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ハシモトの記憶

作者: 通りすがり

高校三年生の隆志のクラスは朝から騒然としていた。

その理由は、先日の修学旅行で行った沖縄で撮影したクラスの集合写真にあった。

生徒たちが前後数列に並んで撮ったその写真、後列の真ん中あたりに立っている男子生徒二人の間に人の顔のように見える黒い影が写っていた。

それを見つけたクラスメイト達はこれは心霊写真だと騒いでいたのだ。

だが隆志には写真を最初に見たときから、その黒い影のような顔に見覚えがあった。

それは隆志が高校一年生のときに亡くなったクラスメイトのハシモトの顔だった。

仲の良い友人の佑良に隆志はそのことを伝えるが、佑良はハシモトという生徒なんて知らないと隆志に答えた。

ならばと一年生の時に同じクラスだった雅にもハシモトのことを訊いてみたが、やはり知らないという。他の一年生の時の同級生数人にも訊いてみたが、ハシモトという名前のかつてのクラスメイトのことを知っている者は誰もいなかった。


自宅に帰った隆志はどうしても納得がいかなかった。

隆志の記憶の中にはハシモトが間違いなく存在しているのに、誰も知らないと言う。

隆志は自身の机の引き出しから入学式のときに撮影したクラスごとの集合写真を取り出した。

これならばハシモトが写っているだろう。この写真を明日クラスメイト達に見せれば皆ハシモトのことを思い出すに違いない。

隆志はその入学式の写真の中にハシモトの姿を探し始めた。しかしどこにもハシモトがいない。

「あれ、おかしいな......、そんなはずはないんだけど」

焦る隆は、真剣に写真に写る一人一人を確認していくが、やはりハシモトは見つからない。

どういうことだ......。

しばらく頭を抱えていた隆志だったが、よくよく考えてみると、そもそもハシモトはどんな顔をしていただろうか。

あの黒い影の顔を見た瞬間に、これはハシモトだと思ったが、今記憶を蘇らせてもハシモトがどんな顔をしていたのか思い浮かんでこない。

それどころか、ハシモトの下の名前がなんというのか、ハシモトがどんな性格だったか、などハシモトに関することがまったく思い出せない。

だが、隆志の記憶の中には高校一年生のときに、クラスメイトだったハシモトが自殺して亡くなったという記憶だけが鮮明にあった。

隆志はそこに思い至って愕然とする。


ハシモトっていったい誰なのだろうか。

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