婚約者
この世界では、貴族の子息女は必ず学園に通う義務がある。
朝の支度をすまし、玄関ホールへとリゼとともに出る。
公爵家子息女には、侍女と護衛がつくことが許されている。
フルールには、侍女のエレンと護衛のカイルがついてきた。
「カイル、エレン、行きましょう」声をかけた時、
ちょうど公爵家前に、馬車が止まった。
フルールの婚約者第2皇子ロナルドが下りてきた。
ロナルドはフルールとリゼ二人が並んで待っていたことに、驚いていたが、なんとか平静を保っていた。
「・・・今日はリゼ嬢も一緒に行くのか」
「そうですわ。これからも。3人で学園へ向かいたいのですけれどもよろしいでしょうか」
「・・・かまわん」
2人をエスコートし、ロナルドも馬車に乗り込んだ。
フルールとリゼは仲良く隣に二人で話をしている。
「・・・フルール、何かあったのか?」
「何もありませんよ殿下。」
「そうですよロナルド様」
ロナルドはキツネにつままれたような顔をしていた。
ロナルドは、フルールが初恋だ。もとはリゼのように天真爛漫な少女だった.。
だが、フルールは感情をなくし、冷たく、異母妹にきつく当たるようになった。
ロナルドはそれを注意したり、学園でもリゼを守るようになり、天真爛漫で、我慢強いリゼの姿に好意が芽生えた。守りたいと思った。「ロナルド」と名前を呼ぶことも許した。それが、フルールを、愛し合っている2人を引き裂く悪役令嬢と噂される理由の一つなのだが・・・。
父である王にも、フルールではなくリゼと婚約をしたいとすでに伝えている。まだ、許可は下りていないが。
フルールは以前のようなきつさはなく、天真爛漫ではないものの、凛としていた。きれいだと思った。
(俺はリゼ嬢が好きだ。今も何も変わらない。父上にも話を通している。それなのに、何を考えているんだろう)ロナルドは、フルールのことをきれいと思ってしまった自分に驚いていた。