢から笛が飛び出し、青龍の放った力が笛に宿った瞬間…
笛が…白銀の刀へと変化した。
陽矢「笛が…!?」
青龍『それが本来の姿…十六夜。だがしかし、本来の力を出せてはおらぬ』
レキ『…』
青龍『さあ…祠の外に導こう。
…後のことは…私の娘・ミクマリが話してくれるだろう…』
陽矢「ちょ…ちょっと…!?」
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陽矢は気が付くと、外にいた。
どうやら誰かが傍にいるようだ。
「…陽矢。君はまだ気付いていないかもしれないけど…
この旅は、君の大切な友人を助け出すことと他に、君だけの目的があるんだ。
──ここにいた時の記憶を全て思い出すこと。そして、自分の本当の名前を思い出すこと。
…覚えておいて。君が思い出す頃には…きっと、家族にも…友人にも会えるよ」
視界がぼやけていて、誰なのか分からない。
次第にまた意識が遠のいて、再び視界が暗くなる。
どこかで、自分の名前を呼ぶ…懐かしいような声がした気がした。