表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰陽師物語  作者: 睦月火蓮
壱幕
2/61

白狼の妖怪

神原町にある、月影光夜(げつえいこうや)学園。


この学校は、他とは違う特色があった。


特殊な能力を持った子供たちが通うのだ。


そんな学校の中でも、珍しいごく普通の少年。

道陰 陽矢(みちかげようや)。中等部二年。弓道部所属。


だがしかし、そんな彼にある出来事が切っ掛けで…

一つの物語りの主人公となってしまったのである。


それは、ある日の放課後に起きたことだった──


























今日は全部活動停止のため、一人下校をしていた。

その途中、あることを思い出した。


陽矢「いっけね、忘れ物した…」


陽矢は急いで学校へ戻り、教室に向かった。

その途中、廊下である人と会った。


「あれ、こんなところで何をしているの」


陽矢「げ…」

文月(ふみづき)カレン。同級生の女子だ。

彼女の兄と姉は生徒会長と副会長のため、遅刻が多い陽矢としてはなるべく会いたくはない。


文月「…道陰君だったかな。今日は全部活動停止のハズでしょ?」


陽矢「いやあ、えっと…」


大きな赤色のリボンを揺らながら顔をのぞき込まれ、思わず目を逸らした。

そんな彼の様子を見て、文月はクスリと笑った。


文月「…忘れもの、ね」


陽矢「…はい」


文月「フフッ…心配しないで。お姉ちゃんたちには黙っとくから」


文月はまたクスリと笑うと、リボンを揺らして去って行った。


陽矢「…やっぱ、ああいう天然な女子は苦手だな…俺」


そう呟いた瞬間。一瞬だけ殺気を感じた気がした。

------------------------

教室まで来たとき、誰かの声が聴こえた。


陽矢は思わず身を潜めた。


そして…その声を聞いた。


「俺らを呼び出しとは、随分と生意気だな」


「ああ。『化け物』の分際でな」


陽矢「(この声と…まさか…!?)」


クラスメイト。

座高南 谷津(ざこなやつ)世話居 藻舞(よわいもぶ)

そして…幼馴染みである、神支寺 朝美(かみしじあさみ)


陽矢「(朝美…何故わざわざアイツらを…!?)」


実を言うと、朝美はクラスのイジメの標的。

座高南と世話居は、そのイジメの主犯である。

自分に被害が及ばないように、わざと距離を置いたことも知っていた。


突然、座高南と世話居の悲鳴が聞こえてきた。

三人に気付かれないように中を覗くと…


腰に刀を二本携えた少女。白銀の髪、頭に生えている狼の耳。

朝美『だったハズ』の者…『白狼の妖怪』がそこにいた。


「…何も知らぬ下等な人間ごときが…

…この数日間、『お嬢』の身代わりをしておったが…もう我慢の限界だ…!!」


腰から刀を引き抜くと、座高南と世話居に刃先を向けた。

それは、紛れもない本物の刀。


陽矢「だ…駄目だっ…!」


考えるよりも先に、教室の中に入っていた。


「…誰だ貴様。我の邪魔をするでない、人間」


陽矢「(飛び込んだのは良いが…何も考えてなかった…)」


「我の邪魔をするというならば…貴様から斬る」


陽矢「げ、マズッ…」


その時だ。

さらにもう一人、教室に入ってきた。


「早まってはなりません!」


陽矢「…綺羅?」

神道 綺羅(かみのみちきら)

もう一人の幼馴染で、陽矢たちと別のクラスだ。

「落ち着いてくださいませ、右神(ウコウ)。その者達を斬ってはなりませぬ。

 お嬢は、そのようなことは望んでおられませぬ」

「…左神(サコウ)…だがな…」


座高南と世話居は、男とは思えないような悲鳴を上げ逃げ出した。

陽矢は、全身の力が抜け、その場にヘナヘナと座り込んだ。


右神「…チッ…逃げよったか。情けない奴らだ」


右神と呼ばれた者は、刀を戻した。


陽矢「…ア、アンタらって…一体…」


右神「…左神、我は先に戻るぞ」


何処からか風が吹き、止んだかと思えば右神は目の前から消えていた。


左神「…そこの貴方」


陽矢「……え、俺?」


君以外に誰がいるんだ。

綺羅の姿をした者…左神が陽矢に一礼をした。


左神「陽矢様、ですね」


陽矢「え、あ…はあ…?」


左神「いきなりで申し訳ありませんが、この後、神奉神社にお越しくださいませ。

 奥様が話がある、とのことなので」


陽矢「いやあの…」


左神「それでは、私はこれで失礼します」


何処からか桜吹雪が吹き、右神の時と同じく姿を消した。


陽矢「…何なんだ一体…」


教室に一人残された陽矢はそう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ