第二話 奴隷市場での貴族との競り合い
「綺麗だ……。」
ベアトリスが剣で刺されていた箇所を見て俺は思わず口にした言葉に彼女は顔を赤くする。
「ななな、今なんて言った!?」
「君が無事で良かった、そんな恰好じゃ不便だろ付与術発動!」
「これは!」
付与術師のスキルを発動すると破れた服が元通りになり、地面に押し倒された時の土がきれいになくなる。
「貴方は何者なの? レジェンダリースライムは対象者を捕食しても言葉を喋れない筈なのに!」
「俺は天才だからな、それに女の子が困っていたら助けるのが男の役目だろベアトリス?」
そう言いながらベアトリスの頭を撫でると頬を染めはにかむ。
「何故、私の名前を?」
「忘れたのか、俺は君に助けてもらったからな その恩返しって奴だ。 じゃあな。」
「待って、せめて名前だけでも!」
「ネダヤス、ネダヤス・ゾテーメラだ。」
「ネダヤス様……、また会えますか?」
「ああ、いつか必ずな。」
俺は一旦ベアトリスに別れを告げ、ツヨスギール王国へと脚を運ぶ。
「待ってろよ、この腐った国を俺が今から潰してやるからな!!」
街中へと入りふと周囲を見渡すと貧困層と富裕層の差は激しく、痩せこけた子供や老人の様に窶れた若者がゴミ箱の近くでたむろしていた。
(やれやれ、金持ち連中は彼等を見て愉悦感に浸ってんな。)
「店主のあんちゃん、この女胸でけえな幾らだい?」
奴隷市場にて両手の指に宝石を嵌めた小太りで目付きの悪い貴族の恰好をした男が見窄らしい服装で栗色髪の長い髪をし水色の瞳をした胸の大きなスタイルの良い女奴隷の豊満な胸部に手を触れる。
「いやっ! 触らないで!!」
女奴隷は明らかに身体目当ての男に恐怖し両手で弾き飛ばすと男は地面に倒れ店主を睨みつけた瞬間、店主は女奴隷に強烈な平手打ちをする。
「このアマ! 客になんて態度とってやがる!!」
「きゃあ!!」
「あーやだやだ、あーはなりたくないわねえ。」
「ははは、奴隷ならアレくらいのストレス発散要因にしかなれないんだ。 大人しく貴族様に飼われて身体差し出せば楽な暮らしになるってのに勿体ない事するねえ。」
(チッ、やっぱ腐ってんなこの国。)
「すみません、躾がなってなくて 本日の目玉商品なのですが。」
「全くだ! だが強気の女も嫌いじゃあない、この私に楯突いたんだ た〜ぷりと可愛がってやろうじゃないか。」
「有難う御座います、金貨150枚となります。」
「ほう、安いなあ! たった金貨150枚かあ! 貧乏人にはどう足掻いても届かない金額だけど貴族の私には大した事ない金額だなあ!」
貴族は嫌味ったらしく大声で貧乏人に聴こえる様に自慢するかの様に周囲を見渡しながら手振り身振りで煽る。
貧乏人は貴族の態度に苦虫を噛み潰した表情になるが、それを見た貴族は満足気に店主に向き直り言われた金額以上の金貨を手渡そうとする。
「クソ、分かっててやってやがる。」
「俺達だって実力さえあればのし上がれるのに!!」
「あースッキリした、金貨150枚と言わず300枚で飼わせてもらおうか?」
「宜しいので!? 毎度あ……」
「待った!!」
「あ? 何だ貴様、この奴隷は私が飼……」
「金貨450枚でどうだ?」
「450!?」
「はあ!? なら私は500だそう!」
(コイツ私と競り合う気か、良いだろう予算は金貨2000枚は有るのだ国一番の大富豪の私に勝てると思うなよ?)
貴族の行いに正義感の強い俺は強い憤りを感じレジェンダリースライムの能力で金貨を作り出し女奴隷を横取りする形で購入しようとしたが更に貴族も金額を増やした。
「お、何だ何だ?」
「今面白い事になってるみたいねえ。」
「600。」
「ははは、私と勝負するならもっと金貨を持ってくるのだったな! 1000枚だ!!」
「1000枚!?」
「凄え1000枚だってよ! 島一つ買えるぞ!!」
野次馬が集まり周囲は沸き立ちお祭りムードになっていき、貧困層も俺を応援し始める。
「負けるな! 誰か知らんがそのいけ好かねえ貴族の鼻っ柱折ってやれ!!」
「ガンバレ♪ガンバレ♪ガンバレ♪」
「喧しいぞ貧乏人が!」
「なら俺は金貨2000枚だそう。」
「うおおおおおおおおお!! まさか2000枚も金貨持ってんのか!?」
「ねえ、あの人何処かの国の王子様だったりして!」
「あーん、格好いいし優しそうだしアタシも飼われたーい!」
「ぐぬぬぬ……。」
(コイツ私の予算を上回るだけの資金を持っているだと!? もしそうなら何処かの国の王子である可能性が高い! どうする、今の内に謝っておくか? いや、それだけはプライドが許さん!!)
「どうした? もう終わりか?」
「ぐぬうううう!」
(全財産使ってでも負ける訳にはいかん!!)
「終わりだな。」
「まだだ! 金貨5000万枚でどうだ!!」
(どうよ、金貨は後で支払えば済む話しだ。 幾らなんでも支払えまい!!)
「ごごご、5000万枚!?」
「なあ、店主さん。」
「む、何かね?」
「奴隷市場ってのは、その場での一括支払いの筈だったよな?」
「そうだが。」
「なら、俺は金貨2001枚で飼わせてもらおうかな。」
「何だと! おい店主そんなのありか!! こんなの不正だ!!」
「なら出せば良いだけの話しさ、金貨5000万枚をな? 有るんだろ?」
「ち、ちくしょおおおお!! 覚えてろよ!!!!」
貴族は涙目で奴隷市場から走り去り、周囲からは俺の勝利を称える拍手が鳴り貧困層も気分が晴れたかの様にスッキリとした表情になっている。
「ほら、金貨2001枚だ。」
「毎度有難う御座います。」
地べたに倒れていた女奴隷の手を引き立たせて店主から契約書を渡された後に俺は店主 バチンと強烈なビンタをお見舞いした。
「ななな、何をなさるので!?」
「お前、自分が何したか分かってねえのか? 俺の女に平手打ちかましたんだ、本来なら独房に打ち込んでいるところだ。」
「も、申し訳ありません。」
「謝る相手は俺じゃねーだろ? 君名前は?」
「エイル……です……。」
「エイルに謝りな、土下座でな!」
「大変申し訳ありませんでしたああああ! 二度とこの様な事が無い様以後気をつけます!!」
俺は店主がエイルに土下座で誠心誠意謝らせると次に向かったのは見窄らしい服装を変える為に宿屋へと泊まる事にした。
「まずは、その汚れた身体を洗ってきな。」
「はい、有難う御座います。」
部屋の一室を借り頬の少し赤いエイルに風呂に入る様に指示し、その間にツヨスギール王達への復讐方法を考える。