第二十一話 吊り橋効果
俺はキカーヌにツヨスギール王が世界征服を企んでいる事を話すが半信半疑の様で証拠となり得る情報が無ければ行動出来ないと言われる。
「分かった、証拠が有れば良いんだな。」
「済まんな、君を信じたい気持ちは有るが俺もツヨスギール王国に勤めている身なのでな一つ返事で了承できんのだ。」
「問題無い、キカーヌは遠征の期間でも使ってアイとデートでもすれば良いさ。」
そう言うとキカーヌとアイは互いに顔を見合わせ赤くなり、顔を逸らし恥ずかしそうにもじもじする。
(さて、次はスピードだな。)
「御主人様、お帰りなさい♡」
「どうでしたか?」
「勿論、大成功だ。」
「素敵ですわ、ワタクシもネダヤスさんと生涯を寄り添いたいですわ。」
「ウチも沢山楽しい思い出を作りたいちゃ♡」
「お前達、神様の迷惑にならぬ様に務めないか! 望むなら私の身体を好きにして欲しい。」
「良かったわね、寧田君モテモテで。」
「ノコ、そんな眼で見るなよ仕方ないだろ? 俺実際モテるんだから。」
ノコは周囲を女の子に囲まれてるのが気に入らないのか頬を膨らませてジト目で見てくる。
「また囲まれてるなネダヤス。」
「何時もの事じゃないか、それより魔王討伐の件忘れてないだろうね?」
「忘れては無い、次の目的地はタカイ鉱山を登り吊り橋をわたった先にあるフモト村に行くぞ。」
「フモト村か、確かスピードが有給休暇を使って行くと言ってた場所だな。」
「じゃあ、チカック王に挨拶して出発するぞ。」
俺達はチカック王に旅立ちの挨拶をしに謁見の間へと行くと餞別として金貨50枚を渡される。
「こんなに貰っても良いのか?」
「構わぬ、ヒメルの事も頼んだぞ。」
「分かってるよ、じゃあもう行くぞ。」
「そうじゃ、途中まで馬車をだそう。」
チカック王に用意してもらった馬車に俺達は乗り込むとゆったりと馬が歩き出し、風景を観ながらスピードをどうやって仲間に引き入れるかを思考する。
(スピードは確か人形を大事そうに抱えていたな、つまり特別な人形に違いないが拾えなかったが一緒に未来にでも転移した……か…………)
「なあ、この人形何なんだろうな?」
「私が知る訳無いだろう。」
「有るじゃねーか!!」
「な、何だいきなり声を上げて!?」
「その人形、預かって良いか?」
「んー、何かしらの魔導具かと思ってたけど何の力も感じないし別に良い邪魔だしな。」
ふとセンシーとスペールの会話を耳にし振り向くと未来のスピードが抱えていた人形を持っており、俺はその人形を預かり利用する事を考えた。
その間エイル、セワスル、ヒメル、バブル、アーチの5人から周りを囲まれ人形好きかと思われたのか昔人形遊びをしていた事を話される。
「ネダヤス様着きましたよ、ここから先は馬車が通らないので皆様徒歩でお願いします。」
「おお、有難うな気を付けて帰れよ?」
「ご心配有難う御座います。」
鉱山には鉱洞になっている場所の近くで馬車を降り、俺は礼を言うと歩を進める。
「お待ちください神様、私が斥候を担います。 安全を確保するので先に行って参ります。」
「ああ、頼んだぞ。」
(必要無いがな。)
「何だか怖いとこちゃね。」
「貴方、洞窟を住処にしてたではありませんの?」
「それはそれちゃ。」
「こんな所で話してても時間無駄にするだけだ、俺が先頭歩くからエイルは一番後ろから周囲を警戒してくれ。」
「はい、御主人様の為に頑張ります!」
「ノコは俺から離れるなよ?」
「う、うん……。」
鉱洞内は薄暗く何処から魔物が飛び出して来るか分からない、その為近くにノコを配置し一番後ろにはレベル100のエイル、その間にセワスル、ヒメル、バブルにあるいはもらいセンシーとスペールは俺の左右を警戒しながら練り歩く。
「妙だな、魔物の気配はあるのに襲って来ない?」
「気を抜くなよ、こういう敵意の無さそうな魔物は何時襲って来るか分かったもんじゃないからな。」
「そうそう、アタシ達も隙を見せたらいきなり襲われた事あるからね。」
「それにしてもアーチさん、何処まで行かれたのでしょうか? 全然戻ってこられませんわね。」
「はぁ、こりゃ面倒な事になってるかもな。」
その頃、アーチは鉱洞内に居る植物型の魔物に植手に絡まされ口を塞がれて声の出ない状況に陥っていた。
(くっ、この様な醜態を晒すとは……!?)
植手はニュルニュルと蠢きアーチの身体を伝い服をずらししていき両足を開かせるとノーパンの為、そこを隠すかの様に絡み胸を曝け出させる。
(んうううう! こんな痴態、神様に晒す事になるのか私は。)
「アーチさん!?」
「あーやっぱり、何か捕らえられてるな。 今助けるから待ってろ。」
ノコはアーチの姿を見て絶句し、俺は植手を払い除け絡まっている部分を開放していく。
「本当に迷惑をかけてしまった、神様に私の様な者が醜態を晒し救いの手を差し伸べられるとは……今直ぐにでも私の様な愚か者の命絶つしか。」
「落ち着け、俺は誰も死んでほしくないから絶対死のうとするなよ?」
「何と言う慈悲深きお言葉、私は神様への感謝を忘れず精進します!」
鉱洞を出ると吊り橋が掛かっており、強い風が吹き吊り橋が揺れている。
「嘘でしょ!? 寧田君この橋渡るの!!」
「当然でしょう、ネダヤス様の通らなれる道なら何処へでも行きますよ。」
「うぅ……高い…………。」
「皆は先に行っててくれ、俺は最後にノコと渡るから。」
「先に行くのは寂しいちゃね、でも仕方ないちゃ。」
「御主人様も速く来てくださいね。」
「ワタクシもあちらで待ってますわね。」
「アタシも先に行くからな。」
「では、私も先に行くとしよう。」
「神様の慈悲は本当に素晴らしい、私も先へ渡らせて頂きます。」
次々に吊り橋を渡るなか、俺は怖がるノコと皆が渡りきるのを見ているとやはり風が強く吹き最後に渡るアーチのスカートが捲れ完全に見えてしまっていた。
(やっぱり穿いてないのか。)
「ノコ、皆渡りきったぞ俺達も行くぞ。」
「う、うん……見なければ大丈夫よね?」
「ああ、眼瞑ってろ俺が誘導するから。」
(ノコの胸、服ごしでも密着すると大きいのが分かるな。)
「も、もう着いた?」
「まだ最初の一歩目だ、風は強いが俺に掴まってれば安心だから。」
かなりゆっくりと吊り橋をノコと渡りきり、皆と合流するとノコの表情は真っ赤になっており、心音も密着してたせいかバクバクと速い鼓動を感じた。
「もう、大丈夫よね?」
「後は、また鉱洞を通ればフモト村だな。」
「うん、速く休みたい。」
(あれ? 何だろう、寧田君こんなにカッコ良かったかな?)
ノコは吊り橋効果なのかネダヤスを見て恋に落ちた錯覚に落ちるが錯覚では無く本当に好きになっていた。