フルール(愛未)
学園から帰宅し、夕食の時間となった。
執務も無事終わらせ、4人で食卓についた。
リゼはいつものように、フルールも時々微笑みながら今日あったことをみなで話した。
(さてと、まずは両親からね)
食事が終わり、デザートを食べ終えたとき、愛未は口を開いた。
「お父様、お母様、今まで大変申し訳ありませんでした。しかし、お二人にもお話したいことがあります。
…なぜ、お二人は本音を話さないのですか」
「ルー?何を言って・・・」
「お父様とお母様が、お互いを愛していることです」
「「えっ」」
両親は顔を見合わせ、赤面した。
「私が言えたことではないのですが、ちゃんとすべてを話したほうがよろしいですわよ。お二人のすれ違いは、思い込みから来ています。本音を、正直に話し合ってくださいませ」
「そうよそうよ、お父様もお母様も、いつも見つめてるくせに、目が合いそうになるとプイってするんだもの。両片思いの夫婦なんて見ていられないわ。お姉さまの言う通りよ」
(リゼも意外にちゃんと周りを見ているのね、と愛未は思った)
「・・・」
父は固まっている。
しばらく沈黙が続き、ようやく母が口を開けた。
「・・・ルー、分かったわ。今夜グラントとしっかり話してみるわ。でもその前に、私から話をしていいかしら」
「なんでしょうか」
「・・・ルー、今まで本当にごめんなさい。リゼの本当の母親、カレンがなくなってから、リゼをだれよりも幸せにしないといけないと思って、あなたをないがしろにしていたわ。本当にごめんなさい」
母が謝った。
「私もだ。どうしていいかわからず何も行動してこなかった。フルール、すまなかった」
父も謝った。
「いいえ、私がお父様とお母様になにも聞かなかったから悪いの。愛していない、って言われるのが怖かったから。でも、愛してくれていることはわかったし、私も2人のこと愛しているから、謝らなくて大丈夫よ」
「もちろん、リゼもね。でも、むしろリゼにはひどいことをしたから・・・本当にごめんなさい」
「何のこと?て朝言ったでしょ、お姉さま!」
「ありがとうリゼ」
「だから何のことって言ってるでしょ!」
リゼは笑ってくれている。本当にいい子だ。
この日の夕食は、初めて家族全員、使用人、屋敷全体が幸せに包まれた夜となった。