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事ノ始マリ
──ある月夜
神原町に存在する神社の一つ、『神奉神社』。
ここでは今、儀式の一つ…神楽が行われている最中だ。
突然…空が黒雲に覆われ、雷鳴が轟いた。
雷が鳴り止むと、怪しげな人影が現れた。
人影が揺れたと思えば、突然辺りが闇に包まれた。
不思議なことに、闇は一瞬で消えた。
だが…巫覡を行っていた巫女二人の姿が消えていた。
「なんということだ…我等が居ながら…」
「お嬢たちは…一体何処へ行かれてしまわれたのです…」
神社の者たちは、困惑した。
何せ、一度も起きたことがなかったのだから…当然であった。
このとき…誰も気づかなかった。
──これは…ただの『始まり』に過ぎないと…