フルール(愛未)2
翌日、以前と打って変わって、穏やかな空気が公爵邸を包んでいた。
今、愛未は執室室に向かっている。
トントントン
「フルールです」
「入りなさい」
ドアの向こうから父の声が聞こえた。
2人は向き合って座った。侍女がクッキーと紅茶を出してくれた。
「フルール、昨日はありがとう。妻とよく話し合えたよ。それで、用件はなんだい?」
「まずは、殿下との婚約のことです」
「・・ああ」
グラントは王からロナルドがリゼと結婚したいと言っている旨を聞いて知っていた。
「殿下との婚約を白紙に戻し、リゼを婚約者にしてください。そして、次期公爵はリゼと結婚した殿下となり、何も変わりません。リゼも私と同じ教育を受けています。それに、私と違い広い心を持ち、周りを見ることができる人間です。次期公爵夫人としてふさわしいいのはリゼです。」
「しかし、フルールはそれでいいのか。それに、婚約白紙後はその後どうするつもりなんだ。今からの婚約者探しは厳しいぞ」
「その件で、すこしやらせていただきたい事業がありまして、お父様にお願いしたく参りました」
「婚約白紙はついでか」
グラントは困ったように笑った。
「王からも話は来ていた。リゼも評価も高く、教育も順調だ。婚約の件は、王とはなしてみるよ」
「ありがとうございます!」
にこりと笑ったフルールを見て、グラントはまた泣きそうになった。
フルールを幸せにしたい。
元々グラントはそのために最大限の行動をとるつもりでいた。
伯爵の称号も持っている。
(内容次第だが、フルールの言う事業が成功すれが伯爵の称号を与えることができる。その後、好いた男と結婚して幸せになってくれるのが一番いいが)
(いい感触だわ)
愛未は思った。
事業を成功させ、伯爵を継ぐ。そしてその時は、本物のフルールが結婚するのだ。
愛未は絶対にやり遂げると決意をかかげていた。