記憶の修復
陽矢「……」
俺はいつの間にか、泣いていた。自然と涙が溢れ出していた。
俺の家族は…最初から傍に居たんだ。
夜月…。…お姉ちゃん。
天照『…お帰りなさい、ヨウヤ』
陽矢「っ…。…はい」
屋敷に帰る途中、俺は色々な事を思い出した。
元々、俺があそこから花を持ってくるようになったのは…偶々神社に参拝しに行ってた時、天照の声が聞こえてきたからだった。
俺はそこで初めて神様を見た。凄く綺麗で、優しい人だと思った。
その人から「毎日少しずつ花を摘んで、それを和佳に薬にしてもらいなさい。そうすれば貴方の母上もよくなるでしょう」と言われて、俺はそうした。
俺の覚えてる限りでは、その日から母様の体調はよくなっていった。
陽矢「…、…お爺様」
清明「どうかしたのか?」
陽矢「…俺。記憶が戻ったけど……まだ、黙っていようかと思うんだ。俺が…陰陽寺ヨウヤってこと」
清明「…どうしてじゃ?」
陽矢「…まだ、俺自身…混乱してるんだ。だから…」
清明「…そうか。そういうことなら、儂は止めたりしない」
陽矢「…ありがとう。お爺様」
屋敷に戻ると、一番最初に顔を見たのは姉ちゃんだった。
夜月「…」
陽矢「…」
本当にどうしようかと思った。まさかこんなにも気まずい空気になるとは思わなかったからな…。
桃芽「あら、お帰りなさいませお二人とも。陽矢君、吉昌様に呼ばれておりましたが」
陽矢「あ、う、うん…」
桃芽「?…気のせいでしょうか、なんだか返答が柔らかいというか…」
陽矢「え?あ、い、いや。お、おう」
桃芽「何をそんなに焦っているのですか?…まぁ良いですわ。吉昌様は修練所に居ます」
陽矢「あー…うん、ありがとう」
桃芽「…。熱でもあります?」
陽矢「えっ、あぁいや別に…」
意外と桃芽は疑り深いらしいな…。
俺が返答に困っていると、意外な人物から助けが。
夜月「桃芽。そのぐらいにしておけ」
桃芽「…まぁそうしておきましょう」
夜月「お爺様。私が修練所まで陽矢を案内しますが、宜しいですか」
清明「そう言ってくれるなら、お前に任せよう」
…マジかよ。
久々に再会した姉弟とはいえ…なんだか旅を始めた最初の頃のようだな…。
夜月「…陽矢」
陽矢「……え?」
夜月「さっきから何か隠しているだろう」
陽矢「…」
鋭い。…いや単に俺が隠すの下手なだけか?
夜月「その隠し事は私に言えないことか」
陽矢「…今は、まだ」
夜月「…そうか。…いつか話せるようになったら、言ってくれ」
陽矢「…」
修練所の前まで来ると、夜月は去って行った。
少し寂しそうな背を見届けて、俺は修練所の中に入った。




