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忘れもしないあの日、あの光景。

思い出すだけで今でも絶望感に押しつぶされる。



横断歩道を渡る愛未をみつけた。

声をかけようとしたとき、トラックが突っ込んできて愛未にぶつかった。


ドンと吹き飛ばされる。

カーブを描いて地面にたたき落とされる。


急いで近づくと、頭から血を流し、腕も曲がっている愛未がいた。

救急車で運ばれるも、即死だったようだ。


そこからは、もう思い出したくもない。

愛未の葬式、愛未のいない生活、残ったのは渡すはずだった婚約指輪。


現実に向き合えなくて、毎日酒を飲んで紛らわした。

仕事にも支障が出るようになって、申し訳なくて退職した。


そこからは部屋にこもりっきり。

外にも出ず、トラックにひかれ飛んでいく愛未の光景にうなされる毎日。

助けられなかった自責感でいっぱいだった。


両親が家に来たようだが、何も反応できない。

病院にも連れていかれた。

うつ病と診断された。

薬を飲み始めた。

かならずよくなるよと言われた。


よくなって、何がいいのかわからない。

だって愛未はいないのだから。


大量の薬とお酒を飲んで、ネクタイを自分の首とドアノブに巻き付ける。


なかば無意識だった。

死のうと思ったわけではない。

いや、死にたかったのか自分は。

そこまで思考が追い付いていなかっただけだ。


自殺だから愛未には会えないか、なんて考えながら、徐々に意識が薄れる。


その時だった。


私とけいやくをしないか


そんな声が聞こえた。


契約?


そうだ。私の世界の人物となり救ってほしい命がある。

その代わりに、もう一度あの事故の日に時間を戻してあげよう。

急げば愛未という女を救えるだろう。



そうか、愛未を押して俺が代わりにひかれればいいんだ。

そんなことをしてくれるなら、どんな要求でものもう。


あの日に戻してくれ。


分かった。


そういうと、目の前にはあの夜の愛未がいた。


急いで走る。トラックが迫ってくる。

間に合え。


愛未を押しとばし、自分がトラックにはねられる。

強い衝撃が自分を襲う。

でもこれでいい。

俺が死んでも愛未は助かる。



視界が黒くおおわれる。

身体が寒い。

冷えていく。

救急車の音が遠くで聞こえる。


愛未、ごめんな


そこで意識が途切れた。







目覚めると、赤ちゃんになって女性に抱かれていた。


「ルイ、私のルイ」

母親のようだ。私を抱いて、ゆらゆらしていた。


成長するにつれて、この世界が愛未のやっていたゲームの世界だと理解した。

母親のおなかには僕の弟がいる。


神様、わかりました。カイルを救えばいいんですね。


愛未を助けてくれた代わりに、役目を全うします。

神様、感謝します。

絶対に、カイルを守り通します。



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