第八話 復讐と聖銀紋
兜を弾き飛ばされ晒されたキカーヌの顔には幾つものイボがあり眉毛が無く吊り目の悪人面だった。
「思い出すぜ、お前にされた殺され方をな!」
未来にて行われた過去の記憶が脳裏に過ぎる。
ー過去ー
蘇生させられる度にキカーヌに顔を潰されては、手足を握り潰されいた。
「うあああああああああ!」
「ははは、良い顔になったなあ! 何度も顔を潰せるのは最高だぜ!!」
「ひゅー……ひゅー…………。」
「そう睨むなよ、お前には感謝してんだぜ?」
「?」
「こんな面白い玩具なんて、そうそう見つかんねーからな!」
「がひゅ!?」
「丁度試してみたかった事が有るんだ、人ってのは強く抱き締めれば口から内蔵吐き出すのかをな!」
「ぐぎゅ、ぎゃああああああああ!!」
キカーヌに持ち上げられるとそのまま両腕を腰に回され強く抱き締められる事によりバキバキと鈍い音と共に背骨が折れ、ブチブチと内蔵が潰されていき口には大量の血液が溜まりゴボゴボと息が出来ずに暴れるも意識が無くなり死亡する。
「何だ、出るのは血だけか。」
「満足したかのキカーヌ?」
「おかげでスッキリしましたよ国王陛下。」
「そうか、それは良かった。 では、蘇生するとするかのリザレクション!」
「はっ! はぁはぁはぁ………、いい加減殺したらどうだ!!」
「まだ死ぬには速いぜよ、俺のレベル上げがまだ終わっとらんきに。」
蘇生されツヨスギール王を睨み付けるが、その後から前髪の後退している男が現れる。
「まだまだ、ワシの国に仕える者達の為に経験値となるのだ。 そして最強の軍勢を創りツヨスギール王は世界を統一しワシはその頂点に立ち神となるのだよ。」
「な、何が神だ この悪魔め!!」
「好きなだけほざくが良い、スピードよ次は主のレベル上げを始めようではないか。」
「さあて、どう殺すか迷うぜよ。」
ー現在ー
「まあ良い、俺の顔を見た奴を皆殺しにすれば済むだけの話しだ。 来な、防御力最強の力を見せてやろう。」
「なら、直ぐにあの世に送ってやるよ。 付与発動“防御力ゼロ”! 更にスライムパンチ!!」
「がはあっ!? なっ、馬鹿な……こんな事が……!?」
俺はキカーヌに防御力ゼロを付与しスライムパンチで腹部へと高速で振り抜いた腕が貫通する。
「そういや、お前俺の内蔵がどうこう言ってたな。 同じ様に体験する機会を与えてやるよ。」
「ま、待て止めろ! 話せば分かる、なあ助けてくれよ今までの事謝るからよ!!」
「遠慮すんな、中々に刺激的な経験が出来るぜ? 人生で一度きりだがな。 溶解!!」
「や、止め……ぎゃああああああああああああああああ!!」
キカーヌの腹部に入った俺の腕を内蔵全体に染み込ませ、スライムの能力溶解で少しずつ溶かしていくと地面に転がるキカーヌは声にならない様な悲痛な声を上げ、徐々に眼が溶け脳が無くなった眼の部分から溶けでると生命活動を停止した。
「御主人様!」
「やりましたねネダヤス様!」
「ああ、この程度の奴に俺が負ける訳無いだろ?」
エイルとセワスルが俺に近付き勝利した事を喜ぶが、その様子を見ていたセンシーとスペールはキカーヌの死体を見ながら不思議そうな表情を浮かべていた。
「スペール、どう思う?」
「キカーヌの事か、アタシにはアレがキカーヌとは思えないね。」
「だな、アイツはキカーヌの偽物だろう。 誰も素顔を見た奴が居ないからな。」
「そう……だな……、!?」
「どうした急に?」
「死体が無くなってる!!」
「何だって!?」
センシーとスペールが互いにキカーヌに対して思う所があり話し合っている間にキカーヌの死体が何時の間にか消失している事に気付く。
「ネダヤス様! 死体が消えてます!!」
「御主人様、まだ生きてるかも知れません!!」
「問題ない、おそらく未来へ還ったんだろう。」
(この時間軸に本人の死体が存在する事自体が危険と判断したのだろうな。)
「にしても、この惨状をどうしましょうか。」
「私でも軽い傷を治すのがやっとですし。」
「エイル、回復魔法が使えるのか?」
「はい、ヒールだけですが。 それにこのよく分からない紋章が浮かび上がるのですよね。」
「おいその紋章、聖銀紋じゃねーか!?」
そこへ驚愕した表情でスペールが話しに割り込んで来た。
「聖銀紋?」
「知らないのかよ、アタシら人間は生まれつき紋章を持ってるだろ? 7つ有る紋章の中でも特に希少な聖銀紋てのはレベル次第では蘇生魔法が使える様になるんだ!」
「でも私のレベルは1ですから蘇生は……。」
「ま、だろうね……高レベルでもこれだけの死体を蘇生するとしても莫大な魔力が必要になるし諦めるしかないね。」
救えないと知って落ち込むエイルの姿を見て何かすぐにでもレベルを上げる方法を考え、ある方法を思いつく。
「なあスペール、レベルさえ上がれば蘇生魔法を覚えられるんだよな?」
「あ? まあそうだな、けどさっきも言ったよな? 魔力が足りないってよ。」
「それなら俺に良い考えがある、エイルちょっと良いか?」
「はい、何でしょう御主人様?」
「ちゅう。」
「!?」
俺はエイルにキスをし唾液に経験値100億を付与し口移しで流し込むとビクンビクンとエイルの身体が反応し一気にレベルが100まで上がる。
「はぁはぁ、御主人様? 何だか身体が熱いです。」
「今のエイルならヒールで全て解決出来る筈だ。」
「で、でも……。」
「自分が信じられないなら俺を信じろ。」
「はい、やってみます! ヒール!!」
エイルがヒールを唱えると街中が淡い光に包まれキカーヌに殺された人達が次々と完全回復し蘇生されていく。
「な、何が起きてるんだ!?」
「ヒール……だよな??」
「決まっているでしょう? これがネダヤス様の力です。」
「次は建物を直すぞ。」
「え? 私ヒールしか使えませんよ?」
「大丈夫ヒールは者を直せる、だから物も直せる!」
「そうですね、ネダヤス様が仰るのなら間違いありませんヒール!!」
再びヒールを唱えると壊れた建物が次々と元の形へと戻っていき何事も無かったかの様に街が元通りになる。
「な、言ったろ?」
「はい♡」
蘇生された人達は俺達に近付きエイルの聖銀紋を見て聖女様と称え、キカーヌを倒した俺を英雄として賛美するのだった。