第七話 防御力最強のキカーヌ
未来から来た刺客キカーヌはネダヤスを亡き者にする為に予め聞いていた足取りを追い、ネダヤス達が辿り着く次なる街サイジョバーンに着いていた。
「まだ着いておらん様だな、時間でも潰しておくか。」
「あれ? ツヨスギール王国のキカーヌ様ですよね、遠征に行かれたはずでは?」
「丁度良い、暇潰しに付き合え。」
「はあ。」
街の護衛兵が遠征に行った筈のキカーヌを不思議に思い話しかけると暇潰しとして酒場へと付き合わされる。
「カーっ、美味い! でも良かったんですか、昼間から酒なんて飲んで。」
「構わん、奢りだ沢山飲むが良い。」
(この後、楽しいパーティーが始まるのだからな。)
護衛兵に酒を勧めて眠った所でキカーヌは店に金を支払い、外に出ると楽しくデートをしているカップルを見つけ近付き男の方の頭を鷲掴みにし持ち上げる。
「き、きゃあああああ!!」
「な、何するんだ!? 離せ!!」
「お前ら、俺の前でイチャついてんじゃねーよ! 俺はな、お前らみたいに見せつけるカップルが大嫌いなんだよ!!」
ブンとキカーヌが男を壁に投げつけると頭から血を流し動かなくなる。
「え、嘘……嫌ああああああああ!!!!」
「良い声で泣くじゃねーか、もっと泣いてくれよ俺の為にな!」
「や、やめ……やめてええええ!! ああああああああああああああああああああああああああああ!!」
キカーヌは次に恐怖に引き攣る表情の女の腕を握るとそのままグシャッと潰し兜の中で満面の笑みを浮かべる。
「ははは、やはり女の悲鳴は最高だな興奮するぜ!」
「いや、殺さないで何でもするから!!」
「へー、こんな顔の奴でもかい?」
「ひっ!?」
兜から少しばかり顔を見せると女はその顔を見た瞬間、何とも言えない表情になりキカーヌを拒絶する。
「はっ、だろうよ! 皆俺の顔を見て拒絶すんだ、お前も俺と同じ様に醜い顔にしてやるよ!」
「あがっ!? ぎゅぐうっ…………!!」
「おっと悪い、勢い余って殺しちまった!」
「う、うわあああああ!!」
「きゃあああああああああ!!」
「はははは良いぞ! 泣け、叫べ、その悲痛な声が俺を熱くしてくれるんだ!! はははははははははは!!」
一方、ネダヤス達は小屋から出て森林を歩きサイジョバーンの街へと向かっていた。
「はあ、腹減ったな。」
「我慢しろ、あんな得体の知れないキノコを口にするよりはマシだ。」
「一緒に食えば良かったのにな。」
「所でネダヤス様、あの小屋で必要な物と言うのはその懐中時計ですか?」
「まあな、念の為ってやつさ。」
(これがあれば、もしもの時の為に更に過去へ戻る事が出来るしな。)
「あ、御主人様! 街が見えて来ましたよ!」
「久々だな、この街は。」
「ん、待て……様子が何か変だ。」
「逃げ惑ってるみたいに見えるな。」
森林から出てサイジョバーンの街に目を向けると人々が恐怖に引き攣る表情をしながら逃げ惑っている様にセンシーとスペールにも見えていた。
「おいおい、早速魔物が街襲ってんじゃないか?」
「可能性は高いな行くぞスペール!」
センシーとスペールは先に元凶の居るであろう嗤い声のする方へと走って行く。
「御主人様!」
「ワタシ達も向かいましょう。」
「そうだな、行ってみるか。」
(妙だな、この気配は魔物じゃない?)
センシーとスペールに俺達も追いつき、その周囲を見渡すと人々の血溜まりが出来ており、その死体の山に腰掛ける鎧が鎮座していた。
「な、何故……?」
「キカーヌ!? お前遠征に向かった筈だろ何故此処に居る! それに、これだけの数の一般市民を手に掛けるなんてお前らしくない!!」
「くくくく、会いたかったぜえ付与術師さんよぅ。」
「聴いているのかキカーヌ! 何故こんな事をした、応えろ! 理由次第では容赦せんぞ!!」
「あーあ、この時間軸じゃ低レベルだからこんな楽しい事知らないんだな。 安心しろよ、俺の狙いはそこの付与術師だからな。 また俺の熱い抱擁で息の根を止めてやろう。」
「この全身鎧、見覚えが有るぞ。 レベル100って事は未来から俺を殺しに来たってところか。 残念ながらお前じゃ今の俺の相手にはならないぜ?」
「ほざけ、お前を殺した後はそこの女共を可愛がってやるよ。 四肢をバキバキに折って流れる血を啜りながら犯すのを想像するのは最高だなあ!!」
「き、気持ちの悪い方ですね。」
「あの人、何だか怖いです御主人様。」
「エイルとセワスルは俺の後ろに隠れておけ、こいつは俺が倒す!」
そう言ったところでセンシーとスペールが手で静止し、キカーヌへと歩み寄り剣を抜き、スペールは手を翳す。
「見損なったぞキカーヌ!」
「アンタがそんな外道とは思わなかった、楽に死ねると思うなよ?」
「俺はそこのネダヤスを殺りに来たんだがな、実力差を見せつけるには良い機会か。 何処からでもかかって来るが良い!」
キカーヌは立ち上がると手招きをしセンシーとスペールを挑発する。
「馬鹿にするな! 国一番の剣士の力、得と味わえ兜割り!!」
「こんなもんか?」
センシーはキカーヌへと走り近付き高く跳ぶと剣を振り上げ、頭部目掛けて振り下ろすが兜が硬く剣を弾かれてしまう。
「やっぱ硬いな。」
「なら魔法ならどうかな!? ファイアボール!!」
「何だ? 埃を巻き上げるだけか?」
「効いてない!?」
スペールの火属性魔法を受けても埃が舞うだけで鎧に傷一つつかず付いた埃をキカーヌは払い除ける。
「駄目だな、あの二人じゃ未来のキカーヌとの差が有り過ぎる。」
(キカーヌのレベルが100なのに対して今のセンシーのレベルは24、スペールは25か。)
「くっ、何故歯が立たない!?」
「キカーヌのレベルは30の筈だろ! 全くダメージが無いのは変だ!」
「なら、お前らにも見える様にしてやろうステータスオープン!」
「なっ!?」
「レベル……100……!?」
「だから言ったろ、お前らじゃ俺には勝てないとな。」
「センシー、スペール、そろそろお前らも下がってろ。 こいつは俺にしか倒せん!」
「無理だ! レベル100の防御力最強の相手だ!!」
「そうだ勝てる訳ない!!」
「兜が邪魔くさいな、外してやるか。 スライムパンチ!!」
「「!?」」
俺は腕を振り抜き高速で伸びた腕をキカーヌの兜目掛けてアッパーを繰り出すと兜が飛び地面に落ちると、その醜いご尊顔が顕になる。
「き、貴様!!」
「さあ、復讐開始だ。」
この作品にはグロテスクな表現やセンシティブな描写があります。 苦手な方は我慢してお読みください。




