湖下祠
「…おい、こら。起きろー。おいー、起きろってのー」
陽矢「…うっ…。…?」
「よーし、目が覚めたな?
…ったく、再会したと思ったら、ぶっ倒れてるなんて驚いたぜ」
どこかで聞いたような気がする言葉を聞きながら目が覚めた。
上半身を起こし周りを見る。そして俺の肩を見ても、レキはいない。
「どーこ見てんだ?こっちだこっち」
陽矢「…ん?」
後ろを振り向くと、…なんか髪の長い男の人がいるんだが。
「ん?なんだよその目は。俺だ俺、お前の肩で世話になったな」
陽矢「…アンタ、レキ…なのか?」
「おう。これが俺の本当の姿、霊神村陰陽師の神支寺暦サマだ!」
陰陽師‐神支寺暦。
確かによく聞けばレキと同じ声だな…。…ん?
陽矢「か、神支寺?アンタ今神支寺って言ったか…?」
暦「ん。おう、言った言った」
陽矢「…えーっと、まさか朝美の…」
暦「俺は朝美の兄貴だ。んで夜月の幼馴染で友人だ」
マジかー。うわー、よく見たらスゲーそっくりー。目も二重だし眉毛が太いところとか…
「陽矢殿ー。暦様ー」
暦「おっ、夜。無事だったみたいだな」
夜「暦様…いきなりご自分の体に戻られて大丈夫なのですか…?」
暦「ん?ああ、そういやなんともねぇな。体も特に不自由な部分とか無いし」
陽矢「…あのー。二人は一体…?」
暦「ああ。夜は俺の式神なんだ。ちなみに名前の由来は夜月からな」
いや由来とか知らんわ。
夜「…先程、湖下祠全体を見てきましたが、吉平様はどこにも居りませんでした」
暦「まぁ、あの人なら俺みたいに精神だけ外に飛び出すんじゃなくて、少し時間はかかるが体ごと外に出れただろうな」
陽矢「…凄い、人なのか?」
暦「まぁな。俺と比べ物とならない程な」
陽矢「…そりゃそうか。夜月の父さんだもんな」
暦「…」
夜「…」
陽矢「…?」
俺なんか変なこと言ったか?
妙に真剣な顔っていうか、なんつーか。
暦「…えっと、ああ。そうだったな。そうかそうか…うんうん」
陽矢「…?」
なんか勝手に納得されてもなー…。
暦「…さて、陽矢」
陽矢「ん?何だ…うおっ!?」
急に後ろを向いたかと思うと…目の前に銀色の刃が向けられた。
夜「こ、暦様!」
暦「止めるな夜。
陽矢。今から、俺がこの体に戻っている間に…俺はお前に、戦術を教える」
陽矢「せ…戦術を?」
暦「おう。…我が二刀『薄明』と『薄暮』を持って、『百』の執行者であるお前に、俺が持っている全てを、叩き込む。
否定はさせねえ。…俺は外に出られないかもしれない、だから、今出来ることをする」
陽矢「暦…。…分かった」
俺は十六夜を構え、暦と対峙する。
暦「そうこなきゃな…。こい、陽矢!」
夜「え、ええぇー…」
──かれこれ数時間後。やっと戻ってこれた。だが、今までとは違うことが起きた…。
暦「…あー、うん…。なんか、戻ってこれたみたいだな…」
陽矢「…おう」
現在、俺と暦は擦り傷やら掠り傷やらで細かい傷だらけだ。
あと、意外なことに祠から暦も出られた。
夜「お二人とも…。どうするんですか、夜月様と桃芽様に怒られますよ」
暦「ゲッ。ヤッベェそれは勘弁だ…桃芽はともかく夜月怒らせるなんてただじゃ済まねぇよ…」
陽矢「…そういえば、二人の姿が見えないんだが」
「二人なら村長の屋敷に向かったよ」
陽矢「…ん?」
聞き覚えのある声がしてその方向を見た。
そこには、笑顔で立ってる夜桜の姿があった。
夜桜「どうやら間に合ったみたいで良かったよ。暦」
暦「間に合った?…どういうことだァ?」
夜桜「先輩の札、結界解くのに間に合ったってこと」
先輩?先輩って…
暦「はぁ!?吉平さんここに来たのか!?」
陽矢「…はい!?」
夜桜「違うよ。僕が先輩から直々に預かった仕事だよ。君を祠の外に出すことが、アレを倒すのに必要なんだってさ」
暦「…アレを、倒す?」
夜桜「まぁまぁ。詳しい話は屋敷に行ってから話すよ。僕は桃芽に言われて君達が出てくるのを待ってたんだから」
待ってた、なー…?
俺と暦は互いの顔を見合って、溜め息が出た。
説教喰らうことを覚悟して、二人のいるらしい村長の屋敷へ向かった。




