第二十三話 未来の二人と魔物の大群
皆が寝静まった頃、俺は未来のセンシーとスペールの気配を感じ取っており二人の潜伏する小屋の近くまで気配をけして佇んでいた。
(そろそろ来る頃だとは思っていたが、何を企んでるのかは簡単に分かるな。 この村に来るゾンビみてーな魔物の大群を利用して村を巻き込み始末する気だろうがそうは行かねーよ、ご退場願おうか。)
俺は左腕を取り小屋の真上に投げつけ形を変え全体を覆い出られなくする。
(さて、付与発動! 斬撃無効、魔法無効、魔法感知&反応爆破、刃物創造、防音、こんなところか。)
小屋の中ではセンシーとスペールが違和感に気付き周囲を警戒していた。
「妙だな、虫の鳴き声も聴こえないのは。」
「風の吹く音すら微塵も感じなくなるのは流石に変だ!」
「まさか、もうバレたのか!?」
「なら、こっちから出迎えれば良いだけの話しだよ。 ん、何だ? このヌメってんのは?」
「スライム?」
「うぎゃああああああああ!?」
「スペール!!」
天井から滴ったスライムがスペールの手に付着すると、魔力に反応し爆発した事でスペールの手首から先が衝撃で消し飛んだ。
「ぐうぅ、あ、あの野郎! 魔力を暴発させてきやがった!!」
「スペール! 今払い除け……」
「来るな! このスライム、魔力に反応して爆発もするぞ!! アタシの事はいい、奴を殺す事だけ考えろ!!」
「分かってる! 卑怯者め、姿を現したらどうだ!! こんな小屋なぞ直ぐに破壊してやる!! なっ、斬れない!?」
「ぎゃああああ!! がふっ、げは……ごぼぼ…………。」
「スペー……ル…………?」
スペールには幾つものスライムが付着し手足を消し飛ばし、腹部からは臓器が飛び出し頭の半分までもが破壊され脳がはみだした状態で死んでいた。
「うわあああああ! ネダヤスうううう、よくもスペールを!! 殺してやるから出てき…………はあ?」
剣を抜き半狂乱になっているセンシーの右腕は刃物で斬り落とされたかの様な断面になり、何が起きたのか理解出来ずに立ち呆けていると今度は同様に両足に何か鋭い物が通ると床へと倒れ込み、恐怖のあまり出入口のドアまで残った片手を使い必死に逃げようとするが、ドアから剣が生成されるとセンシーの額に射出され脳を貫き絶命させた。
「ま、こんなところかな?」
俺は頃合いを見計らい小屋を元の状態に戻して中に入ると未来のセンシーとスペールのグロい死体を確認する。
「ツヨスギール王に伝えろ、お前じゃ俺には勝てないとな。」
そう言うと二人の死体は消え去り未来へと帰還する。
「さて、掃除するか。」
(と、思ったが血ごと消えるんだな。)
帰る途中で閉店したの店の近くにスピードの姿を発見するが、そのまま宿へと戻り就寝する。
翌朝、俺は一人でスピードの居た店へと入ると未来のスピードが持っていたであろう人形が置かれている事に気付く。
「あれか、……ん?」
「な、なんぜよ……。」
スピードは何故かアダルト雑誌のコーナーで立ち往生しており、チラチラと女性の店員を見ていた。
(く、くそぅ……なんでこの日に限って店員さんが女なんぜよ!)
「ま、気持ちは分からなくもないな。」
「待つぜよ、何か勘違いしてないかぜよ?」
「買うんじゃないのか、それ?」
スピードが手にしている雑誌にはスーパー激エロボディ大全集と書かれた何名かのランジェリー姿の女性が写っていた。
「ち、ちち、違うぜよ! これはそう言う趣味とかじゃないぜよ!!」
「ふーん。」
「信じるぜよ!」
「お姉さん、これください。」
「はい、ミカちゃん人形ね銀貨5枚分よ。」
(か、買われる!?)
スピードと話していると小さな女の子がミカちゃん人形を店員に持っていき会計をしていた。
「数えるわね、えーと銀貨3枚と銅貨16枚ね……ごめんね銅貨が後4枚必要ね。」
「えー! 頑張ってお小遣い貯めたのに……。」
「あら? 見間違いかしらね、ちゃんと銅貨20枚有るわね。」
「え?」
女の子は俯き今にも泣きそうな顔をしているところに何時の間にか銅貨が増えている事で店員は数え間違いと認識するが、それはスピードが俊足紋の力を使い自分の財布からこっそり足した物だった。
「はい丁度ね、大切にするのよ。」
「はーい!」
人形を大切そうに抱えて店から出て行く姿を見てほっこりするスピードに対して俺は雑誌を買いスピードに渡す。
「お前、良いとこあるな。」
「ミカちゃんだって、あの娘に買われた方が幸せだと思ったぜよ。」
「そっか、これは俺からのプレゼントだ。」
「お、おう?」
(何ぜよ? このラッピングされた雑誌みたいな形の物は?)
「それは周りに誰も居ない時に開けなよ。」
「よう分からんが分かったぜよ。」
宿屋へと戻ったスピードは言われた通りに周りに誰も居ない時にラッピングを外すと中には先程のスーパー激エロボディ大全集が入っていた。
「なっ!? だから違うと言って……る…………ぜよ? 他にも何かあるぜよ。」
(何々、俺の名前はネダヤス・ゾテーメラ、信じてはもらえないだろうが近い未来、この村にゾンビみたいな魔物の大群が押し寄せる。 つまり、あの人形を買った娘も未来では村ごと滅び亡くなってしまう。 だからスピード、君の力を貸してはくれないだろうか? 俺には、魔物の大群で村を襲う現況を捜さないといけないから仲間は一人でも多く募りたい。)
「…………、俄には信じられないぜよ。 けど最近ゾンビみたいな魔物とは戦った事はあるぜよ、一応警戒はしとくぜよ。」
(ん、他にも何か書いてるぜよ。 !? まさか、俺が所属しているツヨスギール王国が未来では世界を征服して人も魔物も蹂躙しているぜよ!? いや、まだ信じるのは早計ぜよ……魔物の大群に関しても確実性が見出だせないぜよ。 まさか、あの時の会話は……。)
「まあ、冗談に決まって……決まって…………何ぜよ……あの数…………。」
スピードには魔物の大群についての会話をツヨスギール王国で聴いた事が有るのか、頭を抱え外を見ると砂漠地帯の方には無数の蠍や蜥蜴の他、禿鷲などの魔物の大群がスタンバっていた。
「はは、こんなん観たら信じざるを得ないぜよ。」




