姉と弟
今回から[残酷な描写]をつけます。
「…っ…」
陽矢「…」
九尾「フン。邪魔しおって」
夜月「っ…く…」
俺を庇って背に刀を刺された姉の顔が映った。
九尾が引き抜いた刀から鮮血が飛び散った。
陽矢「…あ…」
夜月「この…馬鹿者が…」
そう呟くと俺の体から崩れて倒れた。
吉平「夜月!…貴様!」
父様達が走って俺と姉ちゃんを守る為に九尾との間に立つ。
陽矢「お、ねえちゃん…」
夜月「…やっと、私を『姉』と呼んでくれたか…」
陽矢「…!」
桃芽「まさか…陽矢君が、夜月の捜していたあの子だったなんて」
暦「最初から知っていたのか…!?」
夜月「…最初からではない。私の弟と気付いたのは、あの笛を見た時だ。…そもそも、あの笛はヨウヤの身を守る為に父上が持たせた物…。そう簡単に、手放せないように術も施されている」
夜「(夜月様はヨウヤ君と重ね合わせていたのではなく…初めから本人として見ていたのか)」
夜月「とはいえ…私も最初は疑っていたのだが、…旅をしていくうちに、次第に確信に変わった。だが…突然私が姉だと明かしても、混乱するだけと思って、黙っていた。
…よかった。お前とまた、会えた」
涙が溢れてきた目を手でぬぐう。
夜月「泣くな、私はまだ…死にはしない、筈だ…。泣くのは、後だ。…成長しても、泣き虫なのは、変わらないな…」
俺の顔に触れていた手が落ちた。
桃芽「気絶しただけですわ。…とはいえ、一刻も早く手当てしなければいけま…キャアッ!」
突然目の前にいた桃芽が壁まで突き飛ばされた。
そして、気付いた。俺以外、皆、やられていた。
九尾「我が本気を出せばこの程度…。
元の原因は、貴様だぞ。我をあの生贄の娘と勝手に思い込み飛び出した結果。こ奴らは皆こんな目にあった」
陽矢「…!」
いくらここが凄まじい妖気で溢れているとはいえ、九尾を倒したと思いこみ、俺が…。
俺が、皆を傷つけた。
九尾「数年前のこともそうだ。貴様を守ろうとし我ら妖魔軍に刃向かった。
すべて、誰のせいだ?」
陽矢「…」
吉平「っ…ヨウ、ヤ…」
俺のせいだ。
俺がもっと気を付けていれば…。
俺がもっとしっかりしていれば…。
九尾「死ね。小僧」
『──そんなことさせないよ』
突然。俺の体が動いていた。
九尾の振りかざした刀は折れ、破片が九尾の右目に刺さった。
九尾「──ギャアアアアアァアアアーッ!!!」
『陽矢は殺させないよ。…天邪鬼様』
俺の前には、消えた筈の…陽炎が立っていた。
陽炎『形勢逆転。下剋上っていうのかな、こういうの』
九尾「っ…貴様ッ!!よくもっ…よくもぉおおッ!!たかが人形の分際でッ!!」
陽炎『…陽矢。ありがと、僕にも心があるって言ってくれて。嬉しかった』
陽矢「…陽炎…」
陽炎『君なら、止められる。あの子だって助けられる。…期待してるよ、頑張れ』
笑顔を浮かべながら、陽炎は消えた。
九尾「ッ…殺す!貴様は殺してやるッ!」
右目を抑えながら、眼を血走らせている。
対して俺は、至って冷静だった。
九尾「貴様を食い殺し我が霊力に変えてやる!!ヨウヤなどといったクソガキめ!!』
陽矢「…俺は」
再度狐姿になった九尾に十六夜を構え、斬った。
後ろで狐面が床に落ちる音がした。
陽矢「クソガキじゃねえ。…陰陽寺 陽矢だ」
九尾『…ギャアアアアア―――――ッ!!』
九尾の妖気が消えるのを感じた。
残るは…
陽矢「今すぐ退治しに行ってやるから覚悟しろよ。大妖怪・八岐大蛇」
俺は一人、奴の潜む場所に走って行った。
…九尾が断末魔の叫びしか上げてない気がする。




