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深山

作者: kami10enpitu

始発に揺られ

たどり着いた夜明け前の駅に一人

山にいだかれた駅舎の上には群青の空

宇宙へと続く深く澄んだ蒼

無人の改札は異世界への入り口のように

無機質な灯りに照らされている

ほんの少し明るさが見えた空に勇気づけられ

足を踏み出した


目指す祈りの場へと続くと信じ歩き続ける

片側一車線のアスファルトの道は私だけのもの

この道はどこに続くのだろう

黒い影を落とす山の奥深くに迷い込み

戻れないのではとさえ思える

明け切る前の山はただ静かだ

静寂と冷たい空気の中を

不安をかき消すようにひたすら歩き続けた


もう大丈夫だよと空が明るさを増していく

間違えたことに気づき始めたとき

湿り気を帯びた澄んだ空気の中に

艶やかな毛並でこちらを見つめる一頭の鹿

見つめ合い引き寄せられるように足を踏み出したとき

ギュンと一声鳴いて 純白の尻尾を見せ駆け去った


神聖な山のふところで出会ったそれは

神様の遣いのように凛としていた

あるいは

祈りの場をめざし間違えた道をただひたすらに歩き続けたご褒美に

顕われた山の神様の化身

心の中に柔らかな風が吹く


もう空は明るい

明け切った山は日常の姿を現し アスファルトの道を一台の車がゆく

遠回りしてしまった祈りの場へと続く道がそこにあった


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