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陰陽師物語  作者: 睦月火蓮
陸幕
37/61

陰陽寺家屋敷

…案の定、怒られました。しかも正座させられて。


夜月「…戻ってきたかと思えばお前達二人は何をしておる。そんな傷だらけになり…」


夜「あ、あのー…。…そ、そのくらいで…」


夜桜「そうだよ。暦はついさっきまで……ねーぇ?」


暦「(イラッ)」


夜月「?…まぁ、このぐらいにしておく。傷の手当てをするから見せろ」


コイツ怖いのか優しいのか偶に分からなくなるな。


夜桜「…さて、暦。ちょっとさっきの話の続きをしようか。

 夜月。奥、借りるよ」


先に手当ての終わった暦、後に続いて夜の二名を連れて、夜桜が奥の方に消えた。

ちなみに俺は未だに手当てを受けている。


夜月「…陽矢。湖に落ちて一時はどうなるか心配であったが、どうやら無事で何よりだ」


桃芽「それにしてもあの虚無僧…。何故私達の前に現れては助けをしてくれるのでしょう」


虚無僧…か。


陽矢「虚無僧って…確か、北森村に行く途中で天邪鬼に襲われた時、俺達を守ってくれた人だよな」


夜月「…天邪鬼が何か奇妙なことを言っていた。あの時も虚無僧に向かって…」



──!…チッ。まだ生きておったか。



陽矢「…確かにな。まだ生きてたかなんて、つまり…一回天邪鬼に殺されかけたことがあるってことだよな。

 …何があったんだか?」


「あまり考えすぎると身が持たないぞ」


陽矢「ん?…わあっ!?」


い、いつの間に俺の後ろに…。


夜月「御久し振りです。叔父様」


「元気そうで何よりだ。夜月」


…叔父様、か。えっと、じゃあこの人が吉昌さんか。

…朝美と暦が眉が太いのって、この人の遺伝か?


「ヨっちゃーん。戻ったよー」


この声は確か…。


倭代「あ、そろそろ来る時だと思ったよ。君達ー」


吉昌「倭代。…お前はいつも妙にタイミングが良いな」


倭代「それがあたしの能力だろう?」


吉昌「…まあ、そうだが」


陽矢「…あのー」


倭代「何かな?」


陽矢「…すいません。放してもらえますか」


倭代さんが来たかと思えばいきなり俺に抱きついてきた。

離れてくれたかと思えば、俺の顔をまじまじと見ている。


陽矢「…えっと、何か、ついてます?」


倭代「すっかり顔付きが良くなったねー。すっかり見違えたよー」


陽矢「…?」


吉昌「倭代は人の霊力を見ることが出来るんだ。俺は正直よく分からないが…、最初に会った時よりは成長したということだろうな」


成長か…。

自分の成長って、周りに指摘されないと分からないんだよな…。


吉昌「さぁ、三人とも座敷に来てくれ。話したいことがあるんだ」


吉昌さんに案内されながら、座敷に向かった。

座敷に向かうと、夜桜達がいた。暦と夜は、どこか重い顔をしている。


夜月「…母上は」


吉昌「六花(リッカ)は、今日は体調が優れなくてな…今は和佳(ワカ)が看病してる」


夜月「…」


倭代「まぁまぁ、そんな突っ立ってないでとりあえず座りなさいな」


陽矢「ちょ、引っ張んないでください…、わわっ」


なんて強引に座らされた。


倭代「それじゃ、あたし和佳呼んでくるわー」


…自由な人だなー。

数分ぐらいして、倭代さんが男の人を連れてきた。


吉昌「…さて、申し遅れていたが俺は神支寺吉昌(カミシジヨシマサ)。兄・吉平に代わりこの霊神村の村長をしている」


「俺は神道和佳(カミノミチワカ)。俺もまたこの地の陰陽師の一人だ」


倭代「うちの旦那は数少ない医者でもあんのよ」


和佳「俺は医者じゃなくて、どちらかといえば薬剤師だ」


倭代「でも治療もできるじゃん」


陰陽師・霊神村代理村長‐神支寺 吉昌。

陰陽師・医者(薬剤師)‐神道 和佳。


和佳さんかー。うわー、奥さんの尻に敷かれてそうだなー。


吉昌「ちなみに和佳は恐妻家ではなく愛妻家だ」


陽矢「ん?」


吉昌「さて。陽矢、この何か思い出すことはあったか?」


陽矢「思い出す?……。…何となく、です」


思い出せたことは本当に断片的な記憶。

朱雀を正気に戻してからはどこを見ても地味な頭痛がして、辛い筈なのにどこか懐かしく感じる。

俺とともに旅をしてくれている夜月、桃芽、夜、レキ…もとい暦。道中で出会った人々…。皆、遠い昔にどこかで会ったような気がする。

それに…俺のこの「道陰陽矢」という名前は…偽りだったことも、何となく思い出した。…逆に本当の名前は、未だに分からない。


吉昌「…そうか」


陽矢「…。あの、…ここに、俺の両親がいるって聞いたんです。それで…」


ふと大人達を見ると、何とも言えない表情をしていた。

まるで…こう、俺に言いたくても、言えない…そんな表情をしていた。


吉昌「…。さて、今日は疲れただろう。続きは明日にでも話そう」


陽矢「…はい」


…その夜。俺は夢を見た。

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