カイル2
愛未が父に事業展開と婚約について話した前日、
皆の誤解が解かれ公爵邸の皆が眠りについた頃、ベットに寝ていたフルールは体を起こし、何かを書いていた。
「・・・ルゥ、いる?」
「はい」
カイルが入室した。
「単刀直入にいうわ。
…ルゥは気づいているわよね、昼間の私が私でないこと」
「はい」
「さすがだわ。気づいていたのに黙っていてくれてありがとう。」
「いえ、その方がよいと判断しただけです」
「体の中というのかしら。ずっと見ていたわ。私が誤解していたことも、両親が誤解しあっていたことも。リゼのことも。リゼのお母様のことも。今日のことずっとみてた。自分でできなかったことは悔しいけれど、皆と私の誤解がとけたことはよかったわ。まぁ、それでも私の中ではまだ小さい頃から可愛がってもらえなかったという事実はきえない。…時間がかかるわ。でも、その時間が私にはある。」
「…はい」
「昼間の方は愛未様とおっしゃるのですって。愛未様と直接話すことはできないけれど、愛未様の記憶がこれからのこともいろいろと教えてくれたわ。」
「ルゥ、愛未様は私を私に戻そうと考えているようなの。それを手伝ってほしいの。ルゥにしか頼めない。それに、愛未様も戻りたいそうよ。話さなければならないお方がいるそうなの」
「戻りかたはもうわかっているのですか?」
「いいえ、まだなにもわからない。でも、まずは事業を立ち上げて成功させることからやらないといけないみたい。私も日中考えるわ。」
「戻る方法はとりあえず王立図書館とかをまずは調べるみたい。やることも一杯あって時間がかかるわ…。
最後に、大切なことを言うわ。
これで愛未様とお話をしたいの。カイル預かって、明日の朝愛未様に渡してくれる?」紙の束をまとめたものをカイルは預かった。中は見ていない。
「わかりました。フルール様のために」
「誰もいないんだから、ルーでいいわよ」
フルールは笑っていた。こんな幸せそうな笑顔久しぶりに見ることができた。
カイルはフルールが好きだ。生涯をかけて守りたい。自分がルーの笑顔を取り戻せなかったことは悔しいが、愛未様に感謝しかない。始めはルーを乗っ取ったやつがいることに殺意を覚えた。しかし、ルーをルーに戻したいと考えていてくれるのならば、協力は惜しまない。最大限の協力をせねば、と胸に誓った。