孤独な影
「ねえ、知ってる? この公園の怖い話」
「怖い話?」
一緒にブランコに乗っている友達の葵が言った。
「そう! というかこのブランコの話だよ!」
「え!?」
私はすぐにブランコから飛び出した。すると一緒に乗っている葵がバランスを崩してしまい、倒れてしまったのだ。
「葵! 大丈夫?」
「いてて、なんとか」
「ごめん! 私が考えっこなしに飛び降りちゃったから……」
「ううん。環奈は怖い話苦手なのに話しちゃって」
葵はブランコの周りにある棒にぶつかりそうになりながらもなんとか手を使って棒を避けた。
「あれ?」
「どうしたの?もしかして頭打った!?」
「いや、私はぶつけてないけど……この棒を見て」
葵が向いている方向の棒を見ると、そこには血痕がこびりついてた。
「これは……血?」
「もしかして……私が言おうとしてた怖い話の……」
葵がそう言ったとき、周りが暗転した。
「え? 葵、なにかした?」
「いや、私はなにも……」
「もしかして、さっき言ってた怖い話と関係が?」
「わからない、けど、もしかしたらと思って」
「どんな話なの?」
「……このブランコには、夜になると1つの影が現れるの。その影はもともと夜に2人で一緒にブランコに乗っていた。けど、目の前に何かの影が現れて驚いてしまい、ブランコから飛び出すように逃げていってしまった。すると、一緒に乗っていた子がバランスを崩してしまい、ブランコの周りにある棒に頭が当たてしまったの」
「じゃあ、あそこの棒に付いていた血痕は、もしかして……」
「頭をぶつけた子は亡くなってしまった。だから、待っているんだ。ブランコにのって」
すると、後ろにあるブランコから『ギィ...ギィ』と、音が鳴った。すぐさま後ろを向くと、周りの黒さよりも、もっと黒いような影がブランコに座っていた。
「あれは...まさか」
『一緒に乗ろう。一緒に乗ろう』
黒い影の手が私の手首を捕まえて引き込まれていった。
『もう死なないでね。もう死なないでね。』