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陰陽師物語  作者: 睦月火蓮
肆幕
20/61

思わぬ対面

南焔村を出てから数分後。俺達は、思わぬ奴と対面した。


「やぁ…。元気そうだね」


相変わらず薄い布で顔を覆っていてよくは見えないが、表情は分かる。

嘲笑っている。そして、手には横笛…。


陽矢「あん時の…変人野郎か」


天邪鬼「失礼だな。私には天邪鬼という名前があるというのに…」


陽矢「知るかよ」


俺は笛を懐から取り出し、刀を構えた。

周りを見ると、どうやら皆は既に武器を構えているようだ。


天邪鬼「おやおや。もう十六夜を扱えるまでになったんだね」


陽矢「…。…?」


天邪鬼の後ろに立つ、俺と同じような姿の少年。同じく薄い布で顔を覆ってるものの…


陽矢「お前…まさか、陽炎か?」


「…久し振りだね、陽矢。迷子にならずに、無事青龍の祠から出てこれたみたいだね」


陽矢「…」


夜月「…小僧。貴様が陽矢を…」


陽炎「久し振り、狼を連れたお姉さん。彼を捜した時の傷は癒えたかな?」


夜月「戯けが」


陽矢「…。陽炎、お前…天邪鬼の」


陽炎「そうだよ。僕は天の邪鬼様の配下。君をあの祠に誘ったのも、全部天邪鬼様の命令だ」


布のせいではっきりとした表情は見えないが、口元が上がっていることは確認できる。


天邪鬼「見たところ、神器・十六夜が扱えるようになったということは…少し記憶が戻ったのかな?」


レキ『ケッ。誰のせいでこうなったと思ってやがるンだこのヤロ…』


天邪鬼「誰だろうね?」


レキ『チッ…!』


夜「何を抜かすかと思えば…」


桃芽「よくそうも簡単に…」


夜月「…貴様ッ!」


陽矢「夜月!」


怒りの形相で夜月が刀を二本とも構え、天邪鬼に斬りかかる。

が、天邪鬼は夜月の渾身の一撃を防いだ。…よく見ると、笛から…なんだ?禍々しいって言うのか、こういうの…。なんだか赤黒い光が伸びていて、それで刀を受け止めている。


夜月「このッ…!」


天邪鬼「そんなに私が憎たらしいかい?」


夜月「何を分かり切ったことを…。よくも…よくも私から『父上と弟』を…ッ!!」


…弟…?


陽炎「お姉さん。そのぐらいにしてくれるかな──」


夜月「!」


いつの間にか陽炎が…夜月の所持している日本刀とよく似た刀…それも二本とも、持っていた。

天邪鬼の背後から跳躍し、夜月に振り翳す。

あと数秒遅れていたら、夜月は…。


夜月「…チッ…」


陽炎「あはは。凄いね、流石お姉さんだ。僕の攻撃を紙一重で避けるなんてさ」


桃芽「…!貴方まさかその刀…!?」


陽炎「…ああ、これのこと?そうだよ。『黎明(レイメイ)』と『黄昏(タソガレ)』、霊神村に安置されていた物だよ。

 まぁ尤も、この刀を扱えるのは…」


夜月「…霊神村、長一族のみ」


陽炎「やっぱり知ってたね、お姉さん。流石は次期村長候補だ」


夜月「…」


…何が何だかついてけない。だが…。


陽矢「何が何だか知らないが。売られた喧嘩は買う主義だ」


天邪鬼「………」


陽矢「…?」


急に天邪鬼が黙り込む。と…


陽矢「…!?」


突然。ゾワりとした気配がする。…まさか、天邪鬼から…?


天邪鬼「…何を云うかと思えば、霊力さえ戻らねばたかが人間の小僧の戯言と聞いておけたものを…。

 小僧、貴様は…我の邪魔だ。やはりあの時童と情けを掛けず──殺しておけばよかったな」


陽矢「!」


天邪鬼の背後に九つの尾が見えた気がした。

が、それは真っ直ぐに俺に向かって──


「させるものか!」


天邪鬼「!…チッ。まだ生きておったか」


一瞬だけ見えた後ろ姿。…虚無僧?


「ええちょ、僕の衣装!」


さっき聞いた気がする声がしたかと思うと突然、目の前の風景が変わった。

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