月夜の会話
相変わらず寝付けず、外を眺めていた。
「まだ、気にしているのか?」
陽矢「…夜月」
心配そうでいて、どこか俺にはない強さがある目。思わず目を逸らした。
俺の隣に夜月が座る。
夜月「…人には人のやり方というものがある。お前はお前なりに…」
陽矢「どうして、そうも強くいられるんだよ」
夜月「…」
自分でもわかってる。これはただの八つ当たりだ。
俺より少ししか年が変わらないのに、こうも大人なのが羨ましい。
夜月「…私は、強くなんか、ないさ」
陽矢「…。…!?」
チラッと見ようと思ったつもりが、驚いてはっきりと見てしまった。
今まで見たことない、夜月の悲しそうな顔を。
夜月「…父上も、弟も、友人も、お嬢も…何一つ守れなかったのに、どこが強いのか…私にはわからないな」
陽矢「…」
夜月「…なんだ。意外だったか?」
陽矢「…いや、その…」
俺は一つ、気になったことがあった。桃芽にも聞いたことだ。
陽矢「…夜月は、俺の家族のこと…何か知ってるか」
夜月「…どうだろうな」
陽矢「前に、桃芽から聞いたんだけど…霊神村にいるかもしれないって」
夜月「…。…霊神村、か。そうかもしれないな」
夜月は月を見上げ、再度俺に顔を向けた。
夜月「霊神村なら、私や桃芽の故郷だ。村のことなら話せるだろう」
陽矢「…じゃあ、どんなところだったんだ」
夜月「そうだな…。
とても長閑な土地で、村の中央に四神を従える神を祀る祠があって、それを私の祖父が見守っていた。
私はよく、弟と友人を連れて…村のあちこちを遊びまわっていた。とても平和な場所だった。…『あの日』が来るまでは」
陽矢「あの日?」
夜月「…妖魔・九尾が村を襲ったんだ。
突然のことだった。大人達は向かっていったが、相手が悪かった。奴は、『大妖怪』と呼ばれる奴の手先で、…村一番の戦士で、同時に陰陽師でもある父上でさえも…敵わなかった。
私は桃芽とともに、日美子様に助けられたが…。その後のことは私も知らない。唯一つわかっているのは…
『父・吉平と弟・ヨウヤ。友人の暦が行方不明になった』ことだ」
陽矢「…!?」
夜月「…驚いたろう。お前と私の弟は、名が同じなんだ。ただ、お前の場合は太陽の陽に矢で陽矢だが…弟は片仮名だ。
弟は『ボク』と言っていたし、容姿も喋り方も中性的だった。…昔、桃芽が女物の着物を着せたら意外と似合っていた」
なんてことしてるんだ桃芽。ていうかそんな状況を見てたんかい。
…ん?まてよ…。
陽矢「…まさか…」
夜月「…どうかしたのか?」
──僕は…陽炎っていうんだ。
まさか、そんなことってあんのか…?もしかしたら、陽炎が…夜月の弟なんじゃ…
「──どうか…我が子らが、奴の思惑通りにならないでくれ」




