試練14
真っ暗な穴の中絶望感に襲われる。
また、直前でたどり着けなかった。
なんで注意していなかったんだろう。
小さい時から兄上と比べられて生きてきた。
兄上はなんでもスマートにこなす。
失敗なんてしない。
見たことがない。
それに比べて・・・とひそひそと話す声を何度も聞いた。
全てが嫌になって、一度王宮を黙って飛び出したことがある。
すごいものを発見してくれば褒められるんじゃないかと、森を探検すれば兄上みたいにかっこよくなれるんじゃないかと、バカみたいな考えで森へ入った。
案の定迷子になった。
泣きながら森をさまよった。
そして、そこで熊にった。
熊なんて初めて見た。
殺気だっていいる。
護衛はいない。
誰も助けてくれない。
後ずさりしながら逃げる。
捕まる。食べられる。死ぬ。
必死で足元を見ていなかった。
足は宙に浮き、そのまま崖から落ちた。
崖の出っ張りに奇跡的に落ち、死ぬことはなかった。
熊は下りてこず、去った。
助かったと思った。
でも、登れるところがない。
空が暗くなりはじめる。
夕日が沈みそうで、赤々とみえる。
独りぼっちだ。
ぼくは何もできない。
ぐすぐすと泣いた。
誰も来ない。
当たり前だ。
父上と母上に会いたい。
兄上に会いたい。
「ねぇ」
上から男の子の声がした。
「大丈夫?今助けるから待ってて」
暗くて顔は見えなかった。
男の子は一度去り、すぐに戻ってきた。
「今ロープを下ろすね」
するするとロープが下りてきた。
「体にロープを巻き付けて、そのあと手で持って」
言うとおりにする。
「引き上げるよ。せーのっ」
ぐっぐっぐっと僕を引き上げてくれる。
「もう少しだから頑張ってっ!よいしょっと」
無事引き上げてもらった。
ふたりして、はぁはぁはぁと息を切らしている。
「大丈夫?けがはない?」
「・・・ない。礼を言う。なにかほしいものはあるか」
「なんにもほしくないよ?困っている人がたら助けるのはあたりまえだって、ばぁちゃんが言っていたよ」
「そうか・・・」
「そういえばどこからきたの?」
「・・・」
無言で王宮のほうを指さす。
「入りぐちまで送ってあげる!一緒にいこっ」
もう顔はおぼえていないが、夕日で目が琥珀色に輝いていた。
男の子は俺の手を引っ張って、森の入り口まで送ってくれた。
その時にはもう夜で、真っ暗になっていた。
「じゃあね。もう危ないことしちゃだめだよ」
男の子は去っていった。
なぜいまさらそんなことを思い出すんだろう。
「・・・か!」
ふと上から声が聞こえる
見上げると、カイルがいた。
「殿下!いま助けます。ロープを下ろすので、体に巻き付けてください!」
ロープが下がってきた。
言われた通り体に巻き付け、ロープをしっかりとつかむ。
カイルがロープを引っ張る。
自分も崖に足をかけ蹴り上げる。
「ふんっ」
穴から出ることができた。
「大丈夫ですか」
「なぜ助けた」
「困っている人がいたら助けるよう教えられてきましたので」
琥珀色の瞳を見つめる。
「・・・」
そうか。
あれはお前だったのか。




