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陰陽師物語  作者: 睦月火蓮
捌幕
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55/61

姉と弟

今回から[残酷な描写]をつけます。

「…っ…」


陽矢「…」


九尾「フン。邪魔しおって」


夜月「っ…く…」


俺を庇って背に刀を刺された姉の顔が映った。

九尾が引き抜いた刀から鮮血が飛び散った。


陽矢「…あ…」


夜月「この…馬鹿者が…」


そう呟くと俺の体から崩れて倒れた。


吉平「夜月!…貴様!」


父様達が走って俺と姉ちゃんを守る為に九尾との間に立つ。


陽矢「お、ねえちゃん…」


夜月「…やっと、私を『姉』と呼んでくれたか…」


陽矢「…!」


桃芽「まさか…陽矢君が、夜月の捜していたあの子だったなんて」


暦「最初から知っていたのか…!?」


夜月「…最初からではない。私の弟と気付いたのは、あの笛を見た時だ。…そもそも、あの笛はヨウヤの身を守る為に父上が持たせた物…。そう簡単に、手放せないように術も施されている」


夜「(夜月様はヨウヤ君と重ね合わせていたのではなく…初めから本人として見ていたのか)」


夜月「とはいえ…私も最初は疑っていたのだが、…旅をしていくうちに、次第に確信に変わった。だが…突然私が姉だと明かしても、混乱するだけと思って、黙っていた。

 …よかった。お前とまた、会えた」


涙が溢れてきた目を手でぬぐう。


夜月「泣くな、私はまだ…死にはしない、筈だ…。泣くのは、後だ。…成長しても、泣き虫なのは、変わらないな…」


俺の顔に触れていた手が落ちた。


桃芽「気絶しただけですわ。…とはいえ、一刻も早く手当てしなければいけま…キャアッ!」


突然目の前にいた桃芽が壁まで突き飛ばされた。

そして、気付いた。俺以外、皆、やられていた。


九尾「我が本気を出せばこの程度…。

 元の原因は、貴様だぞ。我をあの生贄の娘と勝手に思い込み飛び出した結果。こ奴らは皆こんな目にあった」


陽矢「…!」


いくらここが凄まじい妖気で溢れているとはいえ、九尾を倒したと思いこみ、俺が…。

俺が、皆を傷つけた。


九尾「数年前のこともそうだ。貴様を守ろうとし我ら妖魔軍に刃向かった。

 すべて、誰のせいだ?」


陽矢「…」


吉平「っ…ヨウ、ヤ…」


俺のせいだ。

俺がもっと気を付けていれば…。

俺がもっとしっかりしていれば…。


九尾「死ね。小僧」













































『──そんなことさせないよ』


突然。俺の体が動いていた。

九尾の振りかざした刀は折れ、破片が九尾の右目に刺さった。


九尾「──ギャアアアアアァアアアーッ!!!」


『陽矢は殺させないよ。…天邪鬼様』


俺の前には、消えた筈の…陽炎が立っていた。


陽炎『形勢逆転。下剋上っていうのかな、こういうの』


九尾「っ…貴様ッ!!よくもっ…よくもぉおおッ!!たかが人形の分際でッ!!」


陽炎『…陽矢。ありがと、僕にも心があるって言ってくれて。嬉しかった』


陽矢「…陽炎…」


陽炎『君なら、止められる。あの子だって助けられる。…期待してるよ、頑張れ』


笑顔を浮かべながら、陽炎は消えた。


九尾「ッ…殺す!貴様は殺してやるッ!」


右目を抑えながら、眼を血走らせている。

対して俺は、至って冷静だった。


九尾「貴様を食い殺し我が霊力に変えてやる!!ヨウヤなどといったクソガキめ!!』


陽矢「…俺は」


再度狐姿になった九尾に十六夜を構え、斬った。

後ろで狐面が床に落ちる音がした。


陽矢「クソガキじゃねえ。…陰陽寺 陽矢だ」


九尾『…ギャアアアアア―――――ッ!!』


九尾の妖気が消えるのを感じた。

残るは…


陽矢「今すぐ退治しに行ってやるから覚悟しろよ。大妖怪・八岐大蛇」


俺は一人、奴の潜む場所に走って行った。

…九尾が断末魔の叫びしか上げてない気がする。

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