一途な想い〜ミユキ
えっ、どうして?…違った
「こんにちは。僕のこと覚えてますか?」
「ええ、弟さんよね。」
「ずっと憧れてました。僕と付き合ってもらえませんか。」
「あなた、彼女がいるのよね?」
「はい…」
「彼女と別れたら付き合ってあげる。」
「いいんですか。」
私はなんてことを言ってしまったんだろう
◇
「彼女と別れてきました。僕と付き合ってもらえますか。」
「…」
最初は言葉にならなかった。こんなにあっさり?あれほど仲睦まじかった二人が…
「約束だから…てもなんで私なの?」
「ずっと憧れてました」
「何も知らないのに?」
「知ってるつもりですし、これから知ればいい」
「でも私は…」
ああ…ごめんね。また壊してしまった
◇
社会人5年目、そろそろ結婚をと思っていたのに、なかなか彼と会えなくなっていた。
「大きなプロジェクトに参加することになったんだ。残業が多くなって会えなくてごめんね」
「うん。ヒロも大きな仕事を任せてもらえるようになったんだね」
「でも土日は会えるよね?」
「できるだけ時間をつくるよ」
「一緒に暮らしてみない?そしたら寂しくないし」
「そうだね。少し落ち着いてからでもいいかな」
「部屋も一緒に選びたいし、できるときに少しずつでも準備しようか」
「楽しみだね」
なのに…なかなかプロジェクトに終わりは見えず、会えない日が続いた
寂しいな…
◇
「皆んなで飲みに行かない?」誘われた夜だった
流れに身を任せて、職場の先輩の一夜の過ちを犯してしまった
寂しさを埋めるための一夜だったはずが、その後もズルズルと
ある日の帰り、先輩と一緒の姿をヒロに見られた
ヒロは何も言わなかったけど、去り際に「ごめん」とだけ告げて通り過ぎた
私は追い縋ることもできず、立ちつくした
◇
その後、親の勧めでお見合いをすることになった
とても良い人だった。でもトキメキはない。
結婚の準備は順調に進められた。夫になる人とは準備を進める中で好ましく思えるようになった
気がつくと、結婚式の朝を迎えていた
結婚を祝福するような晴れ渡った青空だった
髪を結い上げ、ウエディングドレスを身に纏いバージンロードを歩く
私、幸せになってもいいかな…
◇
結婚休暇が終わり職場復帰をした日、貧血をおこして倒れた 妊娠がわかった 3ヶ月だった
夫との子ではない 悩んだ
頭の中が真っ白だったのに、なぜかヒロに手紙を書いていた
妊娠の事実を書き、ヒロに助けを求めた
返事はなかった
子どもは先輩との子であったが、彼は既婚者のため頼ることはできなかった
夫に事実を告げ、子どもが生まれた後に離婚することになった 彼の温情だった
◇
やがて子どもが生まれ、離婚が成立した
シングルマザーとして生きていくことになった
性懲りも無く、またヒロに手紙を書いた
忘れられなかった だから縋ってしまった
私と子どもの側にいて欲しい そんなときだった
「ずっと憧れてました」
「何もしらないのに?」
「知っているつもり…」
ああ、あの手紙を見てしまったのね
ごめんね 側にいてくれるなら誰でもよかったの
ヨシくんと彼女は昔の私とヒロみたいで微笑ましかった。二人には幸せになってもらいたいと思っていたのに許して…
◇
そして、私はヒロの弟、ヨシくんと結婚する
2度目のウエディングドレス、ささやかな結婚式
今度こそ幸せになってもいいかな
ヒロとは結ばれない運命だったけど、違う意味で家族になれたね
ごめんね ヒロ、これからも好きでいていいかな
ごめんね ヨシくん、愛ではないの
ごめんね もう一人のミユキさん、あなたの大切な人を奪ってしまって




