陰陽寺家屋敷
…案の定、怒られました。しかも正座させられて。
夜月「…戻ってきたかと思えばお前達二人は何をしておる。そんな傷だらけになり…」
夜「あ、あのー…。…そ、そのくらいで…」
夜桜「そうだよ。暦はついさっきまで……ねーぇ?」
暦「(イラッ)」
夜月「?…まぁ、このぐらいにしておく。傷の手当てをするから見せろ」
コイツ怖いのか優しいのか偶に分からなくなるな。
夜桜「…さて、暦。ちょっとさっきの話の続きをしようか。
夜月。奥、借りるよ」
先に手当ての終わった暦、後に続いて夜の二名を連れて、夜桜が奥の方に消えた。
ちなみに俺は未だに手当てを受けている。
夜月「…陽矢。湖に落ちて一時はどうなるか心配であったが、どうやら無事で何よりだ」
桃芽「それにしてもあの虚無僧…。何故私達の前に現れては助けをしてくれるのでしょう」
虚無僧…か。
陽矢「虚無僧って…確か、北森村に行く途中で天邪鬼に襲われた時、俺達を守ってくれた人だよな」
夜月「…天邪鬼が何か奇妙なことを言っていた。あの時も虚無僧に向かって…」
──!…チッ。まだ生きておったか。
陽矢「…確かにな。まだ生きてたかなんて、つまり…一回天邪鬼に殺されかけたことがあるってことだよな。
…何があったんだか?」
「あまり考えすぎると身が持たないぞ」
陽矢「ん?…わあっ!?」
い、いつの間に俺の後ろに…。
夜月「御久し振りです。叔父様」
「元気そうで何よりだ。夜月」
…叔父様、か。えっと、じゃあこの人が吉昌さんか。
…朝美と暦が眉が太いのって、この人の遺伝か?
「ヨっちゃーん。戻ったよー」
この声は確か…。
倭代「あ、そろそろ来る時だと思ったよ。君達ー」
吉昌「倭代。…お前はいつも妙にタイミングが良いな」
倭代「それがあたしの能力だろう?」
吉昌「…まあ、そうだが」
陽矢「…あのー」
倭代「何かな?」
陽矢「…すいません。放してもらえますか」
倭代さんが来たかと思えばいきなり俺に抱きついてきた。
離れてくれたかと思えば、俺の顔をまじまじと見ている。
陽矢「…えっと、何か、ついてます?」
倭代「すっかり顔付きが良くなったねー。すっかり見違えたよー」
陽矢「…?」
吉昌「倭代は人の霊力を見ることが出来るんだ。俺は正直よく分からないが…、最初に会った時よりは成長したということだろうな」
成長か…。
自分の成長って、周りに指摘されないと分からないんだよな…。
吉昌「さぁ、三人とも座敷に来てくれ。話したいことがあるんだ」
吉昌さんに案内されながら、座敷に向かった。
座敷に向かうと、夜桜達がいた。暦と夜は、どこか重い顔をしている。
夜月「…母上は」
吉昌「六花は、今日は体調が優れなくてな…今は和佳が看病してる」
夜月「…」
倭代「まぁまぁ、そんな突っ立ってないでとりあえず座りなさいな」
陽矢「ちょ、引っ張んないでください…、わわっ」
なんて強引に座らされた。
倭代「それじゃ、あたし和佳呼んでくるわー」
…自由な人だなー。
数分ぐらいして、倭代さんが男の人を連れてきた。
吉昌「…さて、申し遅れていたが俺は神支寺吉昌。兄・吉平に代わりこの霊神村の村長をしている」
「俺は神道和佳。俺もまたこの地の陰陽師の一人だ」
倭代「うちの旦那は数少ない医者でもあんのよ」
和佳「俺は医者じゃなくて、どちらかといえば薬剤師だ」
倭代「でも治療もできるじゃん」
陰陽師・霊神村代理村長‐神支寺 吉昌。
陰陽師・医者(薬剤師)‐神道 和佳。
和佳さんかー。うわー、奥さんの尻に敷かれてそうだなー。
吉昌「ちなみに和佳は恐妻家ではなく愛妻家だ」
陽矢「ん?」
吉昌「さて。陽矢、この何か思い出すことはあったか?」
陽矢「思い出す?……。…何となく、です」
思い出せたことは本当に断片的な記憶。
朱雀を正気に戻してからはどこを見ても地味な頭痛がして、辛い筈なのにどこか懐かしく感じる。
俺とともに旅をしてくれている夜月、桃芽、夜、レキ…もとい暦。道中で出会った人々…。皆、遠い昔にどこかで会ったような気がする。
それに…俺のこの「道陰陽矢」という名前は…偽りだったことも、何となく思い出した。…逆に本当の名前は、未だに分からない。
吉昌「…そうか」
陽矢「…。あの、…ここに、俺の両親がいるって聞いたんです。それで…」
ふと大人達を見ると、何とも言えない表情をしていた。
まるで…こう、俺に言いたくても、言えない…そんな表情をしていた。
吉昌「…。さて、今日は疲れただろう。続きは明日にでも話そう」
陽矢「…はい」
…その夜。俺は夢を見た。




