母
朝食が終わっても、両親はボーゼンとしていた。
「ルーが笑ったわ」
母マリアは泣いていた。
「そうだな」
父グラントがつぶやいた。
その後は言葉は続かない。
フルールが感情を失い、異母妹にきつく当たるようになったのは、母マリアが、フルールよりも異母妹のほうをかわいがっていたからだ。父は子供に対しどう接していいかわからないのかよそよそしかった。
ある夜、夜中起きてきてしまい両親の部屋で一緒に寝られないかと甘えたがっていたフルールが部屋へ向かっていたところ、ドアの向こうから声がもれていた。マリアが言葉にした「リゼは自分の子ではない」ということを聞かせてしまった。
フルールは全てを聞いたわけではない。何を話していたかはわからない。しかし、その言葉のみが心に広がっていった。
「本当の娘より誰かの娘のほうがかあさまはすきなんだ」
それ以降フルールは感情を失った。残ったのは異母妹にきつくあたるようになったフルールだけ。
リゼは、マリアの友人、子爵令嬢だったカレンとの子供である。
カレンは政略結婚として、妻をいたぶり何回も再婚を繰り返していたある男爵家に嫁入りしなくてはならなくなっていた。
男爵といえどもいくつもの貴族に金を貸しており、子爵家も借金があり断ることはできなかった。
カレンはマリアの友人で、グラントの幼馴染だっだ。
カレンは、グラントにずっと淡い思いを抱いていた。婚約者として決まっていたマリアは気づいていたが、なにもいえなかった。カレンもなにも言わず、親友でいてくれた。全くそのような様子すらマリアの前では見せなかった。
カレンもグラントも、マリアには見せたことのない笑顔や口調、雰囲気を出していたため、グラントとカレンは両想いなのに、自分が2人を引き裂いたとアリアは罪悪感を覚えていた。その時にはグラントの子も身ごもっており、自分だけが幸せになるなんて許せないと思うほど、カレンのことが大切だった。
マリアはグラントにカレンを妾にすることを頼み込んだ。しかし、納得してくれなかった。
カレンにも提案したがこちらも納得してくれなかった。マリアがグラントをことを本当に好きなことをカレンは知っていたからだ。
しかし、何度も説得した。第二夫人が許させるのは、王族のみだ。妾といえばいい方は悪いが、公爵家の妾である。そこらの貴族には舐められないし、マリア自身が守ると決めていた。
2人を説得し、何とか妾としてカレンを受け入れることができた。
初夜は行うよう説得した。監視も付けた。
その夜は嫉妬も相混ざり、マリアにも苦しい夜だった。
初夜の報告を受けた。
その後、なんでもないような態度をとり、2か月後にはカレンの妊娠がわかった。喜んだ。嫉妬心は奥に奥にしまった。
しかし、カレンは出産時出血量が多く、亡くなってしまった。
カレンと話をし決めていたリゼとなづけ、この子は必ず守り続ける、愛し続けると決めた。
その思いが、自分の子へ対するよりも強くなっていることにマリアは気付かなかった。
そして、フルールは感情を失った。